若宮滝
俺の名前は若宮滝。高校2年。
父親が会社を経営しており、俺はその家の長男にあたる。
まぁ、経営者といっても、誰もが知る様な大企業でもないし、せいぜい中の上、上の下あたりだ。
さて、こんな俺が通っている高校は私立で、地元では昔から坊ちゃんが通う男子校。男しかいないから、さぞアホな様な雰囲気かと思うが、意外に学校は冷めている。
皆、親の会社を継ぐため、またはより良い会社に就職する為と、真面目に学業をおこなっている。
俺は親に勧められるがまま、ここの附属中へ入学し、エスカレーターで進学した。
だからだろうか、決められたレールがある為、学業に真面目に取り組む気になれず、それが周りを不愉快にさせ、友達と呼べる様な存在はここにはいない。
あと、俺がアニメやラノベ好きってのも学校では秘密にしている。
話す相手がいないのとクソ真面目ばかりで、教室から聞こえてくる会話にそれ系がなかった事は確認済みだ。
そんな俺にも先日友達ができた。
名前は馨。あ、苗字聞いてない。
初めてイベントへ足を運ぼうとした際、入り口で声をかけてくれた。
あれは正直助かった。
初参加にはハードルが高すぎる。
最初は女の子かと思ったらどうやら男子らしい。小柄で華奢、中性的。
あれで男子で一個下とかうそだろって思った。
だがタイミング的に最高で、向こうも初って事で一緒に入れた。
まぁ、なんだ。
こんな会話が合う奴いるんだなって感じと、一緒に周ってマジで楽しいなって思った。
友達ってこんな感じなんだろうなってさ。
イベント中、何組かのライヤーさんに撮影をお願いされ、馨が困惑してたのを見て、すぐフォローに入った。
友達ってお互いを助け合うってアニメでやってたしな。
その後ファミレスで3時間も話し込んだ。
こんなに話したのは初めてだ。
馨といると面白いし楽しい。こいつと友達になりたいっと思った矢先、馨から友達にならないかと言われ、嬉しかった。
連絡先も登録し、親兄弟以外で初めて友達を登録した。
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ただ今帰りました。
と、玄関で靴を脱ぎリビングへ。
リビングでは、母が寛いでおり父の姿はなかった。
「あら滝さん、おかえりなさい。いつもより表情が明るいみたい」
「そんなことは。いえ、そうですね、今日友達ができまして」
友達ができた事を伝えると、母は嬉しそうに微笑んだ。
母はもう50をこえている。高齢出産で命と隣り合わせで産んだのが俺だ。
恐らく高校で俺に友達がいないのを危惧していたのだろう。
「あらあら、それは良かったわね。どんな子なの?」
「他高の奴で、名前は馨。苗字は今度聞いてみる」
馨。男女区別がつかない名前である。
母親として、将来のお嫁さんなのか、一生付き合う友達なのか判断がつかない。
「そうなの。今度家に連れてきなさい。私もご挨拶したいわ。聞いてくださる?」
友達と家で遊ぶ。
なんて良い響きか。
滝は母の言葉に頷き、自室へ行った。
滝が部屋から出て、母の静江は息子の嬉しそうな顔を見て安堵する。
友達がいないのは薄々感じていたが、年頃の子に友達を作れとは言えない。
ずっと関係が続く様応援し、何かあれば手助けすると決めたのだった。




