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第三十二話 奴隷市場

第三十二話 奴隷市場



「さあ、これが今日の夜にオークションに掛けられる戦争奴隷の中でも、特に質の高い五人だ」


 引き入れられて来た五人は手枷足枷がつけられており、かなり厳重な雰囲気だった。サトウは揶揄い半分で乗り込んで来たのだが、思わず視線を奪われる。


「因みにみな処女だ」

「!!!!!」

『落ち着かんか! どうせ買えんのじゃろうが!』


 そう、異世界に転生して来たばかりのサトウにはそんな資金は無い。これは売られた喧嘩だ。揶揄いに来たサトウをせせら笑う為にワザと手の出ない高値の戦争奴隷を並べ立てたのである。


 そして説明が始まった。

 五人を引き入れて来たのは女の調教師の様だった。服装も顔つきもその道に精通している雰囲気を醸し出している。本来なら相手にもならぬ筈の下賤の女に命令されている五人の美女の表情は苦悩に満ちているが、もはやその運命から逃れる事は出来ないのだ。


『何気にそそるシチュエーションだな』

『何を呑気な事を! どうするつもりなんじゃ! しかもまだ隠し玉がある様じゃったぞ! その者はさらに高値がつくんじゃぞ? 恐らくこの五人を合わせたよりもな!』

『まあ、まあ、取り敢えず聞くだけ聞いてみよううじゃないか♡』


 そして女調教師から説明が始まった。

 五人の服は如何にも奴隷らしいボロボロの布切れだった。本当に売る気ならもっと着飾らせるのだろうが、そんなつもりは無いらしい。

 まあ、かえってそそられるがな。

 そして五人は俺に買われたくは無いらしく決して目線を合わそうとはしない。まあ、誰にでもそうなのかもしれないが。


 チラリと見ると、一人目は大柄な女戦士だ。胸も大きいが身体も大きい。かなりボリュームがある。肌は少し褐色を帯びているのは南方系なのかもしれない。

 二人目はセミロングの金髪に白い肌、典型的な白人種のようだ。雰囲気は女騎士か魔法剣士だな。

 三人目はライトブラウンの髪と少し低めの身長は後衛から中衛のタイプに思える。身体付きから察すると弓兵では無いだろうか?

 四人目は如何にも細身で銀髪に白い肌か。恐らくは魔法使い系だろう。そしてそのキツそうな目つきは激しく属性攻撃をかまして来そうだな。

 五人目は如何にもおっとりとしてふくよかな身体付きは神官か巫女、それとも修道女あたりか? 生産職の可能性もあるが、戦争奴隷ならそれは可能性は薄いだろう。


 女調教師はなんやかやと説明して来るがサッパリ耳に入ら無い。

 そしてドノヴァンも同じく舐めてかかっているからそもそもちゃんと説明する気が無さそうだ。


 さてどうするか

 五人全部欲しいが必要経費にはならんだろうし、流石にタダでは心苦しい。


「さて、サトウ、どうする? 値段を聞くか?」

「いや、結構だ」

『やれやれ、やっと諦める気になったか』


「さて、ドノヴァン、俺はこの五人が全員欲しい。そして隠し玉の最後の一人もな」

 その言葉にドノヴァンの笑みが消える。そして指で女調教師を下がらせた。

「……金はあるのか…」

 そして鋭い眼光で俺を見据えて来る。殺気を隠そうともせず俺に対峙するドノヴァンはどうやら本気のようだ。

「金は無い(知ってるだろうに)」

「……勘違いするなよ、貴様は仲間では無い。あくまでも取り引きをグレイスがしただけだからな!」

 俺はそっと席を立ち五人の前を歩きながら一人づつ話掛ける。

「俺の奴隷になるならお前らの大切な人を必ず助けてやる。どうだ? 俺の奴隷になりたいか? このままならお前達はみな変態貴族の慰み者だ。そしてお前らの仰ぐべき人はさらに酷い目に合うだろうな」

 そして俺は一人づつまた目を見据えていく。やっと全員が俺を見た。

「サトウ! 金が無ければどうにもなるまい! オークションでは高値が付くのは間違い無いからな! 最低でも一人5,000,000Gはつくだろう! 貴様にそれだけの金はあるまい!」

「……金は無い。だが俺は【災厄の渦】の保持者だ。それを忘れるなよ」

『ば、馬鹿者! 【災厄の渦】なぞこんな下っ端が知っておる訳なかろうが! それにオークションは今夜なんじゃぞ? [森の神殿]に行っても間に合わぬぞ!』

 ドノヴァンは溜飲が下がったのかニヤリと笑いこう言って来た。

「サトウ、オークションは今夜だ。特等席を用意して是非お待ちしてるよ」

 そう言って配下の男を呼び扉を開けさせた。

 俺は最後に五人に言い放つ。

「お前達はもう俺のものだ。そして最後の一人もな」

 そして俺は部屋を後にした。



『サトウ、一体どうするつもりなんじゃ! あそこまで言っておいて放っておくつもりなのか?』


「……オウングス、お前ちょっと表に出て来い」


『……馬鹿な! アサシンギルドはアレで全部壊滅した訳では無い!必ず追手がかかるんじゃぞ! それに妾と一緒におればお主も…………まさか…』

「俺は手に入れる時は手段は選ばん。さあ、二人でお茶でもしに行こうじゃないか!」

『……お主……その性格が【災厄の渦】そのものじゃよ……』

「何を失礼な! これは哀れな女性を救う男の務めさ!」



 呆れるオウングスを尻目にサトウは奴隷商のテントを後にした。

 それをドノヴァンはジッと見ている。

「ふん! 若僧に何が出来る!」

 そう言ってドノヴァンは配下の男を呼び出した。

「御用でしょうか? ドノヴァン様」

「護衛に使える奴等を集めておけ。守りを固めろ」

「はい。仰せのままに」

 ここにはドノヴァン子飼いの私兵も数多くいる。そして腕の立つ者も数多くいた。サトウに襲撃された屋敷はあくまでも現地で雇った者を集めていただけなのだ。言わば捨て駒でしかない。しかしこの奴隷商館は違う。表向きは仮設のテントを立ててはいるが、本命は奥にある商館の地下にあるのだ。ここはあくまでも儀装でしか無い。


「いい気になるなよ! 若僧が!」


「ドノヴァン様、あの者はどうしますか? やはり今日取り引きを?」


 奴隷売買は組織の収入源であり権力者と繋がるための重要なパイプでもある。ドノヴァンはその裏の仕事を一手に引き受けて来た。そしてそのネットワークを使い情報収集や暗殺までこなして来たのだ。


「どうせサトウはアサシンギルドにも目を付けられている筈だ。逃げる事しか出来まい」


 しかし、この時ドノヴァンは確かに嫌な予感を感じていた。だがサトウへの怒りがそれを押し流してしまっていた。


「オークションは予定どおり行う。女達の準備をしておけ!」


 そう言われて女調教師は仕方なく引き下がった。この時、この女調教師は正確にサトウの事を理解していた数少ない一人だったが、その意見を主であるドノヴァンに伝える機会は永遠に失われる事になる。


(あの男は本物だわ。そして絶対に関わってはならない生粋のトラブルメーカーよ)


 しかし、女調教師がどう思おうとも、もはや手遅れだった。陰鬱な気持ちでオークションの準備に取り掛かるその足取りは重い。


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