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第二十八話 きっとロリババア

第二十八話 きっとロリババア



「ゴクリッゴクリッゴクリッ…ぶはぁっ!」


 レモン炭酸水をジョッキで飲み干し、サトウの食事が終わったのは一時間ほど経ってからだった。ジルとクリスは何も言わず後片付けを始めている。


 元の躾が良いのか二人の手際は見ていて気分が良い。そして美人でスタイルも素晴らしいし、好き放題できる自分の奴隷でもあるのだ。その愉悦に浸りながらサトウは満足気に動き回る二人を見ている。年の割りにマニアックな趣味をしているサトウだった。


 しかしジルとクリスの心中は違う。二人は昔から見初められ声を掛けられる事も多かったが、サトウは食事しか目が無いかのように性的アプローチを掛けて来なかった。昨日もその機会はあったのだが、何故かサトウは手を出して来ない。


 しかしこのままと言うことは無いだろう。気になるの何時なのかと言う事なのだが、ジルにしてもクリスにしてもどうしても晴らしたい恨みが有る。その手前、敢えて自分達からアプローチする事はやはり憚られた。


 いずれにせよ二人は「やるにせよなんにせよハッキリして欲しい」と言う事なのだが、サトウはどうやらそんな二人を楽しんでいる節がある。


 二人とて若い娘盛りである。知識もある程度ある。そして目の前にいる男は恐るべき強さを持ちながら偉ぶる事も驕る事すら無く、縁も所縁も無い自分達を助ける為に組織のアジトに乗り込んで、さらに壊滅させてしまったのだ。天涯孤独な二人にとって英雄そのものだと言っても過言では無い。


 その男が自分達の事を俺の物だと公言しているからには、その先の展開を考える事は自然な成り行きである。あるが、サトウはもう一つ二つ上を行く男だったようだ。ジルとクリスはこれからジワジワとその毒牙に架けられていく事を想像すら出来ないでいた。



 ひとしきり食べ終わったサトウに満足したのか、遠巻きに見ていた人々は何時の間にか屋台の前に行列を作っている。サトウの食べっぷりに当てられたかの様に屋台に並び茶店に運び込もうとしている様だった。


 そしてくつろぐサトウとジル、クリスの前に、一人の少女が歩み出て来る。白いフードで顔を隠したその少女は、穏やかなそれでも通る声で話し掛ける。

「そなたは転生者サトウじゃな」

「「!!!!!」」

「……………」

 突然声をかけて来た、誰も知らぬ筈のサトウの秘密を知っているその少女にジルとクリスは驚きーーサトウは沈黙した。

「初対面とは思えぬ親近感を感じるな。きっと前世での深い縁でもあったに違い無い。お嬢さん、名を名乗って貰おうか」

 すると少女はフードの下でニコリと微笑むとサトウに語りかける。

「妾は預言者オウングス……今日はお願いがあって参った。是非聞き届けて欲し事があっての」

 見た目にそぐわぬ古い言い回しーーそして俺達の探す相手だった。

「ふむ、俺にどれだけの事が出来るのかは想像つか無いが、聞くだけは聞いてやろうじゃ無いか。それに噂に聞く預言者様だ。俺が言う事を聞いてくれるかどうがも預言で分かってるのか?」

 すると少女は「ふぅっ」と深い溜息を吐きさも呆れたかの様に答えた。

「預言とは未来の幻視を啓示として認識したものを、受け取った人間の言葉で人々に伝えるもの……おいそれと覗き見る様な類のモノでは無い。まあ、お主かおかしな依頼を受けておる事くらいなら垣間見るのは雑作もないがの。そしてお主は必ず妾の願いを叶えるじゃろうて。これは預言では無く洞察力じゃな」

 その口振りは如何にも預言者の如く全てを見透かした様な物言いだった。サトウはジッとフードを被った少女を睨みつける。そしてその意図を読み解くべく[マインドリィーディング]を行使するが、当然の様に跳ね返された。


(ちっ! 精神抵抗か…まあ、当然と言えば当然なんだが)


「で、聞き届けて欲しい事とは何だ? 仕方ない、聞くだけ聞いてやろうじゃないか」

「うむ、それはの、妾を聖女より守って欲しいのじゃ」

「……聖女だと?」

「聖女が妾の力を必要としておるのよ。しかし妾は利用されたくはないのじゃ! だから何処でも構わぬ、妾を連れて逃げてくれ!」

 そこへジルが割って入る。

「サトウ、聖女とはこの国では国王の次に尊いとされる、神に仕える巫女達の頂点に立つ存在よ。確か代を重ね、当代の聖女の名は確か…」

「聖女セルマじゃ! 全く鬱陶しい女よ! 何処で聞きつけよったのか妾の力の一端に辿り着きよったのじゃ! さすが聖女じゃと褒めてやりたい所じゃが、妾は囲い込まれるのは好かんのじゃ! のう、頼む! 今ならまだ正規の騎士団は動いておらぬ。何処でも良いから自由に動き回る事の出来る国へ連れて行ってくれぬか! 報酬は弾むぞ! 是非期待してくれて構わぬぞ」

 サトウは思案する。三つの依頼の一つがこの預言者を拘束する事だったのだから好都合ではあるが、それがいわゆる彼女にとっての自由に動き回る事の出来ると言う条件を満たすとは到底思え無い。

 しかし依頼をこなさなければジルとクリスは裏切り者のままになってしまう。それを放置して組織を壊滅させる方法もあるが、それは先行きを狭める事になり面白い展開になるのを阻害してしまいそうで嫌だ。

 そしてサトウはある事に気が付いた。

 単純な事だがこの依頼は期限を切られている訳では無い。おそらく俺が預言者オウングスを確保した事は直ぐに伝わるだろう。たが別に最初にクリアする必要は無いのだ。それにこの預言者を名乗る少女は、どうやら知られてい無い秘密も併せ持っているようで、実際に拘束するには危険な事態になる可能性もある。それなら暫くそばに置き様子を探るのもよいかもしれない。

 サトウは暫く考えて、ギリギリ依頼を放棄した事にはならないだろうと判断した。不誠実ではあるがそれならお互い様だろうと。そしてその後、オウングスの待遇をグレイスと協議すれば良いだろう。いざとなればいざとなれだ。

 そしてサトウは暫く逡巡したふりをしてオウングスに伝える。

「ではオウングス、君の願いを期待に応えられる範囲で叶えてやろうではないか。預言者からの使命、預言にそうべく助力させて貰おうか」

 するとオウングスはニヤリと笑うと

「うむ、預言では無く洞察力だと言っておるのに本当に人の話を聞いてない奴じゃの! まあ良い、おかげでこの街で引き込もる必要が無くなって助かったわ。取り敢えず礼を言おう。そして報酬は出来る範囲叶えて遣わそうかの。では一度戻り支度を整えて参る。また会おうぞ!」

 そう言って茶店を出て行った。さすが預言者と言うべきなのか、オウングスは何やら捕まらぬ自信があるようだが

「……得体の知れ無い奴だな…」

 オウングスを見送りながらサトウはそう呟いた。


 しかしこれで依頼のうち一つは半分解決した様なものだ。後は二つ、そして[翡翠]と呼ばれる石を探し出すのにあの預言者と名乗る少女は役に立つ筈だとニヤリと笑う。


 ジルとクリスは二人の会話を聞いてはいたが決して口は挟まない。そして、何れにせよ必ず事態は悪化して行くだろうと確信していたが、敢えて何も言わず、一度だけジルとクリスは目を見合わせ、肩をすくめ軽く溜息を吐いた。


 それよりも外から自分達を伺う複数の視線に神経を集中し、その事をサトウに伝えるように視線を交わす。そしてサトウはそれに応えた。


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