第五十四話 グレイスの憂鬱
第五十四話 グレイスの憂鬱
☆森の神殿キャンプ
「ふぅ、やられたな」
『完璧に嫌がらせじゃったな』
そう
紛れもなく嫌がらせだった。
それもグレイスからの
「あの紫頭、覚えてろよ!」
アルマの付いているジル、クリス、真奈美も冒険者ギルドで似た様な目にあったらしい。
これはグレイスからのアピールなんだろう。
「お目付役が付いてると言う事か」
『じゃな。で、明日本当に営業許可を取りに行くんじゃな?』
「ああ、拠点は欲しいからな」
場所を確保し、娼婦奴隷を確保し、行動開始だ。
俺は敢えて三人とは別の宿を取った。二部屋を確保し、今俺の部屋には金髪ご奉仕メイドゼシカと姫騎士エアリスが控えている。
一応は四人づつと言う事になる。
だが悪いがオウングスは影の中だ。
ここで晒す訳にはいかん。
そして俺は女達にお湯を与え湯浴みを鑑賞中だった。
酒場の主人からは客を取らせる様に勧められたが丁寧にお断りさせて頂いた。
どちらも真面目で気の強そうなルックスなので恥じらうさまは眼福だ。
因みにエアリスにはドノヴァンの娼館で見つけた秘蔵の品を与えてある。
そこには──何故かニーソがあったからな。
俺は地球からの転生者のナイスな仕事振りに敬意を払いエアリスに着用を命じた。
今日は長い夜になりそうだな。
恥じらいながら頬を赤く染める二人は最高だ。
と言いたいが
そうはいかない。
俺はオウングスを残し三人の元へ向かった。
♢
「ここか」
三人の止まる宿屋にそっと隠密と忍足で接近する。
俺達の宿より繁華街に近いそこは夜中でも人通りが多かった。
どうやらかなり明け方まで営業している様だ。
(まあ危険と隣り合わせだからな)
ダイレクトに欲望を満たしているんだろう。如何にも冒険者だな。
そっと屋根を伝い窓から三人の部屋に潜り込む。
「きゃあっ!」
「な、どうしたのよ!」
「佐藤くん……」
三人は湯浴みの真っ最中だった。
むふふ、狙い通りだったな。
『その為にワザワザ私に湯浴みを命令させたんですね』
アルマ、溜息を吐くんじゃ無い。
真奈美、膨らむ頬っぺは相変わらずキュートだな。
ジルとクリスは処女なので顔が真っ赤になっている。
いやあ、初々しいね!
だが三人とも湯浴みを止める事は出来ない。俺が止めさせ無い事を悟っているから恥じらいながらの湯浴みを堪能させて貰った。
「で、本題なんだけど」
俺はここで組織から送り込まれた三人の情報を確認する。
♢
「どんな奴等だった?」
「ええ、剣士と盗賊、弓術士のスリーマンセルでした」
ジル曰く腕前はそこそこらしく全員男だったらしい。
実に浪漫の無い話じゃないか。
許せんグレイス!
「魔法職無しか?」
「ええ、彼等なハンターだよ」
「ハンター?」
「うん、モンスターの魔石や素材、ドロップアイテムを専門に狙う低層階を集中的に活動する奴等だよ」
クリスによれば、深い階層を狙いリスクを冒すよりも、安全に狩れるモンスターを狙う事に徹底し稼働率と安全性を重視したやり方だそうだ。
熟練の冒険者が引退間際によくやるスタイルらしい。
「……じゃあ熟練冒険者なのか?」
するとジルが首を横に振る。
「いえ、かなり若いわね。彼等はいわゆる偵察とか支援が任務じゃ無いのかしら? 深層を目指すアタックチームのルートを見つけ出す為の」
「……偵察ね」
登山する時のシェルパみたいなもんかな?
ベースキャンプを保持したり、支援を目的として感じなのか?
少なくとも足手まといにはなら無いんだな?
「森の神殿か」
俺は三人の宿泊先を確認し再び闇の中に消える。
屋根の上から森の神殿の入り口を観察すると、絶えず監視兵が目を光らせており、近くにはかなり大きな駐屯所がある。
稀にだがやはり大魔宮らしく出入りはある。
目指す階層や領域により時間を調整しているのかもしれ無い。
(ジルとクリスは迷宮の経験があるらしいが森の神殿は大魔宮だ。やはり三人と最初は連携するべきだな)
アルマを付け、まずジルとクリス、真奈美を送り込んでみるか。
(真奈美はトリプルだからな)
そう、英霊魔術、儀式魔術、巫女が真奈美の真の姿だった。
姫巫女とは第一位の巫女にあたえられる称号であり、実際には固有スキルの塊なのだから。
さて、それでは探索でも始めるか。
俺はサーチとロケイトを使う。
(そろそろ最初の動きがあるかもしれんからな)
「あらあら、随分と不用心ね」
「!!! ……グレイスか…」
(……俺の背後を取ったか。殺気があれば感知出来たかもしれんが、全く無かった)
「やっと到着とはいいご身分ね」
「いやいや、これでも急いだんだぜ? グレイスこそ随分と時間を持て余してるみたいじゃ無いか。手の込んだ悪戯には参ったよ」
「ふん! 冒険者登録し無いのは分かるけどなんで商業登録して娼館経営なんか目指してるのよ! 依頼の件、ちゃんと理解してるのかしら⁉︎」
「グレイス、声が大きいぞ」
背後からローブを着た男が怒り心頭で声を荒げているグレイスを嗜める。
(こないだ部屋にいた奴か)
「セダム、こいつの所為でエルベは放棄する事になったのよ!」
(俺の? 俺の所為? どう考えてもドノヴァンの所為だろう?)
「まあ、いいわ! でも覚えておきなさいよ! 依頼を果たせなかったら分かってるんでしょうね!」
「分かってるんさ。それで一つ頼みがあるんだけどさ」
グレイスとセダムは疑念に満ちた視線を目の前のサトウに向ける。
「そう、簡単な話なんだよ」
絶対そんな簡単な話では無い。
二人はそう確信している。
だが事はそう単純では無かった。
またサトウは無理難題を吹っかけるのたが、結果的にグレイスはその申し入れを受け入れる事になる。
何故ならエルベの拠点を失った責任はサトウとドノヴァンの所為だとしても、それを任されているのはあくまでもグレイスなのだ。
ここならエルベからも近い。
「……分かったわ…受けて上げる」
「グレイス! 正気か!」
「セダム、この任務だけはどうしても果たさなければなら無いのよ。そして今それが出来る可能性が有るのはサトウだけよ」
そう、その手にオウングスと姫巫女を手にしているサトウはこの森の神殿を突破する可能性が最も高いのだ。
二人の力は、魔法が当たり前のこの世界に於いても異質なモノなのだである。
それは古き封印を解く鍵
「でも、アサシンギルドまで敵に回して出来なかったでは済まないわよ!」
そう、今の状態ではグレイスもセダムもドノヴァンの様にアサシンギルドの報復対象である可能性が高い。
簡単に手を引くとは考えられ無いのだ。
しかし、この冒険者ギルドと商業ギルドの管理地域なら話は違う。
これはグレイスが新たなる組織を再建するチャンスでもあるのだから。
「……失敗は許さないわよ」
「当然だ! 俺はまだ自分のハーレムを味わい尽くして無いんだよ。まだまだ諦める訳にはいかんからな」
グレイスは「フンッ」と一言だけ残し闇の中に消えて行った。
サダムはジッとサトウを睨み付けている。
その目には明確な殺意が見て取れるが必死で押さえ込んでいる様だった。
「手続きが終わったら奴隷娼館に来い。準備を進めておく」
そう言ってサダムはグレイスの後を追う。
「よし、手駒は揃った」
サトウはニヤリと笑うと時空魔術での索敵を再開する。
(さあ、どう出る? 神殿騎士団、アサシンギルド!)




