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第二十一話 姉妹の決意

第二十一話 姉妹の決意



「どうした、食わ無いのか? あいつらとは話を付けて明日の夕刻にまた会う事になった。今日は大丈夫だぜ? 多分だがな」


しかしジルとクリスは食べようとはしない。俺が二人の首を締め上げ、罰を与える事を宣言してから終始無言のままだ。


二人はトラブルになる事を分かった上で俺をあの店に連れ込んだ。それしか無かったとも判断出来るが、その所為で危険な状況に陥る事も十分に考えられる。そのままに出来る話では無い。


ジルとクリスは俺の力が分かっており、かなわない事を知っているのだろう。既に抵抗するつもりは無いように思える。


でもこのままではらちがあか無い。


さてここで話を付けようかと思った矢先、ジルが口火を切ってきた。


「あ、あの…サトウを引き摺り込んだのは…悪かったと思ってるの…それにあなたなら出来るって」

「ジル姉…ね、ねえ! サトウ、私に出来る事なら何でも…その……何でもするから…お願い……力を貸して欲しいの」


どうやら二人は俺に何かをやらせたい様だ。それは分かっていたのだが、どうやら普通に頼んでも断られそうだという事か。ん? まてよ? 違うな。これは保険なんだな? つまり、私達が欲しいならこのトラブルを解決し無いと手に入ら無いという事なのだろうか? 確かにこの二人には破格のトラブルが最初から着いていた。どう足掻いてもそれを解決し無いと手に入ら無いのは最初からか。つまり欲しく無いなら手を引いてくれという事なのだろうか? まてよ? その前に話ても信じて貰えないと言っていたな。つまり俺がアジトを壊滅させたと思われている事は弁明出来無いのか。俺は最初から奴等の敵な訳だ。やれやれ、最初から彼奴らとぶつかるのは確定なのか。この目の前の姉妹を手に入れるつもりならば、そしてここから逃げ出さなければ、俺はどうあっても奴等と敵対するんだな。


「私達に選択肢は無い事くらいあの森の中で最初から分かっていたのよ。でも。もしも嫌なら私達を捨てて行って。サトウなら簡単に逃げ果せるでしょ? でも……ここに残れば…戦う事になるわ。それでもよかったら私は貴方と一緒に戦う。でも……妹は出来れば許して欲しいの」

「な、何言ってるのよ! 私達はいつも一緒なんだから! サトウ! 私はジル姉から離れ無いし、私も一緒に責任を取るわ! だから…お願い! 私とジル姉をそばにおいて! なんでも……いう事は聞くから」

「最初から言っておくが、お前達二人はもう俺の物だ。だから選択肢は無いんだよ。そして俺の物に手を出す奴には相応の報いを与える! それだけだ。二人の話は明日つけるんだ、今日は飯を食って鋭気を養え! 全ては明日決まるんだからな。さあ食え! コレは命令だ! 従わなければ容赦し無いぞ!」

二人はビクッと震え、そして目を見合わせるとこう言って来た。

「それでいいの?」

「言ったろ、選択肢は無い。さあ食え! 飯を食わ無い奴にはろくな奴が居ないんだよ!」

そう言うとやっと食事を始めた。やれやれ、これで話が始まった訳だ。

「……ありがとう…サトウ…」

俺は聞こえないふりをして飯を食った。米の飯が食いたいがこの世界ではまだお目にかかれそうには無い。先ずは今日の夜を凌ごう。全てはそれからだ。

「てかこの肉の煮込みはスパイシーで美味いな!」

「それは豚をハーブに漬け込んでから煮込んでらあるのよ。このあたりの名物ね」

「この芋の茹でてあるのもホコホコして旨い」

「それはね、芋が違うんだよ。土地が豊かだから育ちが良いんだって」

「お代わりを頼んでくれ」

「まだ食べるの! 二人前でいい?」

「この魚の薫製みたいなヤツも頼む」

「!!!!!」

「その身体でよくそんなに入るわね!」

呆れる二人を他所に俺は初めて食べる異界の食事に舌鼓を打った。なかなかいけるな。素材がいいのかシンプルでも結構イケる。


『アルマ、周囲を警戒してくれ』

『まさか本当に今日手を出すつもりなんですか! 危険度MAXなのに!』

『俺は今を生きるんだ!』

『カッコつけてもただの女たらしです!』

『否定はし無い』


「でもお酒は飲ま無いのね」

「うん、さっきからレモン炭酸水ばかり」

ヒソヒソ話す二人は目の前の男につられてそれでも食事はすすむ。

「……不思議ね。こんなに追い詰められている筈なのに食事がすすむなんて」

「……サトウの影響なのかな?」


「肉のお代わりを頼む。二人前でいい!」

「ええっ! まだ食べるの!」

「サトウ、私のを食べてて、すぐ頼むから」


二人はその身体の何処に入るのか不思議でならなかったが、サトウの健啖家振りはとどまる事を知らなかった。


あまりに見事な食べっぷりに店主がデザートを付けてくれてやっと満足したのか追加攻勢は終わりを告げた。


「女将さん、泊まりたいんだが宿屋を紹介してくれ無いか? この三人なんだけど」


そう言うとジルは何も言わず、クリスは少しビクッとしてサトウを見ている。そして女将と思しき女性が奥から出て来て

「ウチなら格安にしといてやるよ。それに食事もサービスが受けられる。一部屋で良いのかい?」

ニヤニヤと笑いながらそう聞いてくる。俺は当然の様に答えた。

「ああ、邪魔になら無い様に奥の部屋にしておいてくれると助かる。お湯は使えるのか?」

「ああ、別料金になるがね」

「よし、それで頼む。取り敢えず一週間で頼むよ」

「!!! サトウ! でもそれは!」

ジルが慌てて訂正しようとするのを制し

「一週間だ! その代わりサービスしてくれ。ジル払っといてくれ」

「……分かったわ。それでいいのね?」

黙って頷くとジルは女将と宿屋の受付に向かった。俺はクリスを横に呼び寄せる。

「来いクリス」

少し怯えているのか、足が震えている様にも見えるが、俺はお構い無しに横に座られる。もう俺の物だからな。

「あ、あの…私……初めてなんだ。そ、その…ジル姉も……多分初めて」

「心配するな。俺は実は夜の勇者なんだよ。昼は仮の姿だからな! お任せあれ!」

「……お、お願いします…お手柔らかにね……」

そう言うクリスの目は少し潤んでいた。なかなか感受性豊かだな。

「……だいぶ仲良くなったみたいだけど、その前に汗を流しましょ。クリス、貴方もよ」

そう言って受付を済ませたジルが呆れ顔で鍵をクルクルと回している。

「よし! いこうかお嬢様方! 先ずは旅の汗を流そう」

そう言うと女将かクスクスと笑っていた。階段を上ろうとしていると何やらジルとクリスに話し掛けている。すると二人の顔が真っ赤に染まった。なんだ? あの女将中々の話術の持ち主なんだろうか?


そして駆け上がってきたジルは手を引っ張ると奥へと向かう。


「一番奥の部屋よ! あとお湯はサービスしてくれるそうだから安心しろっていってるわよ!」

「それで顔が赤くなるのか?」

「!!!……………ちゃんと身体をあ、あらってやれって…そ、その…終わってからも…中々いい男だから逃すなって……」

「それは見染められたもんだな! 是非期待に応えねば!」

「あ! 私は…そ、その……初めて……だから期待し無いでよ! そ、その全然お嬢様じゃ無いんだから!」

そう言って顔を背けるジル、そしてクリスは黙って後を付いてくる。


「こんな美人姉妹は元の世界でもお目にかかった事はない! 俺は幸運な男だな!」

そう言って二人を抱き寄せると

「きゃあああっ! ちょ、ちょっと待ってよ」「や、やあん♡ そ、そんなところ揉ま無いでよ!」

二人の肉体を堪能しながら部屋を目指した。かなり、奥だな。これも女将の心遣いだろうか? 是非その期待に応えねば!


『……やれやれ、そんな事気にするなとか、俺はお前達の笑顔が見られれば満足だとか捌き方は色々あるでしょうに、この敵陣真っ只中でよくやりますね。佐藤もサーチで周囲を警戒してたんなら分かりますよね? 剣技LV3で殺気を感知していましたよね?』

『これで連れたと思うんだがな』

『目の前でコレだけバカにされたら普通の人でもキレますよ』

『それでよし』

『やっぱりあなたは何処かおかしいんですね』

『褒め言葉だな』


そしてアルマは深い溜息を吐きながら宿屋の外へ監視に着いた。ふわふわと屋根の上に浮かび、周囲を警戒しながら素朴な疑問が浮かぶ。


『佐藤の命を狙う三人……だけなのかしら』


しかしアルマは考えるのを止めた。


『あの[災禍の渦]がこの世界にあるという事は必ず何かが最悪の結末に向かうと言う事なんだけどな』


どうせ事態は悪くしかならないのだから、想定は必ず悪い方に裏切られるのだろう。そう確信していた。そしてそれは見事に当たっていくのだった。


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