チク村への道
お義父さんとお義母さんがカツ村に来て3日が経ち、お義父さんがチク村へ帰ることになった。
少し寂しいが、彼はチク村の次期村長だ。
長く村を空ける訳にはいかないのだろう。
お義母さんはまだカツ村に滞在する。
タン、ソウ、タツタが織機を完成させたら、彼らと一緒に帰る予定だ。
それまではナチクと一緒にヤマトの世話をしながらのんびり過ごす予定だ。
彼女がチク村に帰るのは一か月くらい後になるだろう。
「アキラ、お前もチク村に来い。一度は外を見ておくべきだ。」
お義父さんは俺もチク村へ一緒に来いと誘ってくれた。
俺もいずれ行ってみたいとは思っていた。
カツ村にはない材料や技術、優れた人物と出会うチャンスた。
だが、ヤマトとナチクの事が心配だ。
子育てで大変な時期に、家を空けて良いものだろうか。
「大丈夫だ、そのためにユリを連れてきた。」
ユリというのはお義母さんの名前だ。
どうやらお義父さんは、初めから俺をヤメ村へ連れていくつもりだったらしい。
計画的だったと言うことだ。
ユリさんがいてくれるなら、確かに心配はない。
ナチクとの仲も良いみたいだし、村のみんなの協力も得られるのでなんとかなるだろう。
だが、それでも、ナチクにどう思われるか心配だ。
と思っていたら、
「私の故郷を見てきてよ。」
と、ナチクにも背中を押された。
家族ぐるみで俺をチク村へ行かせようとしている。家族会議済みなのかもしれない。
ここまでお膳立てされてしまっては断れない。
俺はチク村へ行くことにした。
以前、俺がチク村へ行きたいと言った時、長老は危険な道のりになるからと反対していたが、
今回は反対しなかった。
むしろ行くのが役割だと言わんばかりの賛成ぶりだ。
もしかして、お義父さんが長老にも根回しした後なのだろうか。
なんにせよ、俺はチク村に行くことに決めた。
出発の日、俺たちは日が昇ると共に出発した。
メンバーは5人。
ナチクのお義父さん、チク村の村民が3人、そして俺。
カツ村のメンバーは俺だけだが、みんな何度も顔を合わせているメンバーなので問題はない。
5人で森の中を突っ切る。
それぞれの背中にはカツ村からチク村へ持ち帰る鉄製農具や布を入れた籠がある。
重さは十数キログラムといったところか。
短距離ならともかく、2日間歩き続けるとなると馬鹿にならない重さだ。
「なに、帰りは楽なものだ。行きはこの3倍くらいの重さだったからな。」
カツ村に来るときは木炭を満載していた籠だ。
その時と比べれば楽なものだろう。
籠いっぱいの木炭、おそらく40キログラムくらいはあったのではなかろうか。
流石、足腰の強さが違う。
カツ村に来るメンバーがほとんど固定なのは、足腰の強い者を選んでいるからだろう。
森の中は、何度も交易団が通っているおかげで自然と道ができていた。
とは言え、荷車を使えるほど整理されているわけではないし道幅も狭い。
いずれは木を切り倒して道を広げ、荷車で大量輸送できるようにしたい。
途中に休憩を挟みながらも、暗くなる前に中間地点の小屋についた。
チク村とカツ村の中間にある、以前俺が提案して作った小屋だ。
確か、元々は3人寝れるかどうか位の大きさの小屋が1つあっただけのはずだが、小屋が2つに増えていた。
これで5人とも余裕で泊まれる。
交易の頻度が高いことから、お義父さんの判断で増やしたという。
それだけ、チク村とカツ村の交易が重要ということか。




