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第四十五話 五人の従者 四人目 ①

第四十五話 五人の従者 四人目 ①


☆オウエン大森林


 翌早朝

 サトウはマジックテントから抜け出すと、周囲の探索を開始する。このマジックテントにはモンスターを退ける魔法が付与されてはいるが、その所為で効果範囲の外にモンスターが溜まる場合があるからだった。

(ふむ、特に問題は無いか)

 サトウはジルとクリスに朝食の準備をさせる様に伝えると、昨日一晩中悪戯されてぐったりとしているオウングスを影の中に憑かせ、さらにその外側への索敵を開始させる。

 フラフラとしているオウングスにサトウは再び悪戯を仕掛け様としているが「い、いい加減にせんか! わ、妾によくもあ、あんな事を!」と言って逃げ出そうとするのを愉しむ様に抱きすくめる。

「さあ、急いで探して来てくれ! 順番がつかえてるんでな」

「お、お主、本気で全員の……その

…奪うつもりなんじゃな」

「ああ、明日には森の神殿に着くからな。それまでに五人は仕上げる予定だ」

 因みにオウングスは散々悪戯されてはいるが、ジルとクリスと同じく未だ処女のままだった。


 必死にサトウの手を振りほどきオウングスは再び森に影を放つ。

(あ、あの鬼畜めが! ぜ、絶対にゆるさぬ!)

 顔を膨らませ影の中に消えるオウングスをサトウはニヤニヤと見ている。反省の色は全く無い。姫巫女 真奈美は慣れているのかまるで気にも留めず、サトウの側に歩いて来た。

「虐め過ぎじゃないのかな?」

「いやいや、これ位普通だろ? ちゃんと慣れて貰わないとな」

 ジルとクリスに言われて朝食の準備をしている五人の従者はサトウと姫巫女の会話に必死で聞き耳を立てている。特に三人は真剣だ。

 真奈美は「はぁっ」と呆れているが、一応はサトウに釘を刺す。無駄だとは思いつつも、この世界の過酷な現実を考慮して、元の世界での自分が受けた調教を振り返ると、少し心配で、少し可哀想になったからだ。

「佐藤くん、元の世界みたいに余裕は無いんだからね。あんまり酷い事をしちゃダメだよ」

 決して止めろとはお首にも出さない真奈美の話に聞き耳を立ている皆は、当然いずれは何らかの調教を受ける事が前提なんだなと納得していた。普通に夜の相手をするだけでは無いのだと。

「なに、何れは自分から求めて来るようになるさ。真奈美みたいにな♡」

「!!! あ、私の事は良いのよ!」

 顔を真っ赤にしてドギマギとする真奈美を皆がチラチラと観察している。気になって仕方が無いのだろう。何故なら未来の自分の姿が、今の真奈美の中に見て取れる筈なのだから。

 そして一番には(……調教って何…)それが気になって仕方無かった。


 ジルとクリスは、アサシンギルドに狙われ、ローランドからも狙われている姫巫女を抱え、それでも全く気にした様子もなく鬼畜な行動を繰り返すサトウに呆れながらも、昨日の三人の変化を微妙に感じとっており、自分達が順番を抜かされた事を何となく理解していた。

 別に問題は無い筈なのに、何故か胸の奥が少しグラグラとする事が理解出来無い二人は、必死でその感情に気が付かない様にしているのだが、チラと目線を合わした真奈美はいずれ時間の問題だろうとまた一つ溜息を吐くと、サトウをジロリと睨む。


「いつものパターンね」

「さて? 何の事かな」


 絶妙なデリカシーの無さを発揮するサトウはニヤリと笑いながら如何にも支配者然として朝食を待つ。しかし誰も何も言わず朝食の準備をしている。ただ、サトウの底知れぬ器の大きさと言うか何事にも拘らぬ精神だけは、皆を惹きつけ、安心させているようだった。


 真奈美は「そこがタチが悪いのよ」とボソリと呟いたが、聞こえている筈なのにサトウは何も答えず、ニヤニヤと自らの奴隷達を眺めている。



 数刻後

 朝食を終え、再び移動を開始したサトウ達は森の中を進んでいる。

 未だモンスターとの接敵は殆ど無い。あっても弱い個体ばかりで向こうから逃げ出して行くのだ。サトウにしてみれば何とか明日迄には面談を済ませて置きたい所だったのだが、オウングスの放った影からも反応は無い。

 ジルを先頭に進む一向はディアナのロングレンジスィープのテストを兼ね、陣形を組んで戦闘態勢に付いている。いざとなればサトウ抜きで戦う事になっていたのだが、その前に、オウングスの影がモンスターの群れを一つ捉えた。索敵能力ではオウングスが一歩抜きん出ているようだ。


「見つけたぞ! コレはオオトカゲじゃ。一匹だけ2キロ前方におるぞ!」

「よし、良くやったぞ」

 影から顔を出すオウングスの頭を撫でてやり、今晩またご褒美をやる事を告げると顔を真っ赤にして影の中に潜り込んでいく。だいぶ慣れて来たようだ。

 さてと五人の従者に目をやる。

 今日は後衛職の二人だ。

「フローラ、お前だ」

「は、はひい! が、頑張ります!」

「大丈夫よ、フローラには神の加護が付いてるんだから、落ち着いてね」

「はい! 姫巫女様! フローラは必ずやご期待に答えて見せます!」

 このたどたどしい少女はローランドの神官かと思ったら、少し凄い奴だったようだ。



「[生命魔法]と[神聖魔法]が使えるのか?」

「は、はい。ファーストジョブは[生命魔法]が使える僧侶クレリックですが、私は生来の加護持ちだったので、セカンドジョブと言うより、ダブルと言われるチートスキルに近い形で神官プリーストのスキルも取得しています。ただ成長はかなり遅いのですが……」


 どうやらフローラは司教ビショップを天職として持っているようだ。

 普通は魔法使い系のジョブとのダブルになるらしいが、フローラのダブルは劣化版なのか回復系が二つだ。ただし、レベルが上がると新しいジョブを獲得する可能性は高い。

 そして同じ回復魔法を行使するにしても、内容は大きく違う。

 僧侶クレリックの持つ魔法スキルである[生命魔法]は回復ヒール治療キュア蘇生レイズ解毒アンチドーテなどの治癒魔法と、それと身体能力に作用する強化魔法と弱化魔法に加え、それらの魔法の効力を反転させた幾つかの攻撃魔法を有する。そしてそれらの魔力の根源は生命力と精神力である。数あるジョブの中で最も低コストで治癒魔法を行使できるのが僧侶クレリックの強みだ。

 神官プリーストの持つ[神聖魔法]は神と天使への信仰心がその力の源となっている。一通りの治癒魔法も持っているが、特徴的なのは祝福ブレス浄化イクソシズム聖歌チャントなどの神の奇跡力を行使できる事にある。また、完全死からの復活である再生レザレクト転生リンカーネイトなども駆使する神官プリーストは正に神の代弁者と言えるだろう。

 そして生れつきの神の加護待ちである事が全ての根幹となっている。

 ただし、コストが高く当然連発は出来ない。そしてその奇跡に応じたリスクも背負っているのだが、それでもその有用性は高い。ただし、戦場ではそれ以上に人が死ぬし、戦局を変える迄には至らないため、どうしても高い身分の貴族などの占有となりやすいのだ。


 さて、装備は槌鉾メイスを持っているだけだ。魔力保有力も高そうだし、少し防御力を上げておきたい。

鉄胸当チェストメイル小型盾スモールシールドを装備しろ。あと槌鉾メイスはこの地精の槌鉾を持て。咄嗟のストッピングプレッシャー位にはなるからな」

 フローラが即死だけは避ける必要がある。対人戦闘なら間違い無くフローラから狙われるだろうからな。


「では行くか! トカゲ狩りだぞ」


 て言うか、フローラが活躍する時って、俺が危機的だと言う事なのか?


「が、頑張ります!」


 ……微妙だな。


司教ビショップ


「でかいトカゲだな」

「は、はい、10m位は有りそうです」


 目の前に居るのはコモドドラゴンと言うれっきとしたトカゲだ。デカイが羽根は無く空を飛ぶ事は無い。ポイズンブレスが厄介なのと突進力はかなり有る。皮膚は鎧の素材になる位だから防御力も高い。つまり──


「フローラが上手く俺を支援しなければ結構ヤバいな」

「そ、そうです! 頑張ります!」


 課題は二つ、的確に距離を取り攻撃を受け無い事と、俺の行動を読み的確な支援魔法をかけ続ける事だ。

 何気にヤバい相手な気がするが。


「では仕掛けるか。支援魔法を頼む」

「は、はい!」


 フローラはそっと俺に手を翳し強化生命魔法を三つ掛けた。

「[ハードスキン]![フルブースト]![ヘルスドーピング]!」

 これは対BOSS戦用の三種の神器と呼ばれる生命魔法で、コストは高いが接近戦主体の俺には相応しい魔法らしい。

「えっと、[ハードスキン]で防御力を向上させ、[フルブースト]で瞬間的に筋力ストレングス敏捷性アギリディ器用度デクスタリ回復力スタミナ耐久力バイタリティを底上げし、[ヘルスドーピング]でHPを倍化させました!」

 俺はは確かに身体の奥底から力が湧き上がって来るのを感じていた。さすが僧侶クレリックだと言う事か。治療だけでは無いのだ。

「あと戦闘突入直前に防御力を下げる[ソフトスキン]と、行動力を落としWTウェイトターンを遅らせる[スロウムーブ]を掛けます!」


 そしてフローラは自らにも魔法を掛けて行く。

「私には移動力を上げる[ムービングプラス]と[マジックシェル]を掛けます。これで準備完了です。効果時間は約30分ですのでそれまでに決着がつかない時は一旦逃げましょう!」

 フローラ曰く強化魔法の効力があれば十分に逃げられると言う。


「いや、ここでケリをつける。そのつもりでいろよ」

「!!! ……は、はい」


 さあ、その力を見せて貰おうか


 俺が突撃した次の瞬間──フローラの[ソフトスキン]と[スロウムーブ]がコモドドラゴンに放たれ──それが開戦の合図となった。



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