服の作り方
石鹸を使った手洗いで衛生面が少し改善したが、まだまだだ。
次は服をなんとかしたい。
この時代、どんな服も貴重品だ。
一枚の服を作り上げるのに多大な労力を必要とするから当然だ。
服作りは外で活動できない冬場の仕事だが、一人がひと冬で完成させられる衣服はせいぜい3、4枚だ。
すなわちそれは、1年間で作れる衣服が3、4枚であることを表している。
だから、みんな常に同じ服を着ている。
着回すとか、仕事着と部屋着とか、TPOに合わせた服を着る、という発想はない。
家にいるときも、畑仕事をするときも、食事をするときも同じ服だ。
布地が傷んでしまうから、毎日洗濯することもあり得ない。
もみ洗いなんでとんでもないことだ。
せいぜい、汚れがひどい時や汗をかいたときに川で優しく洗うくらいだ。
だから、はっきり言って、服は清潔ではない。
なんとか、毎日洗えるくらい丈夫な服か、毎日着替えられるよう短時間で作れる服が必要だ。
まずは、服の作り方をおさらいしておこう。
最初に素材となる植物を集める。
素材となるのは、アカソ、カラムシ、大麻など。
これらの植物を、夏から秋にかけて採集する。
群生していることが多いので、群生地を把握しておけば割と簡単に入手できる。
使うのは茎の皮の部分だ。
茎を手で割いて取り出す。
取り出した皮の内側に柔らかく丈夫な繊維があり、これを貝殻などでこそぎ取ると天然の繊維が得られる。
取り出した繊維は向きを揃えてから一方をひもで縛り、鍋で煮る。
しばらく煮ると、アクが出るので取り除き、アクが出なくなるまで続ける。
そのあと、川の水で綺麗に洗いまた煮る。
煮る作業と洗う作業を、アクが出なくなるまで続ける。
アクが出なくなったら、天日で半日程乾かす。
ここまでは外でする作業なので、冬になる前にしておいて、ここから後は冬になってから、家の中で行う。
乾かした繊維はを手で細かく割いていく。
ひたすら手作業だ。
細さは0.5~1.5mm。
細く割くほど着心地の良い服が作れるが、布を織る作業が大変になるし、丈夫さが重視されるので通常は1mmくらい細さまで割く。
割いた繊維を撚り合わせて糸を作る。
これも手作業だ。
コツをつかむまではなかなか難しく、糸がほどけてしまったり、太さがマチマチになったりする。
カラムシの場合、繊維の長さは長くて1m。
大人一人分の上着を作るのにおよそ1m×2mの布が必要なので、太さ1mmの糸を織って作ると仮定すると、およそ4000mの糸が必要となる。
一か所撚り合わせるのに20秒とすると、それを4000回繰り返す必要があるので、20秒×4000回=80000秒=約22時間。
なかなかに気の遠くなる作業だ。
できた糸を偏布台で布に織り上げていく。
単純計算だが、太さ1mmの糸で長さ2mの布を織る場合、2000回横糸を通す必要がある。
これも1回の作業を20秒とすると、20秒×2000回=40000秒=約11時間。
これもなかなかに時間のかかる作業だ。
ちょっと気が遠くなってきた。




