織機作り(4)
テツ達の針金の作り方は決して効率の良い方法ではなかったが、多大な労力と時間をかけたお陰で、綜絖を作るのに必要な量の針金が間もなく揃おうとしていた。
もう、ここまで来たら何も言うまい。
非効率な方法に見えるが、形になっている。
今から作り方を変えるメリットは少ない。
それに、俺が考える方法がうまく行くとは限らない。
ダイス方式を用いたところで、材質、熱処理、引っ張る方法、摩擦を減らすための油の確保など課題は多数あり、それらをクリアできるとは限らないからだ。
概要を知っていることと自分で実践することには雲泥の差がある。
俺がこの時代に来て、痛いほど実感していることだ。
そうこうしているうちに、必要な量の針金がそろった。
次は、針金に糸を通すための穴を空ける作業だ。
と言うか、今まで穴を空けていなかったことに驚きだ。
直径1mmにも満たない針金に穴をあけるのは、かなり難しい作業に思える。
針金作りと穴を空ける係に担当を分けて進めるべきだったのではないだろうか。
これから針金への穴開けに挑戦して、「こんな細い針金に穴を空けるなんて無理だ。針金をもっと太くしよう。」、となったらすべての作業がやり直しになってしまう。
まぁ、きっとテツはなにか作戦があるのだろうから聞いてみよう。
「なんも考えてないです。。。」
あらま、困ったものだ。
どうやら、始めは全くできなかった針金作りがだんだんうまく出来るようになってきて、どんどん楽しくなってきたらしい。
うん、まぁ、気持ちは分かる。
作れば作るほど良い物が作れるようになる、自分の技能が上がる実感、楽しくて仕方ないよね。
でも、それで織機が完成しなかったら元も子もない。
仕事の進め方が良くないね。
仕方ないから、一緒に方法を考えた。
綜絖に穴を空ける作業。
以外と簡単にできた。
まずは穴を空ける部分を潰して平らにする。
そこにキリで穴を空ける。
バリが出ていると糸が引っかかるので、小さな砥石で滑らかに磨いて完成だ。
この方法も手間がかかるが、成功率は高かった。
まぁ、結果オーライと言うことだ。
続いて、針金を木枠に固定する作業を行った。
まず、針金の両端をハンマーで潰して平らにした。
その平らな部分を木枠に設けた溝に嵌め込んで固定していく。
この時注意すべきは、針金に開けた穴の向きだ。
全ての穴の向きをそろえる必要がある。
穴が横を向いていては糸がスムーズに通らないので、俺たちは穴の向きを調整しながら針金を嵌め込んでいった。
どうしても穴の向きが調整できない時は針金を叩いて穴の向きを修正した。
地道な作業だ。
そうこうしている内に、綜絖が完成した。
ただのダジャレだ。
一番難しい部分が完成したので、気持ちに余裕ができた。




