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醤油完成

秋が深まり、冬の到来を間近に感じ始めた頃、醤油制作が大詰めを迎えた。


春に仕込んだ醤油の元、諸味は夏から秋の暖かい季節に麹菌による発酵が進んで、うまみ成分を十分に作り出してくれたはずだ。


これから冬を迎えて気温が下がると麹菌の働きは低下するので、その前に絞って醤油にしてしまおうと思う。


普段はナチクが一人で管理しているが、圧搾作業は人手がかかるので俺や村人も作業を手伝った。



醤油を圧搾するのには、先日ゴマ油の作成に使った圧搾機が活躍した。


全体的な構造はそのまま使うが、加圧部と臼は醤油専用の物を仕立てて、圧搾機に取り付けた。

醤油もゴマ油も風味の強い食材なので、触れる部分はそれぞれ専用にしないと風味が混ざってしまう。


力点には、石の錘を固定できるように工夫した。


ゴマ油を作るときは、人が体重をかけて一気に絞ったが、醤油はじっくりと時間をかけて絞った方が良いと聞いたことがあるので、錘を取り付けてゆっくり搾ることにしたのだ。


朝のうちに圧搾機に諸味と錘をセットして、夕方に醤油と搾りカスを回収する。

この作業を8回繰り返して、全ての諸味から醤油を抽出した。


できた醤油には不純物が多く含まれていたので、数日放置して不純物を沈殿させ、上澄みの部分だけを取り出した。


この状態の醤油を、生揚醤油と呼ぶ。



おいしい醤油の作り方はまだ確立しておらず、試行錯誤の最中なので、今回圧搾した醤油はいくつか条件を変えて仕込んでいる。


今回は仕込みに使う塩水の塩分濃度を変えて、4パターン作成した。


一つはろ過した海水そのまま。

その他は、海水を煮詰めることで塩分濃度を2倍、4倍、8倍と上げている。


海水の塩分濃度はおよそ3.4%なので、今回の醤油作りで用いた塩水の塩分濃度は、3.4%、6.8%、13.6%、27.2%%ということになる。



出来上がった生揚醤油を見てみると、塩分濃度が高い程醤油の色が薄い。


そういえば、醤油には薄口醤油と濃口醤油があり、薄口醤油の方が塩分が多いと聞いたことがある。


塩分濃度が高いと麹菌の活動が抑制され、色が薄くなるのかもしれない。



味見をしてみたところ、4つとも醤油らしい風味はした。

一番おいしいのは、塩分濃度13.6%の物、2番目は27.2%の物だった。

他の二つも醤油らしい風味を持つが、カビ臭さの様な余分な香りもあるのであまり食べる気にならない。


塩分濃度は13.6%と27.2%の間に、最適解がありそうだ。



生揚醤油のままでは更に発酵が進んで風味が変わってしまうので、熱を加えて麹菌の活動を停止させる必要がある。


俺は沸騰させない程度にじっくり過熱して、麹菌の活動を止めた。


過熱後にもう一度味見してみたところ、熱を加える前よりも風味が強くなっている。

熱を加える作業は、醤油の香りを立たせる効果もあるようだ。


こうして醤油が完成したが、半分は廃棄した、

塩分濃度13.6%と27.2%の物だけを醤油として使うことにし、他は搾りカスと同時に捨てることにしたのだ。


ただ捨てるだけではもったいないので、肥料として畑に蒔いて使う。


歩留まりが50%ということになるので決して良い数字ではないが、2度目のトライで醤油と呼べる物が完成したことは大きい。


理想までは遠いが、確実に近づけたという手ごたえが感じられた。


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