第18話 探しモノ
10冊だけ魔導書の復元をして、その後は1日だいたい数千冊を本棚に返却するという作業を繰り返す日々。
そんなある日──
「あ。あった」
思いがけず、俺はそれと再会した。
俺が使っていた37冊の魔導書のうちの一冊。
大広間の中で、それをついに見つけたんだ。
「リア、見て。これ、俺が契約してた魔導書」
〘ライアン様が使用されていた魔導書ですか? これだけ大量に似た魔導書がある中で、そんなの良く分かりましたね〙
「そりゃわかるよ。魔導書って同じジャンルなら書かれていることは似ている。でも似ているだけで、全く同じってわけじゃないんだから」
この魔導図書館にある魔導書は、どこかの誰かが手書きしたもの。【検索】で同じジャンル、同じ著者の魔導書を探した時に類似の魔導書であっても細かい部分で違いがあったからそれに気付くことができた。
〘ですが、違いなどはほんの僅かです。それにライアン様は生前、魔導書の解放率もそれほど高くありませんでした。であれば書かれていた内容もほとんど理解できませんでしたよね?〙
なぜかリアが珍しく厳しいことを言ってくる。
ちょっと心に突き刺さるからやめてほしい。そんなんで強い方の魔導士だと自負していたのが恥ずかしくなじゃないか。
〘書かれている内容が理解できなければ、文字は記号にしか見えません。そんなものを、判別できるわけがありません〙
「でも俺は出来るよ」
確かに使える魔法以外は呪文が読めないし、描かれている魔法陣なども頭が理解しようとしなくて見るのも辛かった。
「魔法が大好きだったからね。それを使わせてくれる魔導書も俺は大好き」
文字が図形にしか見えなくても。頭が理解しようとしなくても。何度も何度も魔導書を召喚して、俺はその全ての文字と記号と魔法陣を覚えた。
契約した37冊全て。
〘……そんな感じで魔導書に執着しているから、異性とお付き合いができなかったのではないですか?〙
「べ、別にそれはどうでも良いでしょ!」
というか、あれ?
俺って、リアにそんな話したかな?
〘ところで疑問なのですが、記号まで全て記憶されているなら、どうして使われていた魔導書を探そうと思わなかったのでしょうか。きっとルシアン様の魔導書たちは悲しんでいますよ〙
「それはたぶん大丈夫だよ。あれだけ一緒にいたんだから、きっと俺の性格も分かってくれるさ。誰が使っていた魔導書であっても、俺は優劣は付けないって」
本当なら自分の魔導書を最優先にしたい。でも床に散らばってる魔導書や、あの部屋で復元を待っている魔導書たちにも、相棒と言うべき契約者がいる。俺みたいに魔導書のことを気に入って大切にしている魔導士だって少なくなかった。
俺がここに来れたのは偶然なんだ。
であれば俺だけが優遇されるべきじゃない。
俺が魔導書を返却する順番は運に委ねられるべきだと思う。ということで、俺はスキルを得る目的以外で魔導書を返却する順番を選ばない。
「今回は運よく見つけられたな。待たせてゴメン。これから棚に帰してあげる」
俺は【神速】を発動させた。
次の瞬間にはもう、目的の棚が目の前にある。
レベルが上限に達した【棚位置把握】により、魔導書から伸びた光が返るべき場所をはっきり指し示してくれる。
その光の先に魔導書を返却した。
返却後、一歩離れて周囲の本棚を見渡す。
以前リアに聞いた話では、連続で召喚される魔導書は近い棚に並ぶことがあると。今回返しに来たのは、水系戦闘魔法の魔導書。俺が良く戦闘で使っていた相棒の一冊だ。であれば同じように召喚していたアイツも、ここにいるんじゃないかって。
「…………ない、か」
お目当ての魔導書はなかった。
でも棚に複数の空きがあることは確認できた。
それらのうちの一か所が俺の、俺が勝手に親友だと思っている魔導書の返るべき場所なのかもしれない。少なくとも今はその情報だけで十分だった。
棚番も分かった。
魔導書を返す順番に優劣は付けないとリアに宣言したけど、どうしても我慢できなくなったら、【検索】で探そう。
さぁ。アイツを早く棚に帰してやるために、今日も頑張りますか!!




