鞴(ふいご)
鉄工加工は全てテツに任せて問題なさそうなので、全て彼に任せてしまおう。
加工については、もう俺よりもうまいので、後は製鉄方法を引き継いでしまえば万事OKだ。
そうと決まれば、早く次の製鉄を行いたい。
必要なのは、木炭、砂鉄、炉といろいろあるが、このあたりはテツと村民に任せてしまう。
特に方法を変える必要はないし、テツへの引継ぎを兼ねている。
俺は製鉄最大の課題である、送風方法の改善に取り組むことにした。
製鉄作業の中でも送風は超重労働だからだ。
交代で行っても、今の村の人員ではギリギリなので、かなり消耗してしまう。
女性でもできるように改良すれば、交代要員が増えるので、人のやりくりがしやすくなるはずだ。
アイディアを2つ思いついたので、2つとも作ってみた。
1つは、クランクを用いるものだ。
今の送風ポンプはハンドルを上下に往復直線運動させることで風を送り込む。
これは、そのハンドルをリンクを介して回転する円盤に接続し、円盤の回転軸からハンドルを出した構造だ。
ハンドルを回して円盤を回転させると、ポンプのハンドルが上下に動いて風を送ってくれる。
往復運動より回転運動の方が力がいらないし、回転する円盤がフライホイールの役割を果たしてくれるので送風量が安定する。
2つ目は、足踏み式の鞴だ。
四角い木の板を2枚作り、その淵に鹿の皮を縫い付けて箱状の形にした。
底板と天板が木の板で、側面は鹿の皮でできた四角い箱を想像してもらえば良い。
空気の取り入れ口と吐き出し口を作り、それぞれに逆止弁をつければ鞴の完成だ。
木の板同士を近づければ空気が出て、離せ場空気を吸い込む。
この鞴を2個作り、1m程距離を空けて上の板を木材で結合した。
その木材の中心には支点を設け、シーソーの様に左右に傾く造りにした。
シーソーが右に傾けば右の鞴は空気を吐き出し、左の鞴は空気を吸い込む。
シーソーが左に傾けば逆の動きだ。
このシーソーの中心に人が乗って、右に体重を掛けたり、左に体重を掛けたりして風を送ろうと考えている。
人の筋肉は7割が下半身にあるというから、腕の力で作業するより作業しやすく、女性でも扱えるのではないか。
「もののけ姫」でも足踏み式の鞴を女性が動かしていたし、なんとかなるだろう。
夏が来て、畑の稲に穂が付き始めたころ、3度目の製鉄の準備が整った。




