第9話 2日目
「さぁ、今日もがんばろー!」
魔導図書館に昼夜はない。どこからどこまでが1日なのか分からない。でもそれだとここで1000年働くという契約がどれだけ進んでいるのかも把握できないので、リアにお願いして1日の区切りが分かるようにしてもらった。
てことで今は、2日目の朝。
朝のはずなんだけど……。
体感的に休息する前となにも変わってない。
まぁ、そのうち慣れるだろう。
〘今日も1日よろしくお願いします。ライアン様〙
リアの声は澄んでいて綺麗だ。
時間感覚がなくなるので、元の世界で言う早朝に該当する時間帯にリアに起こしてもらうことにした。
済んだ声で『おはようございます』と起こしてもらった時は、これまで経験したことないほどすっきり目覚めることができた。ちなみに睡眠は必要ないと言われていたが普通に眠ることもできた。
俺の精神状態を示す衣服もきれいな状態になっているので、完全に回復できたものとして良いだろう。やっぱり休息って大事だと改めて認識する。
休息室の外で軽く体を伸ばし遠くの目標地点へ視線を送る。
「さて、とりあえず魔導書のところへ戻ろう。【速度向上】!」
寝る前より司書スキルのコントロールが上手くなっている気がする。意識した方向、狙った距離で移動ができる。
そういえば生前も、スキルを使う練習をして一晩寝た後の方がよりスキルを上手く使えるようになっていた気がする。俺は寝る時、その日習得したことを忘れないよイメージトレーニングをすることが多い。その影響だろうか。
効果の真偽は不明だが、今後も就寝時のイメトレは続けよう。
「とーちゃーく!」
〘たった10回のアクセルで到着とは……。成長なされましたね。おそらくこの回数が、レベル1の状態では最小回数での移動だと思われます〙
いいねぇ。ってことはレベル1の【速度向上】はだいぶ使いこなせるようになってきてるってことだ。このスキルは今後の仕事を進めておく上での必須スキルだと思われるので、早めにレベルを上げていきたい。
そういえばスキルの獲得条件は分かっていない。だから任意の司書スキルを獲得するというのは不可能なのかもしれない。もともと【速度向上】は連続で3つのスキルを獲得したことによる報酬で選択したものだった。
また報酬を選択できるような難易度の高いミッションをクリアしていく必要があるのかもしれない。このスキルの有用性は十分理解できたので、そういうチャンスが来れば間違いなくアクセルを強化していこう。
「今日最初に戻すのは……。これにしよう」
機能と同じように特に意識することなく、なんとなくで床に散らばった魔導書の中から一冊をを手に取る。
その瞬間自動で発動するパッシブスキルの数々。
【棚番把握】の結果はPC1569。
大広間からは返す棚が離れている魔導書だった。
〘おや? 今日の1冊目は少し遠い棚でしたね。【幸運】が発動しなかったのでしょうか〙
「そんなことないと思うよ。ほら、周りを見てよ」
〘あっ! これは──〙
俺の周囲にはぼんやりと淡い光で輝く魔導書が何冊か確認できた。その冊数は 10冊を超えている。
「【類似把握レベル1】で類似と判断された本がこんなにもあるってことなんだよ。この1冊は当たりの魔導書なの」
〘そうですね。しかもライアン様は昨日、【無重書架】を獲得されていますのでこの光っている本たちは一度に持って行くことができますね〙
「うん」
これはまだ検証が必要なんだけど、新しい司書スキルを獲得するための条件としてこの広間から一度に本を持っていくというのがポイントなのだと思う。
持って行く際の本の種類や、返すべき棚の距離などによってもスキルを獲得できるかどうかが変わってくる。それらの組み合わせは俺が考えつくだけでも無数にある。
創造神様が用意されたというそれらのミッションをこなし、司書スキルを獲得して効率よく魔導書を本棚へ返していく。これが結構楽しい。楽しく仕事をして、魔導書への恩返しにもなる。まさに俺にとっての天職だった。
そんなことを考えながら、俺は周囲の光っている本全てを回収し終えた。
全部で18冊。
サクッと返しに行こう。
──***──
今日は、なんかダメだな。
もう8冊も魔導書を返却したのに、何のスキルも得られていない。ちょっと雲行きが怪しくなってきた。
そろそろ何かのスキルをください。
そう願いながら 9冊目の本を返してみるが──
「今回もダメか」
〘そ、そう、みたいですね〙
リアの声からも元気がなくなって来ている。
一応、次ので同じジャンルの魔導書を10冊同時に返却することになる。【無重書架】は同じジャンルの魔導書を5冊返却した時にレベル1をもらえたので、あと1冊返せばレベルが上がるかもしれない。
そう予測はしているのだけど、もしだめだった時にリアをより落ち込ませないかが心配で俺はその予測を彼女に打ち明けられずにいた。
ふたりして暗い雰囲気のまま、次の本棚へ向かう。
「これで、同じジャンルの魔導書10冊目」
少しドキドキしながら魔導書の光が指し示す棚へ差し込む。
〘あっ! や、やりましたね! 司書スキル獲得です!!〙
俺の身体がぼんやり輝いた瞬間、リアが嬉しそうな声を上げた。
何か俺よりスキルの獲得を喜んでない?
そういうところも可愛くていい。
「獲得できたのはどんなスキル?」
〘同じジャンルの魔導書を10冊返却するというミッションを達成されたので、【無重書架】がレベル2に上昇しました! レベル1では10冊でしたが、レベル2では20冊の魔導書を運べるようになります〙
「おぉ。予想通り」
〘予想通りって。ライアン様、こうなるって思っていたんですか? どうして私に教えてくださらなかったのですか?〙
リアがちょっと怒ってる。
感情豊かだな。
「ごめんごめん。もし予想が外れたら、リアが落ち込むかなって」
〘私のことを思って……。そ、それは嬉しいのですが、何か予想があるのでしたら私にも共有していただきたいです。それで何か私も開示できる情報が増える可能性もありますので〙
この魔導図書館の疑似人格であるというリアも、ミッションをクリアできたら司書スキルがもらえるというルールも創造神様が造ったらしい。彼女との会話で新たな情報が開示されるという可能性も確かに考えられる。
「分かった。これからは予想とかもリアに共有するようにするね」
〘はい。よろしくお願いします〙




