冬の間に
冬の間は主に鉄工所で過ごした。
テツといろいろ作るためだ。
優先度の高いのは農具の修理、その後は、今後の製鉄に先駆けて鍬や鋤の柄の作り溜めを行う。
食料の確保が一番大事だ。
続いて、日常使いの食器や匙、箸などを作る。
匙も箸も以前から使っていたようだが、最近は道具が良くなってきたので、液体を飲む用の深めの匙や子供用の小さな匙など種類が増えている。
使う人に合わせて作ることが可能だ。
俺は中華料理を食べるときに使うレンゲを作ってみた。
作るのがかなり大変だったのだが、評判は芳しくなかった。
テツ曰く、深めの匙でいいじゃん、とのこと。
レンゲの正しい評価は、ラーメン・炒飯セットが登場するまでお預けだ。
最近は規格化した升も多く作っている。
作物の収穫量や液体の量を計るのに便利だからだ。
料理にも使えるので、各世帯に最低1個ずつは行き渡らせるつもりだ。
元時代の升は容量が一升(約1.8L)のものが普通だったが、今作っているのは容積が1Lの物だ。
内寸は10cm×10cm×10cmとしている。
一升という単位は元時代でも一升瓶としてなじみのある単位だが、一升がに何リットルに相当するのか正確にわからないし、いろいろな単位が混ざると分かりにくくなるので尺貫法は採用しないことにする。
俺とテツは水車の活用方法についても話し合った。
最初に作るのは決めている。
自動精米機だ。
大仰な名前だが、要は木製の杵を持ち上げて落とすだけの簡単な機構だ。
水車の回転軸を延長して簡単なカムをつければ実現できる。
まずはこれを作って、精米作業で楽しよう。
精米以外にも、木の実をつぶして粉にしたり、いろいろ使い道があるので重宝するはずだ。
続いては、製鉄作業用の送風機を作りたい。
以前開発した脚踏み式鞴は効率の良い構造だと思うが、すごく疲れることに違いはない。
水車の回転軸にクランクをつけて上下に往復直線をさせれば、脚踏み式鞴と組み合わせて自動で風を送ることができる。
水車は加工機械の動力としても使える。
回転ノコギリや木工用の旋盤が実現したら、木材の加工速度も精度も各段に上がる。
俺の話す事をテツは目をキラキラさせながら聞いていたので、いずれ実現してくれるだろう。
自分の手で作り上げたい気持ちもあるが、加工作業が得意なテツを主体にした方が良い物ができるに違いない。
そんな感じで、いろいろな物を作り、構想を練っているうちに春が来た。




