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第五十二話 森の神殿キャンプ

第五十二話 森の神殿キャンプ



 サトウ達はマジックテントを収納し、打ち合わせ通り森の神殿キャンプに向かった。

 人気の無いのを見計らい、二手に分かれ街道に乗り込む。

 先ず先行させたのはジルとクリス、それと姫巫女 真奈美の三人である。この三人は冒険者として潜入する。そしてアルマが補助に付く。

 次にサトウと五人の従者と姫騎士エアリス、そして預言者オウングスが奴隷を連れた娼館の経営者として乗り込む。


 アルマの調べた所によるとかなりの奴隷商人達が入り込んでいるらしいから問題は無いだろう。サトウはさらに買い足し、娼館経営を始めるつもりなのだ。商人ギルドに登録は必要だが取り敢えず縛りも無いらしく、場代さえ払えば問題無いのがサトウにとって都合が良かったからだ。

 森の神殿キャンプで冒険者ギルドが管理するのはキャンプと森の神殿の安全であり、後は奴隷を連れて入る事は自由らしく特別な規制は掛かっていないらしいので、合法的に入り込む事が出来れば自由度は高い。

 ただ、それはアサシンギルドと神殿騎士団にとっても同じであり、大っぴらに付け狙う事は出来ないと言うだけでしかない。

 ただ、それだけでも随分有難い。

 冒険者ギルドと商人ギルドはこの世界でも最大規模の組織であり、この二つを敵に回す事など出来無いらしい。

 それは例えアサシンギルドや神殿騎士団にとっても同じ事なのだと言う。


(まあ、それで十分だけどな)


 幸いな事にサトウは犯罪履歴も無く、問題無く商人ギルドに加入出来る。そしてジョブにすら付いてい無い(あくまでもスキルを保持しているのみ)ので怪しまれる事も無い。

 ジョブやスキルやアビリティは検査対象では無く、ギフトである【災厄の渦】もギルドカード登録に当たって調べられる項目になっている訳では無いので全く問題無い。

 事前にアルマが調べていなければかなり危険な賭けだったかもしれ無いが。



 少し距離を開け、街道を数キロ歩くとようやく森の神殿キャンプが見えて来た。

 時間的にそろそろ到着する冒険者が増えるのか、門番の前には幾つもの列が出来ている。

 

(さすが人が多いな)


 入り口もさる事ながら、キャンプの中には結構な人が溢れ返っているのが見える。


(数千人はいるな)


 サトウは予想を超える人の数に少し驚いていた。


(この人数が一斉に動いたら大混雑になるんじゃ無いのか?)


 初めて見る大魔宮にサトウの興味は尽き無い。それは従える五人の従者やエアリスにしても同じ事だった。

 騎士は討伐や攻略命令が無ければ迷宮に好んで入る事は無いのだ。それは冒険者の役割であり、騎士の本分では無い。


 そうこうするうちに、先行したジル、クリスの受付が始まった。

 何やら門番と話し込んでいるが、元々冒険者である二人が居るので問題はない。

 筈だ。


(大丈夫だよな? 姫巫女 真奈美の事も知っている者など皆無の筈だからな)


 そしてアルマから合図が来る。


『サトウ、問題無く通過出来ました☆ 真奈美は従者登録しておけば迷宮には入れるようですね〜』

『ふむ、その辺は後で組織の三人と打ち合わせしてみるかな』

『では一旦先行してジルとクリスに三人と接触してもらいます〜☆』

『よしなに』


 そしてジルとクリス、真奈美はキャンプに潜入出来た。元々が冒険者なので手慣れたものである。


 サトウはジッとそれを見つめながらキャンプに入る人の列に並んだ。


『さて、次はお主の番じゃぞ』


 影の中からオウングスが耳打ちして来る。


『大丈夫、後ろの奴隷達に皆視線が釘付けだぜ!』


 そう、五人の従者達は皆扇情的な衣装に身を包み、そして隷属の首輪、手枷足枷をつけていて、何処から見ても奴隷娼婦にしか見えない。

 ただ、顔はレースで直には見えない様にしてはあるが


 皆の視線を集めながら、待つ事十分ほどで問題がサトウを呼ぶ。


「次の者!」


「はい、よろしくお願いします」


 訝しげに門番がサトウ達を見る。

 もうかなり奴隷娼婦達は連れ込まれているらしい。


「ふむ、五人とは少ないんじゃ無いか? 元からの老舗もあるからな」


 アルマによれば既に営業している娼館も七つほどあり、娼婦も百人近く入り込んでいると言う。そして日々増え続けているそうだ。


「ええ、ですから現地でも買い入れる予定でして」


 そう、このキャンプにも奴隷娼婦を扱う店が複数ある。一攫千金が狙えるこの大魔宮では一晩で富を得る者も珍しく無く、需要はかなり有ると言う。

 サトウは実際にそれを買うつもりなのだ。

 ドノヴァンから手に入れた資金からではあるが


(まあ、【翡翠】が手に入ったらドノヴァンに買い付けて来たとか言って渡してもいいかな。これで丸く収まるんじゃ無いかね?)


 門番は顔を隠すレースを一人一人上げて調べる。

 その時、サトウはそっと門番に耳打ちする。

『よろしければ数日後に商売の準備が出来れば、是非いらして下さい。暫くは奴隷も新しく購入して教育もあるので無理ですが、是非皆様とおより下さい』

 それを聞いて女達はギョッとするが、サトウは素知らぬ顔で割り符を渡す。

『これをお持ち下さい。暫くはギルドの上の方がいらっしゃるので無理ですが』

『う、うむ、仕方ない、まあ、商売に励んでくれ』


 そう言って門番は犯罪履歴を調べる為にサトウを魔法の石版の前に案内する。


(これが真偽の石版か)


 古の技術によって造られたマジックアイテムであり、決して偽装は出来ないと言う。


(そもそもそれが怪し過ぎるがな)


 サトウはニコニコとして手を置く。

 反応は当然の様に青だ。

 後ろに控える審議官が許可を出すとサトウ達はキャンプへの入場を許された。


『やれやれ、やっと終わったか』


 何気にオウングスは素通しである。

 その影術は驚異的な潜入スキルの宝庫である。ただ、固有ユニークスキルである為、存在が謎に包まれており、その所為でなおのこと影術を止める事を難しくさせていた。


 しかし、サトウが呼び止められる。

 それは門番のリーダーと思しき男だった。


「おい、サトウと言ったな?」


 不意に呼び止められ、サトウは一瞬緊張を顔に出すが直ぐにおさめる。


「……はい、何でしょうか?」


 その男は身長2m近い巨漢だが、引き締まったその体躯は歴戦の冒険者そのものだった。そして顔に特徴的な傷がある。深く抉られた頬の傷に思わず視線が吸い寄せられる。


「護衛も付けず、街道を渡って来たのか?」


「……ええ、この者達は皆戦闘も夜の務めも果たせる者達ですので、かえって私が護衛される始末でして」


「なるほと、大した荷物も持たず乗り込むとは中々の商売人だな。まあ、森の神殿はこれからも人が増え続ける。くれぐれも騒動など起こさぬ様にな」


 その男はニヤリと笑い、視線を外すとヒラヒラと手を振る。


 サトウは『……手強いな…』そう判断した。

 その立ち居振る舞いからは並々ならぬ実力が窺い知れる。


(武器屋のグラムのおっさんより上かもな)


 そして

 女達もそれを感じ取っていた。

 皆の顔に緊張が走る。


(冒険者ギルドを舐めてたな)


 サトウはギュッと拳を握り締め、チラリと一度だけ振り返ると、ゆっくりとキャンプの中に歩き出す。


 その背後には、今日も多くの冒険者達が森の神殿に押し寄せている。


 森の神殿の騒乱はまだ始まったばかりなのだ。

 

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