第二十九話 アサシンギルド
第二十九話 アサシンギルド
☆
茶店を出て歩き始めると露骨に動きがあった。
その余りにも稚拙な対応にサトウは思わず苦笑いを浮かべる。しかしジルとクリスには装備の手応えを確かめる良い機会になるだろうと、ワザと人気の無い場所を[ロケイト]と[サーチ]を駆使してまで探し出し、引き摺り込もうとしていた。
「……尾けて来ていますね」
「……十人位かな?」
「……その辻を右に曲がるとスラムに出るから、そこで迎えうとうか。装備を曲がったて視界から外れたら確認しろ」
「「……はい…」」
仕方なく二人は返事をして気取られぬようにその時に備える。
しかし、サトウはその気配に違和感を覚えていた。最初は街の札付きかと思ったのだが、その行動は盗賊やその類とは違う統率され訓練されたモノの様に思われる。
(これは…なすりつけられたのか)
辻を曲がり少し開けた場所に出た時「しまった!」とサトウが思ったその眼前に三人の男達が立ちはだかった。
完璧に姿を消していた三人は恐らく隠蔽効果のある高位の魔道具を使用しているのだろう。「ちっ! [サーチ]でも捉えられ無いとはな!」と呟くサトウに、三人の中の一人が話しかけて来た。
「悪いがさっきの少女に関して聞きたい事がある。正直に答えた方が身の為だぞ」
(やはり預言者を追う者達か)
そして全員が得物を取り出し、殺気を放ってくる。
「お前らこそ正直に答えた方が良い。貴様ら何処の国の手の者だ!」
サトウの問いに男達は吐き捨てるように言った。
「はぁ? バカかお前らは。あいつはな、預言者を偽り俺たちを騙したんだよ! そのケジメを取りに来たのさ!」
「…………は、はい⁉︎…そ、それって?」
「あいつはな、俺たちの組織に妙な預言をふっかけてきやがったのさ! 森から異変が起こるとかどうとか言いやがって、三日経っても何も起こらねえ! 蜘蛛だかなんだか知ら無いがな! それで身柄を抑えようとしたが変な術で逃げ回ってるんだよ!」
「「「!!!!!」」」
三人は唖然となり顔を見合わせる。
『これってあの蜘蛛の事じゃ無いのか?』『それしかかんがえられないわね』『じゃ、じゃあ私達の所為なの?』
三人は深い溜息を吐いた。
「……悪い事はいわない、やめておけ! 預言者でも色々あるんだからな、そんなに責めてやるなよ(原因が俺とは言い難いが)」
「残念ながらこれは組織の命令なんでな! さあ、オウングスの居場所を吐いて貰おうか! でなければあいつの味方をするつもりのお前らにはここで死んでもらうほか無い!」
そしてサトウはまた深い溜息を吐いた。
「お互い大変だな」
そう言って風切り丸を抜きそのまま[風斬]を放った。繰り出された大気の刃を目の前の男達はなんと初見で躱してみせる。どうやら今までの奴等とは違うようだった。
「へぇ! 中々に腕が立つ!」
ジルとクリスも身構え、ジルは双剣を抜き、クリスは魔力を高めあっと言う間に[マジックボルト]を放った。数発の魔弾は後方から襲いかかってくる男達に直撃する。吹き飛ばされる者を掻い潜り刃物を振り被った男にサトウの[サイコブロウ]が首を有り得ない角度に捻じ曲げた。真下からピンポイントで顎を打ち抜いた一撃は首をへし折り背中まで飛ばす勢いで男は宙を二三回転して転がっていく。そしてジルは魔弾で倒れた男達に双剣を振るい首を跳ねた。
絶句する男達だが決して戦意を失わない。サトウは咄嗟に[サイコブラスト]を放ち続け様に[マインドブラスト]を三人に叩き込むとそのまま[破斬]を放つ! 正面の三人の男達は致命傷では無いものの対応出来ず釘付けにされてしまう。その隙は致命的だった。
剣技LV3は完璧に間合いを見切り、これ以上ないタイミングで三人の懐に飛び込んで行ったサトウは、風切り丸を上段から打ち込む! リーダー格の男はそれでも剣で受けるが反撃は出来ず、周りの二人は反応すらできない。受けた剣との火花散る剣戟の音が響くその瞬間、サトウはナイフを何時の間にか風切り丸を振り切った右手とは逆の左手から投げ付ける。ほぼゼロ距離からの剣戟から投擲への連続に、リーダーは避ける事すら出来ず顔面に深々と突き刺さった。
「ぐっ!」と思わず手を顔に伸ばしたその時、振り下ろした風切り丸を跳ね上げ一気に両断する! 飛び散る鮮血を躱す様に身を翻し、サトウは残る二人におどりかかると、一人の首をはね最後の一人の首の付け根にショートソードを突き立て絶命させると、そのまま一瞬だけ死んだ男の身体の影に隠れ、隠密と忍足を発動した。
その時クリスは二射目の[マジックボルト]を残った男達に向けて放った直後だった。サトウが動いた事を察知したジルは双剣を納め荊の鞭を構える。
流石に手練れが揃っているのか二人が躱し挑みかかってくるのをジルは荊の鞭を振るいその動きを止めた!
中距離範囲攻撃は接近しようとする二人を見事に足止めし、そこに前触れ無く何かが振り下ろされーー順番に二人が崩れ落ちていった。
ジルは「サトウね」と呟きクリスに魔法を止める様に合図を送る。見えず気配すら捉えられ無いサトウだが、必ず接近戦を挑んでいるはずなので誤射を避ける為だった。
そしてジルは飛剣を、クリスはメイスを構えサトウの攻撃を待つ。
すると二つの光の軌跡が残った三人に近付いた次の瞬間、その身体が分断され肉の塊となった。
そこにサトウが隠密を解き現れる。
そしてまた深い溜息を吐くと
「オウングスにはお仕置きが必要だな」
♢
倒した男達の持ち物を調べているジルがサトウを呼ぶ。
「サトウ、まずいかもよ」
「どう言う事だ?」
「こいつらはアサシンギルドの一員かもしれ無いわね」
「うそ! なんでそんな奴等がこんな辺境に出張って来てるんだよ!」
「でもこいつらは暗殺者では無く現地構成員ね。本物ならもっと手強い筈だから」
ジルは割り符の様な物を見つけ出していた。そして独特の短刀
「アサシンダガーなんてこの辺じゃ滅多にお目にかかれないもの。しかも全員なんて」
「オウングスを探そう。奴はこのまま雲隠れする可能性が高い。俺たちに擦りつけてる隙に動いたのかもしれんな」
そこに昨日のローブを纏った男が現れた。苦々しい口調で三人に言い放つ。
「ガイにあれほど目立つなと言われていたのになんの真似だ! 依頼をこなすつもりが無いのならこのまま始末をつけてもいいんだぞ!」
その言葉には強い怒気が混じっている。
「心配するな、依頼には必ず応えるさ。それより、これでお前らの組織とアサシンギルドが対立する可能性が出て来たんだが、その対応はよく話し合って置いてくれよ。俺も必要以上な争いは好ま無いからな」
「……やはりこいつらはアサシンギルドか」
「どうやらな」
サトウはジルとクリスに合図を送るとどうやら倒した奴等からの回収を終えた様だった。
「では失礼する! 俺たちはまず[翡翠]の回収に向かう事にするからな。お前も早く逃げろよ」
すると衛兵が騒ぎを聞きつけて走って来るのが見える。
「余計な事だ。貴様らこそ目立ち過ぎるな! グレイスが依頼など回さなければ始末してやるものを!」
サトウはニヤリと笑い裏路地に走り込んで行った。
そしてローブを纏った男は死体に火の魔術を放ち証拠を隠滅していく。この事が露見するのは自らの為にもならないと判断したからの行動だが
「……アサシンギルドまで動くとは」
ローブを纏った男はそう呟き闇の中に溶け込んでいく。後には幾つも炭の塊になった死体だけが幾つも残されていた。肉の焼け焦げる臭いを残して




