交易路の整備
俺が肉うどんを作ってナチクへ振る舞った次の日、ナチクも肉うどんを作ってくれた。
2日連続同じメニューと言うのはどうかと思ったが、俺の作ったものをベースに、ショウガと刻んだ紫蘇を加えて味を調えている。
「うみゃあ!」
俺の作った肉うどんも悪くはなかったが、ナチクのそれは俺のを軽く超えてきた。
料理としての完成度が段違いだ。
もしかしたら、ナチクは料理に相当なプライドを持っていて、俺の肉うどんがそれを刺激したのかもしれない。
「料理で負けてたまるものか!」と気合を入れて改善して気がする。
料理のセンスでナチクに敵う気がしない。
もう、料理は全部任せれば良いんじゃないかな、と思う。
ところでこの時代、「働かざる者食うべからず」は不文律ながら絶対の法則だ。
俺のもとに嫁いできたナチクも当然ながら例外ではない。
料理ブームを村に巻き起こし、女性達からの尊敬を集め、新しいレシピの開発に余念のないナチクだが、それだけでは十分な仕事をしているとは言い難い。
なんの仕事が彼女に向いているか考えた結果、彼女には醤油と味噌の製造をしてもらうことにした。
醤油、味噌作りには優れた観察眼、味覚、根気強さが必要だ。
彼女はその全てを備えているように思えた。
魚醤も使いこなしているし、味覚も優れている。
なにより料理のセンスが良い。
俺と彼女は毎日作業場へ通い、醤油の元になる諸味を攪拌し、味噌の熟成具合を確認し、今後の作業について話し合った。
俺もプロではないので教えられることは多くないが、目指す方向性や今後試す条件について彼女と意識を合わせられたと思う。
彼女は非常に興味を持ち、自主的に良い醤油、良い味噌を開発するために試行錯誤を始めた。
彼女が醤油・味噌の開発に自主的に取り組む姿勢を見せてくれ、任せる事に不安もないので、俺は別の課題に取り組むことにした。
チク村との交易についてだ。
年10回の交易を行う。
交易を通じてこの村を発展させるため、条件を決めたのは俺だ。
だが、課題がある。
安全性の確保だ。
この村からチク村までは片道2日かかるので、途中で野宿する必要がある。
夜の森では狼などの野獣に襲われる危険があるので、命懸けの旅だ。
年10回も往復していたら、命を落とす者もでるかもしれない。
それなことは絶対に避けたいので、なんとか安全を確保できないかと考えて、この村とチク村の中間地点に小屋を建てることにした。
屋外で野宿するから危険なのであって、家があれば安全に夜を越せるだろう。
小屋を建てる作業はチク村と共同で行った。
双方から加工済みの木材を持ち寄り、現地で組み立てた。
小屋の建築には5日かかり、その間は野宿だったが、夜中も見張りを立てて火を絶やさなかったお陰か、野獣に襲われることはなかった。
道が広ければあらかじめ壁状に組んでから運ぶ2X4(ツーバイフォー)方式を使いたかったのだが、道が狭く組んだ状態では運べないということで断念した。
交易が盛んになれば、道も整備して荷車を使えるようにしたい。
完成したのは、3人がギリギリ横になれる程度のごく小さな小屋だ。
狭いが無いよりは断然マシだ。
雨露もしのげるし、野獣に襲われる心配もない。
交易の頻度が上がったら、必要に応じて拡張していこうと思う。




