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縄文時代

翌朝、朝日のまぶしさで目を覚ました。


ものすごく熟睡した気がする。

10時間は寝たんじゃないだろうか。


しばらくすると、村人達がぞろぞろと出てきた。

みんな既に出かける準備は済ませてある。


「さあ、みんな行くぞ!」


俺を含めた狩り部隊の8人がそろうとリーダーが声をかけた。

今日こそは獲物をゲットしたいものだ。


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今日も獲物はゲットできなかった。


正確には今日だけではない。

昨日も、一昨日も獲物は得られていない。


俺がこの世界に来てから既に3日が経っていた。



既に自分でもここが夢ではない事に気づいていた。


昼間は狩りで出ずっぱりだが、夜には有り余るほどの時間がある。

思索を巡らせるには十分だった。


何をどうしてこうなったのかわからないが、俺は原始時代の、おそらく日本と思われる地域へ飛ばされたらしい。

なぜ日本かと言うと、月や星の見え方が元の世界と変わりないからだ。


夜空に北極星、北斗七星、夏の大三角形を見つけた時、ここが地球の北半球であることを確信した。

月や星の見え方は元の時代でも原始時代でもほとんど変わらない。

数千年程度の年月など、星にとっては一瞬のことなのだ。


そして北極星を見上げた時の角度が、およそ30度から40度だった。

これは、日本の北緯と一致する。


もちろん、これだけの情報でここが日本だと断定することはできないが、森の植物も川の魚も極端に見覚えのない変なものは無いので、ここを日本だろうと推測している。


時代は、縄文時代末期ではないかと思われる。

村で使用されている土器にのいくつかに、縄文時代特有の縄目模様が見られるからだ。


また、村の外で少しだが農業が行われていることも確認した。

植えられているのは、ほとんど見覚えのない作物だが、食用であることは間違いない。


米も栽培されているが、水田ではなく畑で栽培されている。

陸稲おかぼというものだ。

弥生時代は水稲耕作を中心としていることが特徴だから、ここはまだ弥生時代に入っていない、と俺は結論づけた。


俺の推測が正しく、今が縄文時代末期だとすると、およそ紀元前10世紀頃ということになる。

俺は元の時代から3千年も前にタイムスリップしたらしい。


「どうせならファンタジー世界へ異世界転生したかったな。」


魔法とか使ってみたかったし、いろんな種族と交流したかった。


元の時代の知識と特殊能力を武器に、工作が得意なドワーフ、魔法が得意なエルフ、体力自慢のオークなど、いろいろな種族の力を借りて、信じられないほどの立身出世や、ノンストレスなスローライフを満喫するのが異世界転生ものの魅力だ。


正直、ストレス満点なサラリーマン生活を送っていた俺は、異世界転生もののスローライフものに憧れがあり、漫画やライトノベルを愛読していた。


「それなのに原始時代にタイムスリップかよ。」


この世界にはファンタジー要素は何もない。

立身出世どころか、娯楽すらない。

あるのは生きるのに精一杯なワイルドライフだけだ。

スローライフなんて夢のまた夢だ。


せめて何かのチートスキルでもあればいいのだが、魔法もないしアイテムBOXもない。

元の時代と行き来ができれば、いろいろな道具を持ち込んで無双できるのだが、戻る手段は不明だ。



この時代、男に求められるものは明確だ。


体力。


これがないと何も始まらない。


狩りに出て獲物を獲るにも、畑で作物を育てるにも体力がいる。


狩りはともかく、農作業ならそれほど体力はいらないのでないかと思ったが、元の時代とは異なり

道具があまり発達していないので、すべての作業効率が著しく悪い。

したがって、体力をものすごく必要とするのだ。


例えば、畑を耕すために使う道具は木でできている。

形は鍬のようだが、木でできているため土に深く刺さらない。

何度も繰り返し耕して、やっと必要な深さが得られる感じだ。

鉄製の鍬と比べると、作業効率は5分の1と言ったところか。

したがって5倍の体力が必要となる。


生活全般にわたってこの調子だから、すべての作業で体力が必要だ。


それなのに、俺の体力は村人の男の中で最下位だ。戦力とみなされているかどうかすら不明だ。

未だに村の一員として認められていない気がする。



村の仕組みはおぼろげながら見えてきた。


昼間、村人は総出で食料調達に乗りだす。

今の時期だと、若い体力のある男は狩り、その他は木の実集めと畑づくりだ。


働かない者はいない。

働かないと生きていけないのだ。

長老ですら畑仕事に精を出している。


狩りで得た獲物、畑で得られた作物は村人全員で分ける。

その日に必要な分を分配し、残りは倉庫に納めるのだ。

毎日狩りに出たり収穫があるわけではないから、そういう時は倉庫から出して分配する。

倉庫番は長老が担っている。


食料に関して、個人の所有物という概念はないらしい。

皆で集めて、皆で分け合っている。

ひとつの家族と言っても良いくらいの一体感だ。


1人では得られないことを、明確に自覚しているのだろう。

実際、狩りも畑づくりも1人、もしくは1世帯でこなすのは無理だ。

全員が働き、成果は全員で分け合う必要がある。


ただ、道具については個々人で管理しているようだ。

自分のものは自分で作るっているからだろう。

作り方はお互いに教えあっているが、所有者ははっきりしている。

作った人のものだ。

人によっては、道具に印をつけて所有権を主張している者もいる。

専任の道具職人はいないらしい。


自分の立場も分かってきた。

俺はこの村では新参者だ。


数日前に森で倒れているところをリーダーが見つけて助けてくれたらしい。

リーダーは体力が回復するまで俺のことを介抱し、狩り部隊の一員として

居場所を提供してくれた。


すごくいい人だ。


いつか恩返しをせねばならないし、リーダーもそれを望んでいた。


「いつか成果を出して返してくれればいい。」

とリーダーは言った。


俺に期待してくれている。何とかして役立たねばならない。


俺は燃えていた。


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