巨大な鞴(ふいご)
強力な動力水車がでいたので、今度はその動力を使って炉へ風を送る装置を作った。
送風能力が上がれば炉内の温度を上げられるので、鉄の品質を上げたり、液体状にして鋳物に加工できる可能性がある。
作るのは、以前作った足踏み式鞴の大きいバージョンだ。
水車で動かすのに足踏み式というのは語弊があるようだが、一応、上に人が乗って動かせる構造にしている。
川の水量は時期によって減ることもあるので、動力が不足する懸念がある。
そういう時は、上に人が乗って補佐するのだ。
鞴は俺とテツ、そしてチク村の3人で作った。
割と精密な部品作りが必要なので、村人に割り振るのは難しい。
現物を擦り合わせながら作る必要がある。
材料は木材。
前回は動物の皮を使って左右の部屋を作ったが、今回は大きくて皮では不足するので木材だけでつくる。
四角い木の板の中央に軸をつけて支え、シーソーのように左右に傾けられる構造にする。
板の下には左右それぞれに空気を溜める部屋があり、シーソーが右に傾けば右の部屋の体積が減るので炉に空気を吐き出す。
そして、左の部屋は体積が増えるので空気を吸い込む。
シーソーが左に傾けば、逆の動きだ。
空気の吐き出し口と吸いこみ口には弁をつけて空気が逆流しないようにコントロールしている。
逆止弁は、木の板にヒンジを設けて開閉できるようにしたごく簡単な造りだ。
シーソーと空気部屋の壁面にはクリアランスが必要だが、隙間が大きいと空気が漏れるので、クリアランスは最小限になるよう設計し、加工にも鉋を使って、滑らかに仕上げた。
表面が滑らかになると、木工加工のレベルが上がったと実感できるので、なんかうれしい。
10日程で鞴が完成したので、動作を確認するため人が乗って動かしてみた。
シーソーの傾きに合わせてギッコン、バッタンと逆止弁が動く音がする。
木と木が直接当たっているので、ちょっとうるさい。
後で、弁の合わせ目に動物の皮でも貼ろうと思う。
吐き出し口からは、力強く空気が吐き出される。
良い感じだ。
続いて、水車の動力で動かせるように、部品を追加する。
まずは水車の軸を鞴のところまで延長した。
軸と軸を繋ぐ部分には木製の継手を使うが、この部分は意図的に軸よりも強度を落としている。
鞴にトラブルが生じたとき、水車の軸に無理な負荷がかからないよう様にするための工夫だ。
元時代の言葉で言えば、トルクリミッターだ。
もちろん、壊れても簡単に修理できるように交換用部品も準備しておく。
延長した軸にはクランクを設け、そのクランクでシーソーの両端を押さえる構造にした。
軸の支持部はクランクのすぐ近くに設けて、強度的にも配慮している。
動力水車を動かすと、鞴も問題なく動いた。
よし、完成だ。




