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石鹸

リアカーを開発して水の調達が楽になったので、我が家では手洗い習慣が定着した。


だがまだ物足りない。

石鹸が欲しい。


手洗いだけでも清潔度合いは高まるが、細菌やウイルスもしっかり取り除こうとすると、石鹸は欠かせない。

水洗いだけでは細菌やウイルスは除菌できないのだ。


石鹸の作り方は、原理的には簡単だ。

油とアルカリ溶液の薬品を混ぜるだけでできる。


油は植物油でも動物油でもどちらでも良い。


油は、ごま油を使った。

清潔で入手可能な油は今のところゴマ油しかない。

猪の油も入手可能だが、獣臭い石鹸は使う気にはならないので却下だ。


ゴマ油の希少性を考えると、かなり贅沢な使い方ではあるが健康は大事だ。

大量には作れないので、当面はナチクだけに使わせよう。


アルカリ溶液には、苛性ソーダやグリセリンを使うのが簡単だが、もちろんこの時代にそんなものはない。

なので、代わりに灰汁を使う。


植物を燃やして灰を作り、その灰を水に一晩漬けておけば、アルカリ性の灰汁ができる。

灰の中の成分が水に溶けだしてアルカリ性になるのだ。

一晩寝かせてから灰を濾し取って、灰汁ができあがった。


出来上がった灰汁を、熱したごま油に少しずつ混ぜ込んでいくと、どろどろと粘度を増していった。


そのどろどろを適当な木枠に流し込んでしばらく待つと固まった。

完成させると、石鹸の完成だ。



完成した石鹸は、まずは自分で使ってみる。

アルカリ性が強すぎると肌が荒れるので、ナチクに使わせる前に自分で試しておきたい。


灰汁程度で強アルカリ性になるとは思えないが、大事な嫁の手が荒れるのは断じてゴメンだ。

pHチェッカーなどないので、自分の体を試験体にする。


実際に自分で使ってみたが、特に問題はなかった。

強いて言えば、泡立ちが悪いことと、ゴマ油の香りが強いことくらい。


だが、泡立ちは悪いが油汚れは簡単に落とせているので石鹸の機能は果たしている。


香りがゴマ油なのは、まぁ、致し方ない。

俺のイメージする石鹸の香りとは異なるが、そこまで嫌な臭いではなし、強烈というほどでもない。

ちょっと香ばしいな、くらいの感想だ。


数日使っても問題なかったので、ナチクに使わせることにした。



ナチクは、汚れがよく落ちることは喜んでくれたが、香りが気になるらしく、しばらく手の香りを気にしていた。


「次に石鹸を作るときは、花の香りとかつけよう。」


俺は静かに決心した。


次回更新は11月30日の予定です。

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