約束
宴の最後は、ヤメ村の村長と話した。
カツ村とヤメ村はこれから交易を通じて、どちらも発展していく、と俺は確信している。
ヤメ村には、カツ村にない魚を捕る技術、効率よく塩を作る技術、魚を魚醤や塩漬けや干物に加工する技術がある。
そして、カツ村にはヤメ村にはない製鉄技術、鉄工技術がある。
お互いに得意な技術を持ち寄って協力すれば、どちらも発展できるのは自明だ。
俺は村長に、今後の末永い交流を持ち掛け、村長はそれを了承してくれた。
直近で俺が欲しいのは鰹だ。
その要求を村長に伝えた。
目的は鰹節を作ること。
鰹のタタキや刺身も食べたいが、鰹節の方が断然重要だ。
鰹節ができれば俺の良く知る出汁がとれるので、いろいろな料理の底上げができる。
出汁の取り方は鰹節以外にも昆布や椎茸などいろいろあるが、やはり鰹節が定番だ。
うどんの出汁、煮物のベース、味噌汁、出汁が活躍する場面は多岐にわたる。
日本食のベースとなるものだ。
ぜひとも作りたい。
鰹は年に2回獲れる。
ここがどこなのかは分からないが、例えば九州地方であれば3月~4月の春と10月~11月の秋の2回だ。
春に獲れる鰹は黒潮に乗って北上する途中のため、脂肪分が少なくさっぱりした味だ。
鰹節を作るには、脂肪分は少ない方が良いので、この春の鰹が適している。
一方、秋に獲れる鰹はたっぷりと栄養を蓄えているため脂がのっていて味が良い。
タタキなどにして食すのが向いている。
村長と今後のことについて話した結果、春になったらヤメ村からカツ村へ訪問してくれることになった。
訪問時は鰹を持ってきてくれるという。
今から楽しみだ。
村に帰ったら、鰹節作りの準備を進めておこう
鰹節は工程が多いので、使う道具の種類も多い。
捌いて、煮て、骨を取って、燻蒸して、表面を削って、カビをつけて、日干しする。
ざっくり言っても7工程はある。
しかも燻蒸や何度も繰り返す必要があるので、実際の工程数はもっと多い。
作る物は、鰹を煮るときに使う籠、骨を取るためのピンセット、表面削るためのグラインダー、鰹節削り機も必要だ。
冬の間にやることが決まった。
こうして俺は、今後のヤメ村とカツ村の交易と鰹の入手に算段をつけ、翌朝、帰路についた。




