理想
まず必要なのは、十分な食料の確保だ。
食料不足は死へ直結する。
生きるか死ぬかの状態まで追い詰められたら、どんな人でも争いの引き金を引きかねない。
普通の年に十分な食料が確保できることは当然だが、数年不作が続いても飢えない程度の食糧備蓄を確保したい。
そのためには、農業技術と食料の保存技術の発達が必要だ。
食料の生産量を増やし、どんな場所でも十分な収穫を得られるようにすると同時に、長期間の保存を可能にする。
幸いなことに、これはすでに着手している課題だ。
鉄製農具を開発して農業の作業効率を上げたし、畜産も始めた。
さらには塩漬けや干物など、保存期間を延長する技術も開発したいところだ。
これは、食料の長期保存だけでなく、食文化の発展にも寄与するから一石二鳥だ。
魚を干物にするとアミノ酸が増えて味もよくなるから、みんな喜ぶだろう。
そして次にやるべきは教育。
これはすべての根幹であり、最も重要だ。
まずは、読み書きと算数を教える。
これらは全ての基礎となる知識だ。
特に読み書きは技術の開発にも有用だし、開発した技術を記録・伝承・拡散するにも必要だ。
技術開発が一時的なものではなく、伝承され改善されていけば、年月が進むにつれて生活はより良いものとなっていくだろう。
技術の発展が加速度的に進むに違いない。
最後にやりたいのは、民主主義を導入することだ。
これは、指導者を確保しつつ、格差を生まないことが目的だ。
村の発展に指導者は必要だ。これは間違いない。
指導するものがいなければ、団結して作業することは難しい。
田畑を作るための灌漑、村の区画整理、これらは有能な指導者なしには成しえない。
だが、長期間同じ人が続けたり、世襲制にしたりすると、権力が一部の家に集まり続け、貴族と平民のような生まれによる区別ができてしまう。
下手をすれば、覆ることのない格差となってしまうだろう。
それは避けたい。
格差を避けるため、指導者の任は、期限付きとし、期限を過ぎたら選挙で選ぶ。
こうすることで身分の固定化を防ぎたい。
民主主義のメリットは、身分によらずすべての人に指導者になるチャンスがあること。
デメリットは、優秀でない人も指導者となりうることだ。
口がうまいだけの人や有名なだけの人が政治家に選ばれるのは、元の時代でも見てきたことだ。
まっとうな大人にすら見えない、どこぞの県議会議員だったNoNoムラ議員が個人的には一番印象的な例だ。
ヒドすぎる。
民主主義には、このように失敗事例も多数あるが、任期が期限付きであることと、選ぶ指導者が一人だけでなく
複数人で、権力を分散できることから、大きな失敗はしにくい事が救いだ。
ベストではないが、他のどの政治体制よりもベターだと考えている。
やることは大きく3つあるが、まずは教育に着手したい。
食料の増産はすでに進めているし、民主主義は教育が行き届いたうえで、更に俺自身がもっと発言力をつけなければ実現できない。
よし、カツ村に帰ったら学校を作って子供たちを教育しよう。
俺は理想に燃えていた。




