手洗い習慣
「トイレの後と食事の前は手を洗おう。」
愛する妻、そして生まれてくる子供のためにできる事を考え続けていたら、手を洗うことの重要性に行き着いた。
感染症や疾病を予防するためには、衛生面を改善しなければならない。
その基本がトイレの後と食事の前に手を洗うことの習慣化だ。
「そんなのしてるわよ。当たり前でしょ。」
ナチクに言われてしまった。
確かに、今でも手を洗う習慣はある。
ナチクはキレイ好きだし、実家での教育が良かったのか料理の前には必ず手を洗う。
だがそれは、土やゴミなどの目に見える汚れを落とすための行為だ。
洗い方が良くない。
水瓶に溜めた水に手を入れて洗うので、汚れた水が水瓶に残ることになる。
土やゴミなら重いので水瓶の底に沈んでいくので問題ないだろうが、俺が心配しているのは感染症の元、すなわち細菌やウイルスだ。
それらは水の中でも繁殖する心配がある。
結局、俺がどうしたいかと言うと、流水で手を洗う習慣を村に根付かせたいのだ。
「確かに、水瓶の水はどんどん汚れていくけど、使ったそばから捨てるのは、ちょっと贅沢過ぎないかしら?」
ナチクがちょっと怒っている。
珍しいが、水を入手する大変さを知っているから当然だ。
村で必要な水は川で汲んで運んでくる。
村から川まではおよそ5km、歩くと約1時間の距離だ。
この役割は主に子供達が担っている。
簡単にできるし足腰を鍛えるのにちょうど良いからだ。
小さい土器なら小さな子供でも運べる。
1日2、3回往復している。
子供なので遊びながら作業だし、ノルマもないが、それでも大変な作業であることに変わりない。
そんな大変な思いをして手に入れた水を、手を洗ったそばから捨てた方が良いと言っているのだから、確かにひどい話だと怒っても仕方ない。
だからと言って妥協できる案件ではないので、俺は知恵を絞った。
考えた末、リアカーを作ることにした。
今までは一人あたり5Lくらいしか一度に運べなかった。
これ以上大きな土器が作れないから、それが限界だったのだ。
リアカーを使えば一度に50Lくらいは運べるから、4人で運んでも効率は上がる。
幸い、村から川までは地形も平らで、道もできているから50Lの水を乗せたリアカーでも問題なく移動できる。
早速作ってみた。
主な材料は木材で、一部に鉄を使っている。
苦労したのは車輪の軸受け部分。
鉄製の車軸に木製の車輪を取り付けたが、スムーズに回転するように、かつ、左右へのグラつきがないように固定するのは苦労した。
車軸の外形と車輪の穴をできるだけ滑らかに丸く仕上げ、軸受け部分の幅を大きくとることで、なんとか強度を確保した。
耐久性は未知数なので、使いながら定期的に点検して改善を施そう。
できたリアカーを子供達に使ってもらうと、1度に70Lくらい運べることが分かった。
70L分の水を入れた土器を乗せて、3人で運んでいる。
予想以上の効果だ。
これなら十分な水を確保できる。
次の更新は11/16の予定です。




