仕込み
帰りはスムーズだった。
ヤメ村を出発して二日目、まだ明るいうちにカツ村に到着した。
「あなた! おかえりなさい!」
村に帰るなり、ナチクが抱き着いてきた。
かわいい。
とは言え、帰って早々イチャイチャするわけにいかない。
長老への報告が先だ。
「ご苦労だった。」
交易で得た大量の干物、生魚、塩を見せると、長老が労いの言葉を掛けてくれた。
今後の交易や春にヤメ村から交易団が来ることも伝え、了承してもらった。
ついでに、春になったら鰹節を作ることも話しておく。
村のみんなには、出汁をとるための最高の食材で、汁物の味が各段に良くなるはずだと伝えた。
「なぜそんなことが言い切れるんだ?作ったことがあるのか?」
リーダーに疑問を呈された。鋭い。
「魚はうまいから、そのうま味を凝縮させると更にうまい物ができるんです!」
適当に力説して乗り切った。間違ったことは言っていないので言葉に力が込もる。
俺の迫力に押されてか、納得してくれた。
「ところで、魚のカツはいつ作るのだ?」
長老はカツが大好きだ。
俺は長老に、「魚があれば魚のカツができる」、と言ってヤメ村への訪問を認めてもらっている。
頭の中はカツで一杯のようだ。
「今は油がないのですぐには作れません。ヤメ村から大量の胡麻が入手できたら作りましょう。」
「(´・ω・`) ショボーン」
長老がこんな感じになっていた。
かわいい。
村に帰り着いた日の夜は宴が催された。
料理は、ヤメ村から持ち帰った生魚を使ったものが主役だ。
カツ村ではほとんど魚を食べないから村の女性たちは料理に難儀していたが、ナチクは慣れているので村の女性たちに教えながら色々な料理を作ってくれた。
出来上がった料理はどれも素晴らしかった。
紫蘇や木の実の風味を使い、魚の臭みをうまく消しているし、魚醤と普通の醤油を使い分けて味に深みを出している。
ヤメ村で食べた料理より上品な料理に仕上がっている。
こんなにうまい料理が作れるなんて、流石、俺の嫁だ。
「寒いから、一緒の寝具で寝ましょう。」
宴が終わり家に帰ると、ナチクが誘ってきた。
5日間も留守にしたんだ。寂しかったのかもしれない。
それに確かに寒くなってきたし、一つの寝具で寝るのも温かくていいだろう。
この時代の寝具は簡単なものだ。
夏場は家の中の地面に藁を編んで作ったゴザを敷き、冬場はその上に鹿や猪の毛皮を敷く。
布団や毛布はもちろん無いので、ゴザや毛皮を被って寝る。
冬本番になると、毛皮の服も着たまま寝る。
布団や毛布に比べれば当然快適さは及ばないが、毛皮があるとかなり保温効果は高い。
竪穴式住居も意外と保温性能が高いので、凍えることなく冬を越せている。
枕は無いのが普通だが、俺は無いと落ち着かないので、ゴザを丸めて枕にしている。
ナチクも俺にならって丸めたゴザを枕にしている。
俺とナチクはひとつの寝具に入って、俺は彼女を抱きしめて足を絡ませた。
彼女の足先は冷たい。冷え性だろうか。
俺の体温を彼女に移すように、足先まで密着するように抱き合った。
ナチクの体は柔らかい。
「無事に帰ってきてくれて、うれしいわ。」
俺の胸に顔を埋めたナチクがつぶやいた。
「心配かけて、ごめんな。」
俺はナチクの髪を優しくなでた。




