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からしが目にしみる夜に・・・  作者: 此花 陽
灰色と、からしの匂い

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冷え切った自販機の缶コーヒー_②

 指先から生み出されるのは、

明日には誰も覚えていないような無機質なコードの山だ。


 たいきが所属しているのは、

社員数十名の中堅システム開発会社だった。


 大学を卒業して入社して、今年で三年目。

真面目で、遅刻もせず、言われた仕事は文句を言わずにこなす。


 それが、社内における「たいき」という人間のすべてだった。

便利で、頑丈で、しかし決して主役にはなれない、代えの効く歯車。


「……何やってるんだろうな、俺」


 駅の自動改札へと吸い込まれていく、

規格化されたスーツ姿の群れを眺めながら、たいきは立ち止まった。

その波に乗ってしまえば、あとは簡単だ。


 黄色い満員電車に揺られ、揺り戻されるようにワンルームのアパートに帰る。

途中のコンビニで、半額のシールが貼られた弁当と、なんとなく惰性で選んだ

第3のビールを買い、テレビのバラエティ番組を斜めに見ながら胃に流し込む。


 そして、泥のように眠る。

翌朝、アラームの音で叩き起こされ、また同じ満微の電車に乗り込むのだ。


(俺の人生、このまま終わるのか?)


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