第10話 魔導栞《ブックマーク》
2日目はその後、ひとつしか司書スキルを得られなかった。
色々と条件を考えながらの作業だったので効率が悪かったことと、考えて行動してしまったせいで【幸運】が発動する余地を潰してしまったせいだ。
ちなみに獲得できたのは【投擲収納レベル1】というスキル。少し離れた場所から魔導書を投げると、本棚に綺麗に収まるスキル。これ獲得条件は、移動スキル発動中の魔導書の返却だった。
【速度向上】を発動させて移動している際、目的の棚を通り過ぎそうになってしまったので、まだわずかに加速していたが手を伸ばして棚に魔導書を返却した。その際にスキルを獲得できたんだ。
しかしこのスローインという司書スキル、発動させるには魔導書を投げなければならない。発声が必要ないアクティブスキルなんだけど、魔導書を投げるというのが発動のトリガーになっている。
魔導書を雑に扱うのがタブーな俺にとって、お蔵入り決定のスキルであった。
そもそも【速度向上】を発動中に魔導書を棚に差し込むって行為自体が、本を傷つけかねない。今回はついやってしまったが、アクセルをもっとうまく使いこなせるようになるまではやらないでおこう。
──***──
魔導図書館に来て3日目。
この日俺は、500冊を超える魔導書を本棚に返却した。
そして得られたスキルは4つ。
【踏台不要】
等級:レベル1
種別:アクティブ
効果:足元に不可視の足場が生成される
条件:最上段の棚に連続で5冊の魔導書を返却
【種別検索】
等級:レベル1
種別:アクティブ
効果:任意のジャンルの魔導書を光らせる
条件:異なるジャンルの魔導書を10冊連続で返却
【静寂領域】
等級:レベル1
種別:パッシブ
効果:足音や本の擦れる音が軽減される
条件:物音を立てずに魔導書を10冊連続で返却
【魔導栞】
等級:レベル2
種別:パッシブ
効果:魔導書10冊の任意の頁に栞を挟める
条件:魔導書を500冊返却する
この魔導図書館では本棚の最上段に本を返却する際、どこからともなく移動式はしごが出現する。それを利用して最上段に本を返すのだが、移動式はしごがやってくるまでに時間がかかるんだ。その時間は大広間から遠くなればなるほど長くなる。
【踏台不要】を獲得できたので、移動式はしごが来てくれるのを待つ時間は今後不要になる。何も知らない人が見たら空を歩いていると思うだろう。
【識別検索】は【類似把握】の下位互換スキル。わざと魔導書のジャンルをバラバラにして連続で返却してみて獲得した。よりレアなアナロジーという司書スキルがあるので、ジャンルサーチのレベルを上げる必要はないかな。
というよりこれだけ大量の本がある中で、【類似把握】の獲得条件である『2冊連続で同じ棚に魔導書を返却』というミッションを達成できたのは本当に奇跡と言っていいだろう。
【静寂領域】は、大広間から近い本棚に魔導書をまとめて返却していた時に偶然獲得できたスキル。特に意識していたわけではないけど、集中して無言で作業していたらミッションを達成していた。
魔導図書館内にいる人間は俺だけなので、音に気を使う必要もない。このスキルをわざわざ発動させる意味はない。スキルレベルは上げようとしなくていいかな。
【魔導栞】は何ができるのかよくわからない。3日目の作業を開始してすぐ、返却した魔導書が累計100冊目に到達したらしくレベル1を獲得した。そしてその日400冊目、つまり累計500冊を返したタイミングでレベル2を獲得。
「このブックマークって、どんな効果なのかな? とりあえずいつでも外せるように、大広間から近い棚の魔導書にいくつか差し込んでみたけど」
〘まだ私にも情報が開示されていません。魔導書を返却していくと自動的にレベルが上がっていくようですが……。今はまだ何とも〙
100冊、500冊ときたら次は多分1000冊目でレベル3を獲得かな。その先は1000冊ごとになるか、1万冊になるか。何ができるようになるかわからないスキルなので、特に意識する必要もないだろう。
──***──
4日目。
この日に得られたスキルはたったひとつ。というかすでに獲得しているスキルのレベルを上げることしかできなかった。
条件を変えて300冊ほどの魔導書を返却したけど、【識別検索】のレベルが2になっただけで終わった。これも1日の作業でスキルをひとつも獲得できないと悲しいので、無理やり取りに行ったスキルだ。
〘あ、明日こそは複数のスキルを獲得しましょうね〙
「もちろん!」
そう意気込んで、休息室へと向かった。
──***──
5日目。
この日は累計1000冊の魔導書を返却するというミッションを達成し、【魔導栞】のレベルが3に上がった。
でもそれだけ。
3日目までが嘘のように、司書スキルを獲得できなくなってきていた。
「……難しいなぁ。どうすりゃいいんだよ」
〘ライアン様。あまり気を落とさないでください。魔導書を返却するペースとしては、非常に順調です〙
「ありがとう、リア」
彼女はそう言ってくれるが、大広間の床に散らばる魔導書の数は全く減ってるように見えない。作業として進んでいるのだろうか? 自信がなくなる。
やはり鍵は司書スキルだと思う。
スキルを使ってさらに効率を上げる必要がある。
まだやれることはあるはずだ。
1000年働くうちの、まだ5日目。
絶望するには早すぎる。
明日からは今所持しているスキルを活用し、新たなスキルを得られるよう試行錯誤を進めよう。




