新居
家も何とかしたい。
竪穴式住居は、見た目ほど不便ではなく意外と快適ではあるが衛生的にはやはりよくない。
どうしても埃っぽいし、下は地面だから雑菌だらけだろう。
虫も入ってくる。
できれば、村の倉庫の様に高床式の家を建てたい。
鉄器が発達した今なら、村の倉庫よりも快適な家が作れるはずだ。
だが、家作りは村を上げての一大事業だ。さすがに俺一人の力では建てられない。
かと言って、俺の都合だけで村民の力を借りて家を建て替えることなどありえない。
どうしたものかと悩んでいたら、長老がありがたい指示を出してくれた。
「家族が増えるんだから、家を大きくしなきゃダメだろう。」
確かに、俺の家は狭い。
この村に来てみんなの協力で家を建ててもらったとき、独り身だから良いやと小さめの家にしたのだ。
確かに、3人だと手狭になる。
これは長老の思いやりだ。
非常にありがたいし受け止めたいが、他の村民はどう感じるだろうか。
俺が特別扱いされれば、不満が生じるのではないだろうか。
と心配していたが杞憂だった。
みんなやたらとやる気だ。
「生まれてくる子のために、良い家を作ろうな!」
「しっかりしろよ!お父さん!」
生まれてくる子供のため、村を挙げて祝う空気がハンパない。
この時代では普通のことなのか?
「子供は村の宝だ。村のみんなで祝福し、支えていく。当然のことだ。」
「特別な事だから特別扱いをするんだ。遠慮すべきではないぞ。」
すごくありがたかった。
村のみんなの力を借りることにする。
その代わり、いつか他の家庭で子供が生まれたら、精一杯支援しよう。
家を建てると決まったので、その設計図を描いた。
家の形は高床式。
広さは今の家の3倍程。
「もっと広い方が良いのではないか」、「遠慮するな」という意見もあったが、別に遠慮はしていない。
かなり野心的な設計にした。
まず、間取りは土間と居間と寝室の3部屋だ。
この時代、間取りという概念がそもそも無い。
家の中は1部屋だけというのが常識だ。
その1部屋で煮炊きをし、語らい、眠りにつく。
それがこの時代の常識だ。
俺はその常識を覆し、煮炊きは土間で、語らいは居間で、眠りは寝室でを分けることにしたのだ。
メリットはそれぞれの最適化。
それぞれの部屋をそれぞれの目的に最適化することで、快適性を上げる。
例えば、土間には調理に使う窯と作業台を常設するし、居間は過ごしやすい平らな床板を備え、いずれは畳を敷くつもりだ。
ちなみに寝室はベッドで完全に埋まる。
広さは控え目だが、構造では全く遠慮していない。
間違いなく作るのが大変だろう。
さて、村のみんなの力を遠慮なく借りて、快適な新居を作るとしょう。
次回更新予定 11月2日




