黒百合の子宮、純潔の子宮の嘘。
新年が明け、御石神社には参拝客が賑わい、御石神社の巫女さんの勤めに勤しんでいた結月は、輝七と薇愛の会話を耳にしてから、巫女さんの勤めを出来ずにいた。(御石神社に毎日祈りを捧げ、無償で奉仕しているのに、神社で輝七君と薇愛ちゃんの会話を聞いてしまった。赤ちゃんを産めるかどうか分からない私は、ただ御神木の陰でただずんでいるしかなかった。母親の育児放棄に、確執。私の事は、男と神社で作ったと言われ…。父親の顔どころか、誰かさえも分からない。縁ある御石神社が私の原点。幸せを祈願してきたけど、本当に導いてくれてるの?今の私には奉仕する気持ちも、信心の気持ちも失った)
「社務所閉まってるね。今日も御朱印ダメだね。巫女さんが書いてくれる星と月の御朱印、素敵だったのになぁ。残念よ」
「ママぁ。巫女のお姉ちゃんいないね。星のお絵描きしてくれないの?小さな男の子の声が結月の耳に入り、御神木の陰で目を瞑った。隣町の愛雲神社に参拝に行く途中で立ち寄ったが、参拝する事なく神社をあとにした。15分電車を乗り継ぎ、愛雲神社に到着すると、境内には女性の参拝客が長蛇の列をなしていた。結月は、縁の赤い糸の授与品を、1時間並び手にした。境内奥の敷地では、白黒縞模様の団体が、手をバタつかせ踊っていた。(あれって何なのかしら…新年の舞?)正月三が日という事もあり、愛雲神社には屋台が参道に並び、賑わいを見せていた。
「あっ、チョコバナナだわ」
「はい。いらっしゃい。どれにする?」
「星クッキーチョコバナナ下さい」
「まいどあり」
境内のベンチに座り、チョコバナナを手にした時…。輝七の事がフッと浮かんだ。(星のクッキー素敵、輝七くんみたい…)結月は、左手の縁の赤い糸を握りしめた。ルルルルルル。結月のスマホに、彼氏の力輝矢から電話が鳴り、嬉しさのあまりハイテンションの結月。
「きゃあ。もしもし、力輝矢さん?無事に海外から戻ってきて安心したよ」
「結月と、ヤリ%*★☆」
「もしもし?力輝矢さん?聞き取れないの」
「*%*○*ヤリて*%ヤリてぇ、クスリ」
呂律が回らない力輝矢の会話を聞き取る事が出来ず、困惑する結月。LINEを送ると力輝矢から「クスリ飲んで楽」のメッセージ返信。
(力輝矢さん、薬飲んで楽って…体調悪いのかしら。呂律も回って無かったし)結月が、((看病しようか?))とLINEしても、((気持ち良くなってきたから寝る))のLINE。結月の心配をよそに、力輝矢はセフレの薇愛と会っていた。
「タイの国でセックスした?」
「してねっし。ふぅ~」
「本当?タイに行って、女に跨がったんじゃないの?」
「女に跨がってねーし。象には跨がったけどな、象も感じてたぜ。パォーンってな」
「ねぇ、力輝矢…。お願いがあるの。人助けして欲しいのよ。40代のルナっていう女なんだけどね、昔付き合ってた男が紫陽花公園で不審死したらしいの。それから狂ったように、いろんな男とヤリまくってるみたいで、なんか頭がショートするみたい。病院に入退院繰り返してる。力輝矢さぁ、将来Drコトになるんでしょ?手を貸して欲しいの」
「俺はDrコパよりも、財前教授になるんだ」
「Drコトよ。力輝矢は、必ず財前教授になれるわ。その前にルナっていう女に凄いの1発宜しく!未来の財前教授は女を治療しないとね。知り合いに聞いたんだけど。ルナっていう女の退院が、1月7日らしいの。いざって時はクスリ使わないとダメよね」
「ルナっていう女を助けるぜ」力輝矢は、使命感を抱き始めた。薇愛は、セフレの徹とベッドを共にした時に情報を聞き出していた。薇愛は力輝矢に、20万を握らした。
1月7日。ルナは総合病院を退院した。内縁の夫の徹は、外せない案件の業務があるとルナに告げ、退院には付き添わなかった。薇愛の指示通りに、ロン毛を1つに縛り、ピアスを光らせながら病院の外で、ルナを待ち伏せた。
「あの、すいません。体調悪そうだから、俺が介抱してやるよ」
ルナは一瞬、時が止まった。(エンデュー?エンデューなのね?)ルナは昔、交際していたホストの恋人エンデューの幻覚を見ていた。力輝矢は財前教授をイメージさせる白いロングコートを羽織り、ルナと最高級ホテルグランドスターのホテルで何時間も交わった。
「病み上がりのカラダは、俺様の治療を待っているんだぜ、そうだろ?」
「エンデュー。昔みたいに、早く強くして」
「エンデュー?俺は財前教授だぞ?力輝矢様だ。俺様の治療は世界一だ」
「エンデュー、早く治療して…あっあーっっダメーッ」ルナは、体がのけ反り気を失った。(エンデュー…。愛しているわ…幸せよ)力輝矢は仁王立ちで、ルナのあらぬ姿をご満悦顔で監視した。力輝矢とルナは、朝までホテルで過ごし、ホテルで2人は別れ、別々の道を帰った。ルナはタクシーで15分かけて自宅に向かい、タクシーがアパート前に到着した。タクシーのドアが開くと凍てつく寒さが身に染みる。お金の持ち合わせのないルナは「お金貰ってくるんで、待ってて」とタクシーを待たせた。玄関を開けると、娘の結月が、待っていた。「ママ、どこ行ってたの?心配したわ。LINEしても既読にならないし」
「最高級ホテルで、セックスよ、セックス、セックス!セックスの快感知ってる?まさか知ってるわよね(笑)あのさ、タクシー待たせてあるのよ、早くお金ちょうだい、快気祝いだと思って出しなさいよ」結月は、近所の目もあり、自分の財布から1万を出し、タクシー運転手に手渡した。玄関を入ると、母親のルナは、ソファーに大の字になり寝ていた。部屋に充満する腐臭の香り、どこかで嗅いだ香りだった。母親のブレザーから漂い、ポケットを見ると黒百合の花が1輪入っていた。(黒百合の花だわ。力輝矢さんから貰った花よ。黒百合の花って流行ってるのかしら…。星緒フラワーに売ってるのかな)力輝矢との思い出の黒百合の花を花瓶に生けた。
黒百合の花言葉。((愛、復讐、呪い))災いをもたらしてきた黒百合の花。
母親のルナが寝た事を確認し、朝7時に家を出る結月。裕福ではない結月は、自転車で1時間かけ高校へ登校していた。清花高校の門に着き、2-2のクラスへ入ると電車通学の友達が机で話していた。
「おはよう。あれ摩耶子は?」
「結月、おはよ。摩耶子は休み。妊娠したかもしれないんだって。まだ調べてはいないらしいんだけどさ。摩耶子は、毎日セックスしてたし。彼氏の孝弘とつきあう前も。13人と付き合ったし。羨ましい…。私なんて8人だもん。慶子は何人?」
「私は6人かな。結月は、初彼できたんでしょ?初々しくていいなぁ。セックスもまだまだ恥じらいがあるじゃん?彼氏は同じ歳?」
「年上で頼れるし、優しいし、いろんなエッチもいっぱいしたわ」結月は、まだ純潔だったが友達の前で嘘をついた。
「結月、純潔卒業おめでとう!今度紹介してよ。年上かぁ。いいなあ。セックスも自己中じゃなさそうだし」
授業の始業ベルが鳴り、1限目の授業が始まった。2時限目、3時限目が終わり休み時間に友達と談笑していた。「4時限目は保健体育で、妊娠と出産だって。摩耶子も休まなければ勉強できたのにね。妊娠かぁ…。私は今の彼氏と結婚するのかなぁ。もっといろんな男と遊んで、セックスしたい。1人の男だけに人生捧げるなんて嫌よっ」慶子が身振り手振り話した。子宮内膜症を患っている結月は、保健体育の妊娠出産の授業を受けるのが苦痛だった。授業開始5分前に、めまいがすると嘘をつき保健室に行った。保健室のベッドで横になり、授業が終わるのを待った。(妊娠の勉強なんか私には耐えられない)
4時限目終了のベルが鳴り、結月は、教室に戻りランチを済ませ、午後からの授業に出席した。授業をすべて終えて帰宅したのは18時。シャワーを浴びベッドに横たわった。(1月13日は私の誕生日。力輝矢さんを呼んで、私の手作り料理をご馳走しようかしら。その後は私の部屋で初エッチしなきゃ。自分の部屋だし、心の準備もできるわ。力輝矢さんも私の事を愛してくれてるしね)ハンガーに掛けてある星と弓の刺繍が施されている輝七のコートが、ユラユラと揺れていた。(輝七くんのコートを早く返さないとね…)
母親のルナは、病院で知り合った力輝矢と連絡をとっていた。1月11日。力輝矢とルナは会う約束をし、家族には「通夜に参加する。今日は帰らない」のLINEメッセージが、結月と、内縁の夫、徹に一斉送信された。花瓶に挿していた黒百合の花が萎れ、廃棄しようとした瞬間…。黒百合の御神木の存在が気にかかり、ルナの寝室へ恐る恐る入った。奇怪なオブジェが散乱するベッドの床の隅に、女体の黒百合の御神木が無造作に置かれていた。(これだわ!黒百合の御神木…)御神木を握った瞬間、玄関の開く音がした。母親の内縁の夫、徹だった。徹がシャワーを浴びようと服を脱いだ瞬間。インターホンが鳴り響いた。ドアを開けると、セフレの薇愛だった。「何してんだよ!何でここが分かったんだよ?」
徹は頭が真っ白になった。




