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第四十七話 五人の従者 五人目 ②

第四十七話 五人の従者 五人目 ②


☆オウエン大森林


 森の中で息を潜め、サトウとゼシカはそっと騎馬隊が近ずくのを待っている。

 接敵まで後わすがの時間しか無い。その間、オウングスは影を放ち距離をはかりながら、その動向を探っていた。


 すると、オウングスが影の中から姿を現わす。

「どうした、もう来るのか?」

「……そこなんじゃがの、ちと様子がおかしいのじゃ」

 珍しくその表情には困惑の色が見て取れる。

「……何がおかしいんだ?」

「……うむ、どうやら、追われておるようじゃな」

「……誰が(俺たちは追われててるんだが)」

「うむ、騎馬の先頭はどうやら追手との追撃戦を繰り広げておるようじゃな」

「つまり、アサシンギルドでは無い?」

「その可能性が高いの」


 サトウは思案する。


 この街道から外れた古い道

 この道を単騎で抜けようとする者とそれを追撃する者

 ここから森の神殿までは一日の距離

 ここから一番近いのはエルベの街


(どう考えても何らかの関係がある者だろ? しかも俺達がエルベから姿を消したタイミングから動き出したようだし)


 取れる手は四つ

 このまま放置

 追われる者を助ける。

 追う者を助ける。

 どちらも始末する。


 サトウはどの手がもっとも効果的か考えを巡らす。

 【災禍の渦】を持つ自分ならどうするべきか。

 この場合、もっとも危険なのは身の安全を確保する事だ。そんな事をすれば不幸がかさにかかって襲って来るだろう。

 一番大事な事は混乱させる事だ。

 なるべく多くの者が、なるべく酷い結末になる様に仕向ける事、それだけが次への道を繋ぐ。

 この場合はどうか?

 逃げる単騎は何らかの使命がある。それを達成されては困る者が追っている筈だ。

 それがエルベから森の神殿の間に並んでいるのだから、俺達には何らかの関連性が有るに違い無い。


「よし! 追って来る騎馬を始末し、逃げる単騎をさらう。それで行こう」

「ほ、本気か! どちらも敵に回す事になるかもしれんのじゃぞ!」

「それは覚悟の上だ。しかし森の中で一人を追いかけ、しかもお互いローブを被っているのは、どちらも素性を晒したく無いからだからな。言いたくても言えん可能性もあるぞ?」

「……それはそうじゃが」

 確かにその可能性はある。

 しかし、それは可能性があると言うだけで何の確証がある訳でも無いのだ。

 だが、サトウはそれでも決断する。

 直感的に感じる違和感にサトウは運命を託したのだ。

 ただ、一つだけ間違い無いのは、サトウは絶えず先手を打ち、状況を良かろうが悪かろうが動かし続ける事を優先している。


 今回も同じ事だ。

 そうでなければ、平然とアサシンギルドを敵に回したり、ローランドから姫巫女を掠め取ったりなどする訳が無い。

 ワザと危険な方に状況を動かし、相手を迂闊に動け無い様に仕向けて行くのがサトウの戦術なのだから。

 だから、今回も情報を集めたり事態の推移を見守ったりなどする訳が無かった。



「さて、話は決まった」


 そう言うと、サトウはスッと立ち上がり、森の奥から騎馬の足音を捉え、ジッとその視線で見定めようとしていた。

 ゼシカとオウングスは諦めたかの様に準備を始める。

 オウングスの影がゼシカに付き、オウングスはサトウを護る為に影の中に潜んだ。


 そして──道の彼方に騎馬を捉えたサトウは──その姿を森の中に溶け込ませる。


(全然気配が捉えられ無いわ。ジルやクリスの言う通りね)


 そしてゼシカは森の中の少し開けた丘の上から、その大魔術ウィズダムに捉えるべく神経を集中し始めた。


「まさか味方の直上を狙うなんて」


 ゼシカはローランドでの苦い思い出を振り払う様に、その杖に魔力を込め始める。


(後は合図待ちね)


 ゼシカはジッとその刻を待つ。



 サトウは隠密と忍足を使い、森の中を迫り来る騎馬に向かっている。

 まだ追手の可能性が無い訳ではないが、それでもサトウの選択肢は変わら無い。

 何れにせよこのまま接近を許す訳にはいかないのだから。

 それなら少しでも自分達の為になる様に手を打つべきなのだ。サトウはそう確信している。


(ふむ、当たりだったのかな)


 そっと気配を伺うと

「やった! 逃げてるのは女騎士だな!」

「き、貴様まだそんな事を!」

 呆れるオウングスにサトウはニヤリと笑い、道に踊り出ると真っ直ぐに迫り来る騎馬に向かって走り始める。


(先頭はローブを被って素性を隠した女騎士! その後に少し遅れて騎馬兵が八騎か)


 サトウはこう推理している。


 幾ら鍛えられた軍馬でも一日中全力で走り続ける事は出来ない。なら女騎士が人知れず抜け出したのを気が付いて後から追いかけ始め、ここ数時間てー追いついたのなら、間違い無く行き先が分かっているからだ。

 追手を幾つも放ちその一つの可能性もまだ有るが。


 なら必ず追手は再度かかり、森の神殿での接触は明日以降になる。


 時系列的にまず単騎の女騎士を保護し、こちらに問題があれば引き渡す。

 ただその判断をする為には同時に接触は不可能だ。

 そして共通の敵の可能性も有る。

 なら全滅させる必要があると


「なんとまあ無茶苦茶な推理じゃの」


 オウングスは諦めたように指示を出す。


『単騎をやり過ごしその直後にあの騎馬を足止めする。良いな!』

『はい! 用意は出来ています!』

「サトウ! 準備は出来ておる! 後悔するんじゃないぞ!」

 その口元に凶暴な笑みを浮かべ、サトウは真正面から踊り掛かる。


 狭い森の道を巧みに騎馬を操りながら女騎士は必死に逃走を続けていた。


 隠密と忍足を使いサトウは女騎士とギリギリの距離をすれ違う。

 その刹那、サトウは馬の腹部をほんの少し切り裂く。それはほんの僅かだが、確実に馬の体力を奪うだろう。

 次の瞬間サトウは迫り来る騎馬の直前に飛び出し、そこでオウングスが闇術を発動する。

 突然、黒い羽根と黒い手が湧き出し一瞬騎馬が怯んだその隙を突き、ゼシカの地系魔法が放たれる!

「[クレイアサルト]!」

 第五位階の地系魔法が数十メートルに渡り斜面を押し崩して騎馬の足を絡め取り、横倒しになって動きが止まったその時、次の大魔術ウィズダムが降り注ぐ。

「[サンダーストローム]!」

 そして同じく第五位階の雷撃系魔法が数十メートルに渡りその猛威を振るった。

 サトウはオウングスの黒い羽根により絶縁空間を作り出しその中に退避していた。

 オウングスの闇術も全ての属性を遮断出来る訳では無いが、雷撃系は相性が良い事を事前に調べ、それなら躱せるだろうと二撃目に選んだのだ。

 八騎近い騎士達はそれでもまだ反撃に出ようと騎馬を捨て立ち上がろうとしている。


「これをレジスト出来るんだな」

「……間違いないぞ! 彼奴ら神殿騎士テンプルナイトじゃ!」


(ならコレは装備効果か)


 ローブの下の装備迄は確認出来なかったが、マジックアイテムなのは間違い無いだろう。そして魔法と剣の両方を使いこなすのが神殿騎士テンプルナイトの筈だ。


 サトウは周りで立ち上がる神殿騎士テンプルナイトの視線を集めながら、その装備を確認した。

(弓兵は居ない。魔法専門も居ない様だな)


「貴様ら! 何故に女一人を追い回す! 神の名において見逃す訳にはいかぬ! 早々に立ち去れば見逃してやろう! 引かぬなら、斬る!」


 そう言うと、サトウはそっと風切り丸を抜き、死蝶短剣デスバタフライナイフを抜いた!

『今ここでそれを抜くのか!』

 驚くオウングスだが、これで彼等とアサシンギルドの関係性が掴める。


 サトウはジッと反応を見る。


 しかし、騎士達は何も答えようとはしない。


(ふむ、まるで反応無しか。つまりこちらの素性は知らないんだな)


 そして

 風切りのと死蝶短剣デスバタフライナイフをヒュンの大きく弧を描く様にクルリと周囲を見渡しながら廻ると、次の瞬間──隠密と忍足を発動し──分身を四つ放った。


 それを丘の上にからゼシカは確認し、オウングスからの合図を待つ。


 サトウは八人の神殿騎士テンプルナイトを相手取ろうとしている。

 本来ならそれは無謀な選択なのだが、サトウは自然と笑みがこぼれるのを隠せ無かった。


「……では…参る…」


 


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