チク村の3人
「なんじゃこりゃ」
「勝手に回ってる!?」
「・・・・・」
まずは水車が見つかった。
大きいし移動もできないから隠しようがない。
俺は鉄も水車も大っぴらに広めたくないのだが、隠すのはムリだよな。
重要な交易相手に嘘を教えて信頼関係を壊すわけにはいかないので、仕組みや活用方法を正直に説明する。
「川の水を動力に変えて、粉挽きや精米を自動で行うとは。。。」
「これは革命的だ!早速自分たちの村にも作ろう。」
「・・・・」
しきりに感心してくれるので、作った俺も悪い気分ではない。
むしろ気分が良い。
見れば大体の構造はわかるので、真似するのを止める術はない。
特許もないし、好きにすれば良いと思う。
ノウハウ無しに作ればいろいろ苦労するだろうが、試行錯誤すればいずれ形になるだろう。
もし技術提供や協力を求められたら、その時は山葵や磁石と交換で協力しよう。
しばらくすると、鉄製の農具も見つけられてしまった。
「なんじゃこりゃ」
「黒曜石より硬いのではないか!? ぜひ、欲しい!」
「・・・・・」
3人の内一人は非常に寡黙な人だ。
表情を見ると驚いているのがわかるが、言葉は発しない。
これで嫁探しなんかできるのだろうか。
予想通り鉄製農具が欲しいと言われたが、まだこの村にも行き渡ってないので、渡すするわけにはいかない。
それに3人は交換に値する対価も持っていないので、取引は成立しない。
「では、我々の村に来てもらえないだろうか。対価を準備する。」
お誘いを受けた。
ちょっと気になる。
この村で手に入らない物も入手できるかもしれないし、情報も得られるかもしれない。
だが、長老に反対された。
「危ないから、ダメ!」
だそうだ。
片道2日。
道も無い森の中を徒歩で移動し、少なくとも一晩は野宿することになるので狼など野生動物に襲われる危険がある。
チク村の3人は危険を冒して村を訪れてくれたのだ。
俺の代わりに誰かに行ってもらうことも考えたが、最終的にはチク村の3人が一度村へ戻り、対価となるものを持って再度この村に来てくれることになった。
危険な旅程を何度も行き来させて申し訳ないが、鉄製農具を欲しているのはチク村のほうなので、こちらが労力をかける必要はない。
俺が対価として要求したものは3つ。
磁石、山葵、そして木炭だ。
木炭は製鉄で大量に使うので、いくらあっても良い。
鉄製の鍬を1本作るだけでも数10キロの木炭が必要だ。
チク村の3人は5日ほど滞在した後、帰路についた。
今は春だが、夏に再びこの村を訪れてくれることになっている。
それぞれ嫁探しも頑張っており、無事相手もできたようだが、今回は連れて帰らない。
次に来た時、正式な手続きを経てから連れて帰るそうだ。
次に会ったら結婚、と言うと死亡フラグみたいで嫌な感じだが大丈夫だろうか?
無事に再会できることを祈っている。




