第11話 整理作業
魔導図書館に来て6日目。
「今後新たなスキルを得るための鍵は【類似把握】だと思う」
〘類似の魔導書が見えるスキルですね〙
「そう」
類似とは『種別』と『著者』が同じものを指す。著者が分かるスキルはまだ、その片鱗すらつかめていない。
「【種別検索】の上位スキルのような形で使えるアナロジーのレベルを上げることで、より困難なミッションを達成できるようになる。そうすれば報酬として司書スキルを選択できるかもしれない」
〘その方向性に対して、異論はありません〙
「ありがとう。それじゃあその行動方針で行こう。まずは──」
床に散らばる膨大な魔導書に目を向ける。
「何日かかけて、この魔導書たちを整理しよう!」
そこから俺の地獄は始まった。
【類似把握レベル1】の獲得条件は2冊連続で同じ棚に魔導書を返却すること。このスキルのレベルを上げるには、少なくとも2冊以上連続で同じ棚に魔導書を返却する必要があると予測された。
つまりこの大量の魔導書たちの中から、同じ棚番のものを探さなくてはならないということ。
床に落ちている魔導書を拾い上げ、【棚番把握】で棚番を確認。そして床の開いたスペースまで運んで並べていく。
拾い上げ、棚番を確認し、並べる。
拾い上げ、棚番を確認し、並べる。
拾い上げ、棚番を確認し、並べる。
拾い上げ、棚番を確認し、並べる。
拾い上げ、棚番を確認し、並べる。
永遠とこの作業の繰り返し。
たまにスペースが狭くなり、列ごとにまとめていた本たちを移動させる作業をする必要があったりする。しかし基本的にやることは変わらない。
作業中に同じ棚番の魔導書が3冊以上見つかれば、その時点で作業を止めて検証に行こうとも考えた。ところが全然見つからないんだ。
本当に最初の2冊が奇跡だったと思わざるを得ないほど、同じ棚の魔導書が見つからない。
俺はリアと会話をしながらも、ただ身体を動かし続けた。
拾い上げ、棚番を確認し、並べる。
拾い上げ、棚番を確認し、並べる。
拾い上げ、棚番を確認し、並べる。
拾い上げ、棚番を確認し、並べる。
結局その日、同じ棚番の魔導書は出てこなかった。
3冊見つけるのは流石に数日かかると覚悟していたが、まさか丸1日かけて2冊見つけることも叶わないとは……。
同じ棚番の魔導書どころか、隣り合う棚番の魔導書も見つかっていない。せめてこれが見つかれば、『隣り合う棚に連続して魔導書を返却』というミッションを達成して【棚位置把握】のレベルを上げることが出来たのに。
だいぶ精神が消耗していると思う。
衣服の汚れがかなり目立つ。
休息室に入った俺は、すぐベッドに倒れ込んだ。
〘お疲れ様でした。結局、類似の魔導書は見つかりませんでしたね〙
「うん」
〘明日は行動方針を変えますか?〙
「いや、しばらく作業を続けたい。魔導書を整理して並べるって作業は、今後絶対に役に立つはずなんだ。また朝から作業を再開するよ。目覚ましよろしく」
〘今日と同じ時間にお声をかければよろしいでしょうか?〙
「うん」
〘承知いたしました。おやすみなさい、ライアン様〙
「おやすみ、リア」
──***──
翌日も俺は宣言通り朝から魔導書の整理を続ける。
拾い上げ、棚番を確認し、並べる。
拾い上げ、棚番を確認し、並べる。
拾い上げ、棚番を確認し、並べる。
拾い上げ、棚番を確認し、並べる。
拾い上げ、棚番を確認し、並べる。
ダメだ、見つからない。
でもまだ諦めない。
気分転換に本棚へ魔導書を返却しに行こうとも考えるが、その返却した魔導書と同じ棚番の魔導書が見つかってしまった時のことを思うと整理作業を続ける選択肢しかなくなるのだ。
同じ作業をひたすら繰り返す。
拾い上げ、棚番を確認し、並べる。
拾い上げ、棚番を確認し、並べる。
拾い上げ、棚番を確認し、並べる。
拾い上げ、棚番を確認し、並べる。
拾い上げ、棚番を確認し、並べる。
俺は魔導書の整理をし続けた。
そして──
魔導書の整理を始めて35日目。
「あっ! ここ、これって!?」
〘そうです、ライアン様。間違いありません!〙
俺はついにやり遂げた。
同じ棚番の魔導書を見つけたんだ。




