男と女のスキンケア
新緑と鳥たちのさえずりを感じる5月。「カランカラン」御石神社の鈴が鳴り響く境内に1人の女性が顔を覆い女体のように掘られた御神木を撫で涙を流していた。体調が優れない日々が続き神社に参拝に来ていた美朱は女性に声をかけた。「大丈夫ですか?」
「何でもないの。今日は神社に伝えたい事があって来たのよ。彼がねぇ…なかなか籍を入れてくれないの。連絡しても音信不通で…愛してると言ってくれてるんだけどね」
「大丈夫ですよ…彼氏さんは忙しいのかもしれないし、御石神社で祈願したなら結婚や愛の結晶が宿るように叶えてくれますよ」
「私はね御石神社にお願いをしに来たんじゃないの。何一つ願いを叶えてくれないから文句を言いに来たの。私はね昔に恋人を亡くしてるの。ここに参拝にも来たし御祈禱もしたわ。だけど御祈祷した後に亡くなったの。その後は既婚者の男性と愛を育んで結婚の約束までしたのに叶わなかった。私が境内で泣いていたら初老の男性が私に御神木の御守りをくれた。男性からパーティーに参加しないかと言われ、そのパーティーで知り合ったのが今付き合ってる彼。実はね私…妊娠してるの。この女体の御神木を持つようになってから少し前向きになったんだけど…黒百合の御神木っていうのがあって最初は抵抗あったんだけど黒百合の御神木にあやかったら今の彼との子供を妊娠したの。あとは早く籍を入れて赤ちゃんを産みたい。黒百合の御神木に連絡がつかないのよね…あなたも黒百合の御神木にあやかってみたら?最初は抵抗あるけど段々気持ち良くなるの」女性は手に握っていた御神木の御守りを美朱に見せた。彫刻刀で生々しく掘られた女体のような御神木に触れ美朱は気持ち悪くなり境内の階段に落としてしまった。「きゃあああっ…」
「何してるのよ?この御神木は女体の女神様アルテミスよ」女は御神木の裏側を見せ裏にはアルテミスと刻印されていた。
(まさか…リオンサンの父親…。黒百合種夫が作成したの?まさか…アルテミスって…)美朱は呆然としていた。「落としてごめんなさい。お詫びに幸せの音色を奏でるSTARTONEあげます。産まれてくる子供に使って貰えたら…」
「何これ?」
「STARTONEといって星の音色を奏でる弓形の玩具です。白い弓が神秘的なんですよ」
「あなた子供いるの?」
「いないですけど…ふーん。こんなオモチャ持ってるからいるんだと思ってた。早くしないと男に逃げられるわよ。とりあえずこれ貰っとくわ」女はSTARTONEを持ち神社をあとにした。「赤ちゃん欲しくても純潔守らないといけないんだもん。STARTONEをこれからも御守りにしたかったけど私には瑠音さんがいるし、璃音さんの愛は星の音色みたいなものよ。私は結婚して名前が星緒美朱に変わったのよ」美朱は璃音と待ち合わせしているレストランに向かった。璃音と合流しホテルのレストランに向かおうとした瞬間…。「ヴッ…」美朱が両手で口を押さえた。「美朱大丈夫か!体調悪いの?ホテルのレストランはキャンセルしてホテルの部屋を取るから少し休もう」
璃音は美朱をベッドに寝かせた。「璃音さん…わたし…急に出来ないわよ…純潔だもん」
「えっ?ホテルに来たのはレストラン予約してたし、美朱が体調悪くなったから予約してたレストランの上のフロアの部屋を取っただけ。何もしないよ」美朱は結婚してもまだキスもしていなかった。美朱は目を閉じ夢の中にいた。夢の中で蘇ってきたのは以前働いていた仕事のクライアント吉田との悪夢の一夜だった。吉田から出るドロッとした粘液の質感と息づかいが蘇り…美朱を苦しめた。
「きゃあああっ…触らないでやめてぇ」美朱は汗だくになり飛び起きた。
「美朱大丈夫か?体調悪いのか?」
「璃音さん…実はわたし男の人と…」涙を流しながら話す美朱はその先は言葉に詰まり話せず、璃音に抱き寄せられ涙を溢れさせた。
「俺はずっと永遠に美朱を守ってるんだよ。前世も今世もそして来世も」
「璃音さん…わたし男の人に触れられるのが怖い。今まで何回も怖い思いしているの?だからその…もしかしたらセック」星と白い薔薇の花片と星のチャームが7個揺れたアンクレットを璃音が美朱の唇にあてた。「璃音さんこのアンクレットは…」
「俺の両親のせいで、あんな怖い思いをして美朱贈ったアンクレットは無残な姿になった。これはレストランでディナーした時に渡そうと思ってた。新しいアンクレットをオーダーメイドで作ったんだけど星と白い薔薇の花片とオリオン座の7個の星をイメージしたんだ。足を出してみて…」美朱の白い足がアンクレットの無数の星や月に包まれた。
「ありがとうね!7個の星のチャームが増えたのね」美朱は涙を拭い笑顔になった。
隣の部屋から男女の生々しい声が壁越しに伝わってきた。「ああーん…痒くなるのが快感。気持ち良すぎ…」
「この部屋は臭ぇ匂いがプンプンするぜっ。なあ?満子…いつもはメスしか相手にしねえからオスの脅威にビクついてんのか?恥じらってるけど何人子供つくってんだよ?」
「男の子と女の子供の双…あーっやっぱり男と交わるのが良いわ…女ばかりを相手にしてきたし、旦那と子供作る時だけのセックスだったから…」
隣の118号室から漏れてくる声に困惑する美朱。璃音がそっと両手で耳を塞いだ。「美朱大丈夫?さぁ俺達の家に帰ろう」璃音に手を引かれホテルの部屋117号室を出た時にベッドの片隅からヒカリの結晶が美朱を照らした。「アンクレット素敵だよ」微かに聞こえ瞬きをするとヒカリは消えていた。(さっきは体調悪くて気づかなかったけど…このホテルの部屋はクライアントの吉田さんと過ごした部屋だわ…)
「美朱どうしたの?」
「ううん…何でもないの。帰ろうね」
ホテルを出て大通りを歩いた。璃音は先ほどのfallenangelホテルの向かい側のRoyalホテルを見上げ、黒百合愛美朱との情事を思い出していた。(あの日の夜に見た青い月はなんだったんだ…まるで哀しみを訴えてるようだった。美朱と2度と会うことは無いと思っていたが月と星が導いてくれたのかもしれない」
自宅に戻り軽い食事を作った。
「璃音さんっ。満月オムライス作ったよ!」
「美朱すっごーく美味しいね」
「璃音さん明日仕事頑張ってね」
星緒造園は倒産したが新たに璃音は造園会社を起業した。会社名は「STARSEED」。スターシードとは地球以外の惑星から地球の次元上昇や愛の概念をサポートする使命を持ち転生してきた魂。
「会社の名前STARSEED素敵な名前ね。私さ地元の薬局屋さんで働こうと思うの」(よく考えたらSTARSEEDって訳すると星の種…やだっ…璃音さんの種って事なわけで。バカッ。すごくHな事を考えちゃった)
「そうなんだ!無理せず働いてみたら」
1週間後から美朱は働き始まった。リリードラッグ勤務の初日。「いらっしゃいませぇ」明るい声が店内に響く。医薬品やサプリメント、衛生用品がどんどん売れていきレジ打ちをする美朱。お客様からの評判は上々だった。1人の男性がスキンの箱を持ってきてレジに置いた。「このスキン凄く最高なんだよ!」
「そうなんですか。ありがとうございます。どんどん買ってくださいね」美朱はスキンが何だかよく分からなかった。男が不気味な笑いをしながら店を出て行った。夕方になると客足も増え男性客が続々と入店してきた。スキンやスッポンドリンク、マムシドリンクなどが次々に売れていった。(マムシドリンクってわざわざ蛇を飲むの?なんで?信じられない)美朱は疑問を抱きながらも大きな声と笑顔で「ありがとうございました」とお辞儀をした。「おっ…おぅ」男性客も困惑しながら店を出た。閉店間際狙って昼間に来た不気味な男性が再度来店した。「また来ちゃったよ。姉ちゃんって童顔で可愛くて胸もでかいけど、おとなしそうな顔して男とヤリまくってんだろ?家に帰ったら思い出しちゃてよぅ」男が美朱に手を出そうとした瞬間にわきから手を払われた。璃音が不気味な男の手を払い「お客さん悪いけどレジ待ってるんですけど」
「何だよクソッタレ」男の客はツバを吐き出て行った。「璃音さんありがとうね。また迷惑かけちゃったね。」美朱はうつむいた。
「仕事終わるまで駐車場で待ってるからね」仕事が終わり璃音の運転する車で自宅に帰った。風呂に入って湯上がりの璃音の肉体を見て目を背ける美朱。(やだ…直視できない。だけど薬局で売ってたスキンって何だろう?璃音さんも使った事あるのかな?後で聞いてみよう)




