テツの仕事
金床と鎚が完成したので、続いて農具の生産を行った。
村の食料生産性を上げるためだ。
弟子のテツと共に、鍬、鋤、鎌を次々と作り出した。
テツは俺より若いが手先は器用で根気もある。
元々工作は得意なので、農具の柄の部分の木工加工も問題なし。
というか、すぐに俺よりうまくなった。
加工については、もうこいつ一人でいいんじゃないかな、と思う。
だが、俺もまだまだ役に立つ。
なんと言っても、俺は3,000年後の便利な道具をたくさん知っているから作りたいものが膨大にある。
よって、俺の残された役割は、作る物の提案だ。
とりあえず、鋸と鉈が欲しい。
木炭用に木を切るためだ。
製鉄は今後も続けるので、拾い集めるだけでは木材が足りない。
石斧でも良いが、時間がかかりすぎる。
しかし、鉈はともかく鋸は作るのが難しい。
まず、鋸の刃は薄い上にしなやかだ。
厚みは1mmもないのに、折れるなんてことはない。
鉄を薄く延ばす技術と共に、粘りの強い特性を引き出さないといけない。
更に、鋸の特徴であるギザギザの刃なんて、どうやって作れば良いのか、俺には想像もつかない。
一つ一つ砥石で研げば何とかなるかもしれないが、とんでもない時間と手間がかかる。
元時代ではおそらく、プレス機で抜いたり、グラインダーの様な回転砥石で削ったりしていたのだろう。
だが、この時代にはどちらもない。
テツとも相談しながら検討したが、この時代では棒状の鑢と砥石を作って地道に削るしかなさそうだという結論に至った。
テツがかなり興味を持ってくれたので、彼ならそのうち実現してくれるだろう。
完成した農具は、すぐに村民に使ってもらった。
道具は使ってこそ意味があるし、実際に使ってもらうことで課題が抽出できるかもしれないからだ。
鉄製の農具は、力の弱い女性に優先して使ってもらうことにした。
実際に鍬を使ってもらうと、重くて使いにくいという意見が出たが、鍬の重さを利用して耕す事を教えるとすぐに順応した。
今での木や石製の鍬の場合、鍬を土に刺す時に力を込めていたが、鉄製の鍬なら自重だけで十分刺さる。
持ち上げて落とすようなイメージでも十分深く耕せるのだ。
今までは、鍬をおろす時に力を込めていたが、これからは持ち上げるときに力がいる。
力の使い方が逆になるので最初は戸惑っていたが、女性たちはすぐに使い方を覚えてしまった。
これなら食料生産性もすぐに上がるだろう。




