織機作り(3)
続いて、2つ目の要素、織った布を巻き取るローラーの製作に入った。
こちらに必要なのは、ローラーに布を固定する部分と、ローラーが逆回転しないための機構だ。
布の固定は、1つ目のローラーと同じ構造を採用した。
木板に小さな穴を空けてそこに糸を固定し、それをローラーに固定する。
構造だけでなく、部品形状も完全に同じものにした。
今後の生産を考慮すれば、部品形状は共通にしておいた方が作りやすいだろう。
ローラーの逆回転防止は、歯車のようなギザギザを外周につけた円盤を用いた。
このギザギザ車をローラーの端に取り付け、可動する爪をひっかけることで逆回転を防止する。
ギザギザの形状を左右非対称にし、布を巻き取る方向へ回転させるときは爪がギザギザで持ち上げられ、反対側へ回転させると爪が引っかかって回転しない構造とした。
バネはまだ無いので、爪はローラーの上側に配置し、重力で押し付けられる造りにしている。
爪は2つ付けた。
ギザギザ車の制作は大変で、1つの山の幅をあまり小さく作れないのだが、それだと巻き取る量が大きすぎて作業性がよくない。
そこで、爪を2つ付け、位置をズラして取り付けた。
ギザギザの一山は8cmとしたが、爪が2つあることで、4cm分回転させると1番目の爪が、更に4cm回転させると2番目の爪が引っかかる構造となっており、4cmずつの巻き取りが可能となった。
更に言えば、この構造なら爪の一つが破損してももう一つの爪で止まるから、織りかけの布が逆回転してしまうリスクを減らせる。
加工能力の不足を構造の工夫で補い、更には、予見される故障に備えた安全策まで用意できた格好だ。
こうして自分の担当範囲は目途が立ったので、他の部位の進み具合を確認することにした。
テツ達の作業場に行ってみると、織機の部品は一つも完成していなかった。
もっと進んでいると期待していたので、意外だった。
「一番難しいところから取り掛かっているんです。」
テツ達はどうやら針金を作り出そうとしているようだ。
織機で最も作るのが難しい部分、綜絖で使うものだそうだ。
針金は、元の時代でダイスという工具を使って作られる。
ダイスは小さな穴の開いた金属製の道具で、この穴に棒状に伸ばした鉄を通し、機械で引き抜く。
徐々に穴の径を小さくしていくことで、細長い針金を作り出すのだ。
形を整えた後の適切な熱処理も、必要な強度や硬さを得るために不可欠な作業だ。
ところが今の時代ではダイスもなければ引き抜き機械もないので、ひたすら叩いたり引っ張ったりして伸ばしている。
よく見ると、そうして作った針金と、その3倍以上はあるかと思われる失敗した針金の山があった。
彼らの苦労が偲ばれた。




