第二十六話 三つの依頼
第二十六話 三つの依頼
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グラムの店でこの世界の防具を一通り揃えた後、三人は大通りにある茶店に入った。雑多な人で賑わうそこは周りを気にする者などなく、ましてや三人に注意を払う者など皆無なので十分話し込める。
そしてサトウは依頼書を開く。
「さて、先ずどれから終わらせるかだが、難易度はどれが高いのかな? あと時間経過が不利に働くのはどれかな?」
与えられた一つは迷宮における石を集めるモノだった。さていったいなんに使うつもりなのか? それは[森の翡翠]と呼ばれる魔石らしい。どうやらそれが王の手に渡るのを阻止しなければならない様だ。
もう一つはこの街にいると言われている預言者オウングスの身柄を拘束するというもの
そして最後の一つ
領主の行っている怪しげな儀式の秘密を探りだし、出来れば阻止しろと書いてある。
その領主とは
「その領主の名はドルムント伯、あの森の向こう側にあるユニダス皇国の辺境伯よ。そして私達の家があった村を支配下においていたの」
ジルとクリスの秘密か。
「私達の両親はテトの村の庄屋だったのよ。貧しかったけど、何とかやってきたの。決して暮らしは楽では無かったけどね」
ジルとクリスは家を助ける為に冒険者となり、腕を磨いていたそうだ。そして仕送りをして何とかやっていた矢先、領主の使いがやってきて、テトの村の近くにある古い砦の地下で何かを始めたと言う。そして村人をそこに集め何かを始めた。そして多くの者が帰ることは無かったと言う。
「それに抗議した私の父は捕らえられ、そのまま……母もその時に連れて行かれたらしいの」
そしてその後、謀反の疑いをかけられ処刑されたと言う。そしてジルとクリスにも領主の手が伸び、辛うじて逃げ延びたんだそうだ。そして同じテトの村の出身者と、そして他にも同じ様に領主にさらわれた人の肉親や村の者が集まり、あの古い砦にアジトをつくり領主の秘密を暴こうとしていたという。
「そこへ俺が飛び込んだと言う訳か」
その森の中のアジトの近くに出来たゴブリンキャンプも、不思議な事に忽然と現れたそうだ。
「普通はある程度遭遇情報が集まってからキャンプって出来るものなんだけど、あの時はいきなり見つかってビックリして仲間を送り込んだのよ」
「偶然では無かったのかもな」
俺の持つ[災厄の渦]の導きなら必ず物事は悪い方に転がって行く筈だ。だからあの蜘蛛の呪詛もまだ終わりでは無い。そしてジルとクリスの村を襲った悲劇も。
「ジル、クリス、お前達二人は美人で腕も立つ、この街で新しい人生を送る事も不可能では無いだろう。でも、もしもお前達が両親や村の敵を取るつもりなら、きっと地獄行きだ。俺の世界ではな、こう言うんだよ[人を呪わば穴二つ]これは善悪とは関係無い。たとえ領主が良かろうが悪かろうが、最後は共倒れになると言う事だ。忘れるなよ。闇に近寄れば闇に染まる。決して戻る事は出来ない」
しかし、二人の決意は固い様だった。そこは俺が踏み入る事は出来ない二人の問題なのは間違いない。
「まあ、俺が壊滅させたんだし、二人はもう俺のものだからな。俺も関わらせて貰う事にする。しかし、俺の命令は絶対だ。それでいいな?」
二人は頷き、ジッと俺の目を見つめて来る。そういやまだ処女だったな。
「大事な話の最中なんだけど眼つきが凄くイヤらしくなってるんだけど」
「それがサトウらしいのかな?」
俺は溜息を吐き
「要は両親を殺した奴らに恨みを晴らしたいって事なんだろ?」
そう言うと二人は強く頷いた。
「最後はろくな結末にはならないぞ! それでも後悔しないんだな?」
「それだけはないわ」
「必ず報いを受けさせるの!」
俺はもう一度深い溜息を吐き「分かった。奴隷の願い、叶えてやろう」と伝えた。
そして二人はやっと安心したのか、少しだけ表情が緩んだようだった。
『俺の周りは執念深い女ばかりだな』
と呟くと
「何か言った?」
どうやら地獄耳でもあるらしい。
「さて、食事にしようか!」
そう! 先ずはメシだ!懐も暖かんだ。膝を抱えて部屋で考え込んでも何も変わらないからな。
俺は念願の屋台制覇を目論んでいた。
「サトウって落ち込んだり悩んだりしないんだね」
「前しか見えていない典型なんでしょうね」
「人間の基本は食事と睡眠なんだよ!」
サトウは二人を連れて大通りに出た。
ここは辺境一のエルべの街の大通りだ。そこかしこに屋台が立ち並んでいた。
「サトウ、あのお茶屋はお金を払えば場所も貸してくれるのよ」
「……よし、一部屋押さえろ! 買い出しだ!」
フードバトルが始まる!




