第8話 無重書架《ホールド》
持ってきた5冊の本を全て返却完了した。
〘同じジャンルの魔導書を5冊返却するというミッションを達成されましたので【無重書架レベル1】を獲得しました〙
よしよし。
やっぱり司書スキルがもらえると嬉しい。
【棚位置把握】がレベル2になって以降の3冊目と4冊目ではスキルがもらえなかったから、ちょっと安心した。
さて、もらえたスキルはどんなものかな。
「ホールドって名前だから、本をたくさん所持できるようになるの?」
魔導書はかなり分厚いが、頑張れば10冊ぐらいは持てる。それが増えるということにあまり恩恵は感じない。あ、でも運んでる最中に崩れたりしないスキルなら便利かも。
またレベルがあるスキルなので、レベルが上がれば運べる冊数が増えるとか。
〘ふふふ。これはかなり良いスキルですよ。ここでは使いにくいので、大広間へ戻りましょう〙
なぜかリアが答えを教えてくれなかった。
でも彼女が良いスキルだと言うのであれば期待しよう。
──***──
大広間まで戻ってきた。
〘早速【無重書架】を使いましょう。これはアクティブ型の司書スキルです。まず1冊、魔導書を手に取っていただけますか?〙
「はい」
特に気にせず拾い上げた魔導書は、風の攻撃魔法に関するもの。そして棚番はLA0009という、これまでで最も番号が小さいものだった。
ここでも【幸運】が仕事をしてくれる。
「これをどうすればいいの?」
〘【無重書架】と口にするか、頭の中で強く意識してください。その後、魔導書を放り投げてください〙
「嫌なんだけど」
〘えっ〙
「魔導書を投げるのは嫌だなって」
命を預けて戦ってきた相棒なんだ。手に持ってわかるが、これは俺が使ってた魔導書じゃない。でも他の誰かの命を助けてきた魔導書に違いないんだ。
そんな大切な本を投げるなんてできない。
生前は魔導書を雑に扱う魔導師を見て、強くイラつき覚えたこともある。魔物の攻撃で死ぬ最期の瞬間、俺は相棒である魔導書が燃えたりしないように身体で守った。
できればあいつらにもまた会いたい。
無事でいてくれればいいけど。
本当なら地面に乱雑に散らばっている魔導書たちも全て丁寧に並べてあげたい。ただあまりにも数が多すぎてそんなことができないので、スキルを獲得して効率よく本棚へ返していくことを優先している。
「この図書館に帰ってきた魔導書がここに散らばるのは、仕方ないことだって納得してる。でも俺が魔導書を乱雑に扱うことは、あんまりしたくない」
〘し、失礼しました。それでは空中に置くイメージで、ゆっくり手を離してみてください。スキルの発動をお忘れなく〙
わかってくれたみたい。
彼女を信じよう。
リアに言われた通りにしてみる。
「【無重書架】!」
魔導書が青く光り始めた。
少しドキドキしながら俺は魔導書から手を離す。
「……う、浮いてる」
手を離したその場に魔導書は浮遊していた。
〘【無重書架】はライアン様が手で持たなくても魔導書を保持できるスキルです。少し移動してみてください〙
「おぉー! 凄い、ついてくる!!」
俺の移動に合わせて魔導書がふわふわと俺の後ろをついてくる。
なんだこれ。
すっごく楽しい。
〘このスキルの真価はこんなものではありませんよ。あと9冊、同じように浮遊させてライアン様に追従させることができるのです〙
「ってことは 10冊も!? 手で持つのは別カウントだよね。手で 10冊持って、【無重書架】で10冊持てば、合計で 20冊一気に運べるって事だよね?」
〘その通りです。ちなみにホールドしている魔導書は書棚や障害物を自動で避けますので、移動中に傷つくことなどはありません〙
素晴らしいスキルだ。
効率がめちゃくちゃ上がりそう。
レベル1で10冊ってことは、レベルが上がれば冊数が増えるんだろうな。このスキルもレベルを上げていきたい。
ちょっとこの辺りで今まで獲得したスキルをまとめておこう。
【棚位置把握】
等級:レベル2
種別:パッシブ
効果:魔導書が光って帰る棚の位置を示す
条件:隣り合う棚に連続して魔導書を返却
【棚番把握】
等級:なし
種別:パッシブ
効果:魔導書が帰る棚の番号が表示される
条件:1冊の魔導書を返却
【類似把握】
等級:レベル1
種別:パッシブ
効果:類似の魔導書が光って見える
条件:2冊連続で同じ棚に魔導書を返却
※類似とは『種別』と『著者』が同じもの
【識別】
等級:なし
種別:パッシブ
効果:魔導書の種別が表示される
条件:2000番台の棚に連続で魔導書を返却する
【幸運】
等級:なし
種別:パッシブ
効果:運が良くなる(?)
条件:同じ棚の魔導書を連続で手にする
【速度向上】
等級:レベル1
種別:アクティブ
効果:移動速度が上がる
条件:連続で3つのスキルを獲得
【無重書架】
等級:レベル1
種別:アクティブ
効果:魔導書の所持可能数が増える
条件:同じジャンルの魔導書を5冊返却
──とまぁ、こんな感じかな。
ここに来て体感時間でおよそ1日が経過している。初日でこれだけの司書スキルを手に入れられたのは、かなり順調じゃないだろうか。
スキル獲得は順調なんだけど、少し問題もある。
「リア。今の俺は英霊だから休息はいらないって言ったけど、これって」
俺が着ている服が少し汚れ始めていた。
〘はい。初日からたくさん移動されましたし、いろんなことを頭に入れられましたので精神的な疲労が大きくてもおかしくはないでしょう〙
この服は俺の精神状態に影響を受ける。自分としては疲労を感じていないが、俺の精神が消耗しているということがこの衣服に現れている。
「だよね。できるだけ早く片付けてあげたいけど、それより俺がちゃんと任期の1000年間ここで働き続けられる方がいいよね」
〘その通りです〙
初めから無理をして、10年ぐらいで精神崩壊したら元も子もない。俺はできるだけ長い期間、でできるだけ効率よくここで働いていく。そのためにも休息は必要。
「それじゃ、1日目の仕事はこれにて終了!」
〘お疲れ様でした。ライアン様〙




