パン粉
トンカツを作るためには、パン粉も必要だ
パン粉を作るためにはパンが必要で、パンを作るためにはオーブンが必要。
というわけで、俺はオーブン作りに着手した。
まず作り始めたのはレンガ。
土器を作るための粘土に藁、貝殻を細かく砕いた粉を混ぜて良く捏ね、木枠に押し込んで固める。
数日間天日干しにして水分を抜いた後、土器と同様に直火で焼くと赤褐色のレンガができた。
できたレンガをオーブンの形状に積み重ねる。
レンガ同士はモルタルで固めた。
モルタルは貝殻を砕いて焼き、水に溶かした接着剤だ。
これに砂利などを混ぜたものはセメントと呼ばれる。
オーブンは下に薪を入れる空間があり、その上にパンを入れる空間がある。
正面から見ると数字の8の様な形状だ。
オーブンができたので早速パンを焼いてみた。
材料は挽いた小麦と水。
本来ならふっくら仕上げるためにイースト菌を入れるのだが、無いので省略。
生地を適当に捏ねてオーブンの上の段に入れ、下に薪をくべて、うっすら焼き色がつくまで焼いたらパンの完成だ。
パン粉を作るためのパンだが、結構おいしそうだ。
実際に食べてみたところ、イーストを使っていないのでふっくら感が足りないが、しっかりした触感の普通のパンに感じた。
味は物足りないが、クルミを入れたり塩で味付けすればおいしくなる気がする。
作ったパンはナチクにも食べさせたので、そのうちもっとおいしいパンを作ってくれるだろう。
彼女は料理の天才だ。
パンからパン粉を作る作業は、意外と難航した。
手でちぎれば良いかと思っていたが、小さくちぎるのは大変だし、ちぎるときにパンをつぶしてしまうので出来上がりがイマイチだ。
最終的には、天日干しにして十分に乾燥させた後、おろし金で細かくすることにした。
おろし金は、以前山葵用に作ったものより目が粗く、彫りが深くて、鋭い突起があるものを作った。
鉄で作るのは難しいので、今回も木製だ。
ゴマ油の算段もついたし、パン粉の作り方も確立したので、他に足りないものはないかと考えていたら、鍋が必要なことに気づいた。
縄文土器に油を満たしてトンカツを揚げるのも恰好良いとは思うが、大抵の土器は縦長で口が狭いので揚げ物には向かない。
それに、ゴマ油はかなりの貴重品なので、万が一土器が割れたりすると目も当てられない。
農具や工具以外に用いるの贅沢とは思うが、ここは鉄で鍋を拵えるのが最善策だろう。
俺は、鉄工所を訪れて自分で鍋を作った。
テツに任せた方が良い物ができるかもしれないが、たまには自分で加工しないと、勘を忘れてしまう。
作ったのは、直径20cm、深さ10cm程の底が平らな揚げ物用の鍋。
左右に簡単な持ち手も付けた。
大きな鍋だと多くの油を必要とするので、あえて小さい鍋だ。
決して、加工技術が不足しているわけではない。
こうして準備は整い、あとは胡麻が届くのを待つのみとなった。




