発覚
ある朝、俺が目覚めると、隣でナチクが寝ていた。
平和な朝、ではあるがいつもと違う。
基本、ナチクが俺より長く寝ていることはない。
俺と同時か、もしくは早くに目を覚まして朝食を作ってくれるのが日課になっている。
もしかしたら体調が悪いのかもしれないので、そのまま寝かせておくことにした。
自分の朝食は木の実で適当に済ませれば良いが、ナチクはスープの方が食べやすいだろうと思われたので、木の実と野菜、少量の米を入れてスープを作った。
味付けは塩ベースにした。
「ごめんね、ちょっと調子悪くて、、」
ナチクが目を覚ました。
やはり体調が悪いようだ。
顔色が悪い。
額に手を当ててみたが、熱はない。
食欲がなく、少しお腹が痛いと言う。
「ばあさんに診てもらおう。呼んでくるよ。」
ばあさんというのは、この村で一番年を重ねた女性だ。
経験豊富で薬草の知識もあるので、体調の悪いときは相談するのが常となっている。
症状を診て、適切な薬草を調合してくれる。
この村の医者のような存在だ。
ナチクをばあさんに任せて少し仕事をしてから家に戻ると、ナチクが起き上がっていた。
心なしか顔色も良さそうだ。
「できちゃったみたい。」
ばあさんの診察では、子供を身籠った様だ。
誰の子か?
もちろん俺の子だ。
ちょっとワタワタしてしまった。
落ち着こうとするが、昂った気持ちが収まらない。
「ふふっ、旦那様も慌てることがあるのね。」
ナチクは微笑んでいる。
もちろん俺もうれしい。
俺が人の親になるのか。
元時代ではほとんど諦めていたことだ。
結婚適齢期は過ぎていたし、浮いた話もほとんどない。
ひとりで過ごすことに慣れて、誰かと一緒に住むイメージがなくなっていた。
そんな俺に子供が生まれる。
まだ10か月ほど先の話なのに、浮足立っていろいろ考えてしまう。
名前は何にしよう、将来は何になるのだろうか、男の子かな?女の子かな?
頭の中でいろいろな事を考えてしまう。
いろいろな事を考えた末に、俺は現実的な課題に思い至った。
出産は死の危険も孕んでいる。
医療も衛生管理も発達していないこの時代だ。
出産で命を落とす確率は高い。
出産自体が奇跡とも言うべき御業なのだ。
元時代のように医療が発達していても、一定の割合で流産や死産、あるいは母親の死亡は生じている。
俺は、ナチクも生まれてくる子供も元気でいて欲しい。
そのためなら、なんだってしてやりたいが、何をすべきだろうか。
長老とリーダーに相談したところ、できることは何もないと言われてしまった。
出産に関して男は無力だと。
そんなのは嫌だ。
俺はナチクの、そして生まれてくる子供の役に立ちたいのだ。
その日から、俺の父親としての戦いが始まった。




