耐火レンガ
水車の動力を使った強力な鞴が完成した。
これを使えば強力な送風が可能になるので、製鉄が楽になるし、温度も上げられるだろう。
だが、製鉄の際に温度を上げて液状の鉄を作っても、鋳物を作れるのが製鉄時だけに限られると使い勝手が悪い。
必要な時に必要な分だけ鉄を溶かす、そういう溶鉱炉のほうが使い勝手が良いと思われる。
俺とテツは話し合って方針を決めた。
目指すのは、たたら製鉄のように製鉄のたびに壊す必要のない、繰り返し使える溶鉱炉だ。
そういう溶鉱炉は粘土を固めても作れない。
粘土は鉄を溶かすような高温では脆くなって崩れてしまうからだ。
鉄を溶かすような高温にも耐えられる、耐火レンガを作る必要がある。
耐火レンガの作り方は、、、全く分からない。
これまで扱ったことすらないのだから当然だ。
元時代ならホームセンターで簡単に手に入るのだが、どうしたものか。
ただのレンガなら作るのは簡単だ。
粘土を型に入れて形を作り、天日に干すだけでもできる。
これを天日干しではなく焼き固めることで耐火性能は上がりそうだが、今回必要な1500℃以上に耐えるのは難しいだろう。
材質も吟味が必要だ。
こんな風にどうすれば良いか分からないときは、試行錯誤しまくるしかない。
基礎知識も基本法則も分からないのだから、考えるだけ無駄だ。
俺たちはいろいろな材料を混ぜて形を作り、焼き固めてレンガを作りまくった。
粘土、砂鉄、塩、貝殻を砕いた物、土器を砕いた物、植物の繊維、木の灰、などなど
ひたすら試して、知見を蓄積していったところ、いくつかの傾向が見えた。
まず、水分量は少ない方が良い。
水分が多いと焼いた時点でひび割れを生じやすいのだ。
水分を含む粘土は材料として不可欠だが、天日で数時間干して水分を減らしてから使うことにした。
また、空気も含まない方が良さそうだ。
材料を混ぜる時は空気を入れないように気を使い、型に入れてからは重しを乗せて中の空気と水分を抜くことにした。
この時の重しは、重ければ重い程レンガの仕上がりが良かったので、最終的には油を搾るために搾油機を改造して、テコの原理で荷重をかけることになった。
搾油機に型に入れたレンガをセットし、錘を乗せて数時間放置すると型の隙間から水分が抜けてきた。
焼き方も工夫した。
基本的に、高温で焼く程耐火性能は上がるようだ。
普通の土器は直火で焼くが、それでは火力不十分なので回りをレンガで囲って釜を作った。
燃料は木炭を用い、動力鞴を使って火力を上げて焼いた。
こうした試行錯誤の末、それなりに耐火性に優れ、頑丈なレンガが完成した。
できたレンガ同士を当てると、カンカンと金属の様な高い音がする。
密度と剛性が高い証拠だ。
これはもう、セラミックと呼んで差し支えないだろう。
鉄の溶融に耐えられるかどうかは試してみなければ分からないが、今手に入る材料では最高の性能だ。
熱を加えても変質する様子が見えない。
さて、次は溶鉱炉を作るか。




