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第二十三話 夜襲

第二十三話 夜襲


「ここがアジトか」


佐藤はジルとクリスを連れ、アルマが追跡していた剣士の入り込んだ屋敷を[ロケイト]と[サーチ]で索敵していた。


「ここに私達のリーダーが入るはずなの」


しかしジルもクリスも、実際に会ったことは無かったと言う。いわゆる影のスポンサーだったそうだ。活動も森を中心にしていた所為で殆んどエルベの街に来ることも無かったらしい。


「……リーダーね」


俺は索敵を続けた。


ここは貴族の屋敷のようで内部には数十人の手勢が待機している。恐らくは宿屋を襲撃したのは本体と言うより傭兵的な存在だろうと佐藤は推察していた。恐らくあの腕の立つ剣士は(あの襲撃者の中ではだが)お目付役だったのだろう。だからこそ何よりも情報を持ち帰る事を優先した筈だ。


『まあ、ワザと見逃したんでしょうけどね』

「よく分かったな」

『まあ乗り込む良い口実にはなりましたけどね』

「そうなんだよ。これでお互い様だろ? 」

『死んでるのは相手ばかりですし、これで屋敷の中の手勢が壊滅すればほぼこの組織は終わりでしょうね』

「そう、そこまでの組織ならばな」


実際の所、ジルとクリスも資金援助を受けてはいたがそのリーダーが何を考えてるかまでは知らなかった。そして二人が何を目指していたのかも俺は知らない。マインドリーディングで表層的には読み取れても複雑な思考体系までは超能力LV3では不可能だ。


「先ずは乗り込んでみようじゃ無いか。敵対するならどうせ潰すしかない。味方になるなら頭くらい下げちゃおうかな」

『なんて値打ちのない頭なんでしょうね〜ま、それでも行くしか無いんですけどね』


そして佐藤は正面の門に向かう。


「今度は真正面から乗り込むのね」

「相手もまさか直ぐに来るとは思わ無いって事なの?」


二人はそれぞれ得物を携え佐藤の後ろに付き従っていた。そしてため息を吐いて諦め気味に肩をすくめると、それでもその目には決意をみなぎらせ死地におもむく決意を固めるのだった。




屋敷の前には三人の門番が警戒にあたっていた。壊滅させられたのは仲間のなかでも腕の立つ者が何人もいた所為で、動揺が広がり浮足立つ者もいる。


「ここにも来るじゃないか!」「ボルトが殺られたんだぜ、俺たちがかなうわけねえ!」「でも逃げる訳にはいかねえだろ?」


既に弱気になっている手下の中には連絡のつかない者もいた。金で雇われている奴等には忠誠心など殆んど無く、目的意識など皆無なのでは手の施しようがない。いや、そもそも組織などというものがそんな不確かなものかもしれ無いのだが、門の前の三人がそれを省みる機会はこの後直ぐに失われる事になる。それは不運だとも言えるし当然だとも言えるのだが、運命は無情にもその刻を告げる。



闇の中から二つの光が舞う。それは弧を描き煌めいたと思った瞬間ーー三人の門番を両断した。


隠密と忍足を使い間合いを詰めた佐藤は、まるで踊りでも舞うかの如く両手で剣を振るい三人を肉塊に変えるとそのまま硬く閉ざされた門に対峙する。


分厚い鉄の門だった。さすがに風切り丸といえど切断は不可能だろう。


しかし佐藤はスッと手を鉄の門に当てるとテレキネシスを使い、後ろで鍵をかけている横棒をスルスルと動かしてしまった。


〈ガタンッ!〉と棒が落ち、その音に屋敷の中にいた奴等がようやく気が付く。


〈ギィーーッ〉と開かれた扉は本来なら一人では動かす事など不可能な代物だが、佐藤のテレキネシスは当たり前のように押し開く。


駆け寄る男達は手に手に得物を持ち弓を構えるがーーそこには誰もいなかった。しかし、霧が、濃い霧が流れ込んでいく。まるで津波のように屋敷には霧が流れ込むと男達に混乱が始まる。


その霧はーー佐藤の放った風水術[スランバーミスト]だった! その霧は視界を妨げるだけでは無い。


「な、なんだ、身体が…」「し、しびれる?」「お、おい! どうしたんだお前ら!」


そう、それは麻痺と睡眠の行動阻害を起こす補助系の風水術だった。広がる霧に包まれ行動不能に陥る男達の間を佐藤は隠密と忍足を使い真正面から突破にかかる。


バタバタと崩れ落ちる男達を尻目に佐藤は再びロケイトとサーチを使い目標の位置を探っていた。この混乱の中でも動かない奴等ーーそれがリーダーと側近の可能性が高いと佐藤は読んでいる。


そして数分後、屋敷の奥に動か無い四つの人間を捉えるとーー佐藤は動いた。


『アルマ、ジルとクリスに陽動をかけさせろ』

『了解です〜特定できたんですね、ではぶちかまして貰いましょう!』


そう言ってアルマはジルとクリスに合図を送った。


「クリス、いくわよ!」

「はーい、では派手にいっていいんでしょ?」

「お好きな様に!」


そしてクリスは杖を振りかざしーー最大の炎の呪文を放つ!

「[ファイアーエクスプロージョン]!」


巨大な爆炎が館を襲いーー爆音がエルベの街に響き渡った!

《ドォオオオオオンッ!》

地鳴りにも似た破壊音と共に天を焦がす炎が舞い上がる!


あまりの爆発にジルの顔が引きつっている。

「……なかなか…派手ね…」

「……私も人に向けて放ったのは初めてかな?」


当然それに見合うだけの魔力を消費してはいるがそれは対人戦では間違い無くオーバーキルだろうとジルは燃え上がる炎を半ば呆然と見ていた。


二人の役目はここまで、後は逃げる奴等を足止めするだけだったがーー二人はそんな奴は一人も居ないだろうと確信しながらジッと屋敷を覆っている深い霧をみている。その中にーー死神ーーいや佐藤がいるはずなのだから。




「派手にやったな」


屋敷を半壊させたクリスの呪文を感慨深く見詰めながらーー佐藤が走りだした。しかし周囲にそれを察知出来る者は居ない。


屋敷の扉の前に飛び込んだ佐藤はそのまま風切り丸を振り切り[破斬]を放ち続けざまに[風斬]を二発放った。爆散した木の扉に驚いた者が振り返ったその瞬間大気の刃が人間をただの肉塊に変えていく! ドサドサと崩れ落ちる手足に驚いたさらに奥にいた者達にも同様の運命が待っていた。死は平等にその鎌を振り下ろし、後には血塗れの肉の塊だけが転がっている。


そして、佐藤はさらにそれでもまだ蠢いている人の間を、風切り丸とショートソードをまるで扇でも振るうかの様にクルクルと実に楽しげに切り裂き、断末魔の生命を刈り取っていく。


サーチでももはや周囲に動く者は居ない。そして佐藤は目標に向かって走り出した。


「あと四人だな」


その部屋は屋敷の二階、一番奥にある。

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