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魔導図書館の最強司書 〜魔導書を1000年管理したら、【司書スキル】で最強に〜  作者: 木塚 麻弥


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第6話 休息室

 

「あははっ。なにこれ、めっちゃ楽しい!」


 休息室まで、かなりの距離があったこと。そして数回の練習によって【速度向上アクセル】の連続使用が安定してできるようになったことで、俺は超高速移動を修得していた。今も絶賛移動中だ。


「リア! 1回でこのくらい移動するなら、休息室には後何回で到着しそう?」


〘およそ17回です。ライアン様〙


 17回もやんなきゃ辿り着かないんだ。

 マジでここ、広すぎだろ。


 でもこの感じなら、時間的にはそんなにかからず目的地へ到達できそう。報酬として【速度向上アクセル】を選んで正解だった。


 生前は感じることのなかった強い加速。

 景色が一瞬で後ろへ流れていく。


 魔王軍と戦った勇者様って、きっとこんな速度感の中で動き回ってたんだろうな。もし《《あの時》》の俺にこのスキルがあれば、もう少し力になれたかもしれない。


 過去のことを振り返っていたら、遠くに白い壁が見えてきた。つまりそれは、この巨大な魔導図書館の端まで移動してきたということ。


 十数回の連続使用により、俺は【速度向上アクセル】の微調整もできるようになっていた。目算で距離を定め、目的地である壁のギリギリを狙って最後の加速を行う。


「とーちゃーく!」


 俺は真っ白で平坦な壁に唯一見えた異物──大きな扉の前まで来ていた。多分ここがリアの言う休息室なんだろう。


〘お疲れ様です。特に最後の1回は、完璧な距離調整でしたね〙


「目視できる場所への直線移動ならだいぶ慣れた」


 俺の勘だけど、この司書スキルのレベルが上がれば移動速度が上がったり、1回の移動距離が伸びたり、途中で進路を変えるなんてこともできるようになるかもしれない。このスキルは是非とも伸ばしていきたい。


 残念なのは、スキルを何度か使えばそのレベルが上がるという仕様ではなさそうなこと。やっぱりレベルを上げるには魔導書を本棚へ返却するしかないようだ。


 休憩するためにここまでリアに案内してもらったんだけど、俺は魔導書の返却作業を続けようとも思い始めていた。


〘ライアン様、作業を続けようとしていますか?〙


「良く分かったね」


〘移動してきた距離を見ている感じではありませんでしたので〙


「リアなら知ってると思うけど、俺が生きていた頃はスキルを獲得するってそれなりに珍しいことだった。死ぬまでに俺は4個しか獲得できなかったし」


 ちなみに俺が生前獲得したスキルは現在、全て使えなくなっている。それは既に確認済みだった。


「こんな短時間でスキルを4つも獲得できるなんて……。しかも【速度向上アクセル】に至っては、かつて共に戦った勇者の速度に並ぶことが出来そうなスキル」


〘それだけ特殊な能力がなければ、ここでの仕事を進められないという創造神のお考えなのです〙


 なるほど。だとするとここで得られたスキルは現実世界には持って帰れないということなんだろうな。実際に俺が生前持っていたスキルは、ここではなくなっているのだから。


 待てよ。てことは俺が生き返ったとしても、苦労して手に入れた4つのスキルはなくなっているっていう可能性もあるのか。それはちょっと悲しい。


 ……まぁでも、一度失った命を蘇らせてくれるということだけでも感謝すべきだろう。創作物の中では蘇生魔法というものが登場することがあったが、それらは人々の欲望が生み出した幻想。俺たちが住んでいた世界にそんな魔法は実在しなかった。


 そんな空想上の存在でしかないはずの能力を俺に行使してくれるというのだから、俺に課せられた仕事はこなさなくてはならない。


〘本当に休まれないのですか?〙


 本が山積みにされている場所へ戻ろうとしていると、リアが声をかけてきた。


「俺は休憩しなくても疲れないんでしょ? だったら仕事を続けるよ」


 早く新しいスキルが欲しい。

 色々検証したいことがあるんだ。


〘せっかくここまで来たのですし、休息室の案内だけでもさせていただければと〙


「あー。それもそうか」


 リアとしても説明できることは早いうちに全てしておきたいだろう。俺に必要事項を全て話しておけば、彼女も休息が取れるのかもしれない。俺としては彼女にいなくなってほしくはないけど。


「休息室の案内をお願い」


〘承知いたしました。それでは扉の右側にある壁を手で触れてください〙


「えっ。この扉は?」


〘そちらはこの魔導図書館の出入り口となっております。現在は出入りできませんので開くことはありません〙


 で、出入り口だったか。


 リアに言われた通り、大きな扉の右側の壁を手で触れてみる。


 すると人間サイズの扉が現れた。


「なんで休息室は隠されてんの?」


〘もともとこの図書館に休息室は存在しませんでした。働く人間がいないので当然なのですが。こちらはライアン様のために作られた部屋。隠されているのではなく、必要な時だけ現れる仕様なのです〙


 俺のための部屋なんだ。


〘扉に近づけば自動で開きます。さぁ、中へ入ってみてください〙


「はーい」


 自動で開く扉。これだけでも元の世界で実現しようとするとかなりの魔道具を組み合わせる必要があるだろう。入り口でこれなのだから、中の装備はどのようなものなのか少しわくわくしていた。



「んー。とってもシンプル!」


 休息室の内部は1セットの机と椅子、後はベッドという非常に簡素な作りだった。椅子も机もそれなりに良いものだと思う。ベッドを手で押してみる。良い硬さで、よく眠れそうだ。ただ今の身体になって、眠気はまだ感じていない。


〘何か必要か分かりませんでしたので、とりあえず椅子と机、ベッドをご用意しました。他に必要なものがあれば遠慮なくおっしゃってください〙


 言えば準備してくれるのかな?


 今は特に必要ないからいいか。

 それより早く作業に戻ろう。


 これでリアも最低限の使命を果たせたはずだし。


「案内ありがとね、リア。とりあえず今は疲れてないから仕事に戻るよ」


〘承知しました〙


 俺は休息室から出ると、【速度向上アクセルレベル1】を使って大量の魔導書が散らばっている場所へと向かった。

 

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