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第四十六話 五人の従者 五人目 ①

五人目から展開に捻りが……

( ̄Д ̄)ノ

第四十七話 五人の従者 五人目 ①



 フローラを連れてサトウが帰って来たのは三時間ほど経ってからだった。

 その間はオウングスが警戒に当たり、ジルとクリスを中心にして森の中を移動していたのだが、ゴブリンとグレイウルフの群れと接触があり、瞬殺したらしい。

 連絡役も兼ねるオウングスの影は森の中を縦横無尽に動き周り、旅の安全を確保してくれる。直接的な攻撃力は弱いが、応用の効くスキルだと言えるだろう。


 フラフラになっているフローラを嬉し気に抱えて帰って来た時は皆ドン引きしていたが、それはサトウもさる事ながら、普段真面目そうなフローラの豹変振りに対してでもある。

 誰にでも均等に鬼畜なサトウは全員の前で無理矢理その後裏の顔を晒け出させるのが殊の外好きな様だった。

 真奈美は呆れ顏ではあるが決して怒りはしない。そして従者同士で面倒を見合う様に指示を出し、素知らぬ顔でサトウと話し込んでいる。

 そしてーー皆気が付いている。

 次が誰かを

 五人の従者の最後の一人

 金髪の魔女ゼシカ−ブラムはジッとサトウの後ろ姿を見ながら、自らに声が掛かるのをまっていた。


(もう! するなら早くしてよ!)


 昨日からの一連のやりとりで全てを把握しているゼシカはヤキモキとしながら昼食の準備をしている。

 サトウが帰って来なかった所為で、当然の様に皆が帰りを待つ。


(どんだけやりたい放題なのよ!)


 ゼシカにしても、サトウに隷属する事には異論は無い。何故なら姫巫女を救いローランドの干渉を跳ね除ける事が出来るのはサトウしかいないのだから。

 サトウに付き従うのは何らおかしな事では無い。ただ、決して暴力的では無いし傲慢でも無いサトウではあるが、その無軌道な行動に振り回されるのはゼシカにとって決して喜べるものでは無かった。

 しかし

 四人は違う。

 四人は何も言おうとはしないが、明らかに態度が変わっている。


(何でなの?)


 皆口止めでもされているのか、何も語ろうとはしない。焦らしに焦らされ、ゼシカは心の奥に苛立ちと不安が積み重なっていくのを感じていた。

 戦争奴隷から解放され、再び姫巫女のお側に仕える事が出来て嬉しいはずなのにその心は晴れない。

 ただ、目に見えて姫巫女の態度が柔らかくなり、幸せそうなのを見るとやはりサトウの事を認めざるを得なかった。


(何にせよ規格外過ぎるんでしょうね)


 間違い無く目の前のサトウは今まで出会った事の無いタイプの男である。


 ゼシカは人の五倍は食べるサトウに呆れながらも、それでも甲斐甲斐しく給仕を行う。今までならそんな事はしなかったのだが、ゼシカの心の中にもやはり変化は訪れている。

 そして少し胸の奥が締め付けられる様な不思議な感覚

 今までそんな色恋沙汰に無縁だったゼシカはそんな自分の変化に戸惑いを隠せ無い。

 ローランドでは金髪の魔女として味方からも恐れられていたゼシカが、初めて意識した男

 目の前のまるで雲の様に捉えどころの無い支配者は、ゼシカに対する欲望を隠しもし無い。その目は野獣の様に爛々と輝き、口元に浮かぶ笑みは如何にも鬼畜で非道な振る舞いを予感させられずにはいられなかった。


 そして、ゼシカの戸惑いが現実のものになるのは一時間ほど経ってからになる。

 オウングスの影が後方から迫ってくる騎馬を捉えた。

 ここは街道から離れた森の中の殆ど使われる事の無い古い道である。様がある者など稀だ。


 つまり


「捕捉されたのか?」

「じゃろうな。気配は消しておったつもりじゃが、彼方此方で派手に暴れた奴がおるからの。それを追われた可能性は高い」


 その通りだ。

 サトウはこの道すがら四つのモンスターグループを壊滅させているのだから。


「……まあ、佐藤くんらしいわね」

 真奈美は諦め顏でそう言うと

「……最後はゼシカにやらせるの?」

「そのつもりだけど」

「……あの娘は規格外だから巻き添えになら無い様に気をつけてね。戦場では敵も味方も恐れてたのよ。ローランドの金髪の魔女はダテじゃ無いんだからね」

 少し心配気にチラリと後片付けをしているゼシカに視線を向ける。


「さて、どうするのじゃ! 騎馬は十騎ほどじゃ! 恐らくは神殿騎士テンプルナイトかいずくかの手の者じゃろうな。ローブに身を包んでおるから確認はとれんかったがの」


 サトウはさらなる伏兵を警戒し、かなり手前で捕捉殲滅する事にした。


「皆聞け! 今、後方より追い縋る騎馬兵団が現れた。先ず俺とゼシカが殲滅に当たるが機動力に物を言わせて突破される可能性がある。よって第二陣をジルとクリス、そして最後に姫巫女を四人の従者で守るんだぞ」


 突然現れた追っ手にも動じ無いサトウは淡々と迎撃準備を整えさせる。


「来いゼシカ! 俺とお前で追っ手を殲滅する」

「は、はい」


 慌ててサトウの元に走り寄るゼシカを連れ、森の中を追っ手に向かう。


 恐らく五人の中で最も激戦になるであろう事は間違い無い。


 そして何故かサトウはサッと手を出した。

「ええっ! あ、あの」

 戸惑うゼシカを無視し、サトウは「さぁっ! 」と手を強引に握り森の中へ引き連れて行く。

 この中で手を握られた者はまだいない。

 そして皆がそれに気が付いていた。



 数分後

 サトウとゼシカは森の中の丘に辿り着く。

 ここは騎馬と姫巫女達との丁度中間に当たる。


「ゼシカ、お前は魔法使いなんだな?」

「は、はい。戦闘は魔法主体です」

(金髪の魔女ゼシカとは中々そそる通り名だな)


 今ゼシカが持っているのは細身剣レイピアとワンドのみ。いわゆる前戦にも立つ魔法使い系の典型的装備だ。


「金髪の魔女ゼシカたるスキルは何だ?」

「私はジョブを四つ持つフォースです」

「フォース……フローラよりも上なのか」

「上かどうかは別にして、私は純正のチートスキルとして、幻術士メスマー召喚士サモナー大魔導士ウィザード具現術士コンジュラーを持っていますが、全ての魔石を奪われて契約を破棄させられているので召喚魔法サモンニングは使えません。また、具現魔法コンジュレイションも書き記した魔道書グリモワールを奪われているので、限定的です」

「では使えるのは幻術ファンタズム大魔術ウィズダムだけなのか?」

「……はい、それでも攻撃と支援は十分行えると思います」


 サトウは追っ手の実力をはかりかねていたが、このまま防戦はやはり危険だと判断し、こちらから奇襲を掛ける選択をした。


「分かった。ただ手持ちに魔道書グリモワールは無いから、暫くは諦めてくれ。あと、装備はこれを」


 サトウは魔導士の杖を渡した。

 これで魔力か多少は高まる。ゼシカには物足りない装備だが、本来ならAFアーティファクト級の装備でなければ釣り合いは取れ無いのだから仕方無い。


「いずれ高位のマジックアイテムを手に入れたら渡すからな」

「!!! は、はい。ありがとうございます」


 大魔導士ウィザードはユニークジョブを除けば最も火力の高い戦闘特化型の魔法系ジョブだ。クリスがどちらかと言えば近距離から中距離までが得意な魔導士ソーサラーだが、大魔導士ウィザードは中距離から長距離を得意とする。その分WTウェイトターンは長めだから、その辺りは痛し痒しと言う所だろう。


「巻き添えが一番怖いな」

「!!! は、はい! 二度と同じ過ちは起こしません!」

(同じ過ち? この女何かやらかしてるな)


 クリスのファイアーエクスプロージョンでもあの破壊力だから、本気で気をつけて貰わねばな。

 焦げ焦げは御免だ

 恐らく今は使え無いのだろうが、禁忌魔法クラックワーク古代語魔法ハイエンシェント竜言語魔法ドラゴンロアー辺りも使える様になるだろうが、その辺も含めて恐れられていたんだろう。


「ゼシカ、課題は三つ! 遠距離大砲撃を確実に当てろ! 詠唱は早く正確に! あと俺の動きを読んで巻き添えにし無い様に注意しろよ!」

「!!! もしかして……私はマスターが斬り結んでいる時も魔法を?」

「当然だろ? でなけりゃ戦力が半減じゃ無いか! なんせ俺は近接戦闘特化だからな」

「……私は大規模範囲攻撃呪文も使うんですよ? かなり危険です。おすすめ出来かねますが」

「心配するな!俺にはゴスロリ座敷童がついとる! ある程度ならオウングスの影術、闇術、霧術で防げる筈だからな」

「ば、ばばかもの! この女はあの天使付き女アサシンよりも上何じゃぞ! 失敗したら骨も残らんわ!」

「そこを何とか!」

「ぐっ! こんな時ばかりしおらしい!」

 ここは押しの一手だろう? 猛爆大魔術を掻い潜りながらの超近接剣魔複合戦法を開眼するチャンスだ!

 渋々オウングスはゼシカと何やら相談し始めた。どうやらゼシカもオウングスの魔法は知ら無いらしい。あいつも何気にチート持ちだからな。


 そして数分後、オウングスで回避出来る魔法が幾つか判明し、二人は打ち合わせをしている。

 うむ、よろしく頼む。

 出来れば俺の記憶力は当てにし無い方針で頼みたい所だな。


 そして「どうなっても知らんからな」「味方を狙って撃ち込むのは初めてですが頑張ります」と二人は俺に実に真剣な顏で言ってくる。

 どうやら俺は地獄の釜の蓋を開けた様だった。

 そしてオウングスが影をゼシカにも放ち、連携を取りながらの戦闘になるらしい。しかも放つ時は基本的に俺の直上に投下するそうだ。中途半端に余波を喰らったり、倒し損なった奴が周りにいる方が危険なんだそうだ。

 そして俺にマーキングする所為で狙い易くなるらしい。

 今更止めとこうとは言えんな。

 何故なら

 ゼシカの顔が今まで見た中で一番の笑顔だからだ。

 この女、きっと破壊衝動の塊なんだ。だからあんなに大規模破壊系ジョブを抱え込んでいるに違いない。そして姫巫女と共に厄介払いされたんだ。


 少し後悔している俺にオウングスが囁く。

「主様よ、おいでなすったぞよ」


 遠くから蹄の音が響く

 オウングスの言う通り十騎違い騎馬兵のようだ。

 さてと思い腰を上げ言った責任を取ろうとふと横を見ると、ゼシカが獰猛な笑みを浮かべて騎馬兵を見ていた。


 気の毒に──いや、俺もか。



 

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