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魔導図書館の最強司書 〜魔導書を1000年管理したら、【司書スキル】で最強に〜  作者: 木塚 麻弥


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第16話 神速《アクセル》

 

〘【検索サーチ】を使いますよね? 検索する項目はどうなさいますか?〙


 実は考えていたことがある。


 俺はサーチを使って同じ本棚に3冊の魔導書を連続返却し、【速度向上アクセル】を手に入れた。以前の俺なら、せっかく上がった速度で返却効率が高まったのを楽しんだと思う。


 でも今は3年以上も我慢してきたレアスキルの獲得を進めたい。


「検索項目だけど、この魔導書と()()()()()()()を探す」


 宣言した瞬間、視界が薄暗くなり何箇所かで魔導書が光りだした。


 こんなにたくさん見つかるなんて……。


 どうやら【幸運ラッキー】が仕事をしてくれたらしい。そして【検索サーチ】が良いのは、他の魔導書の下敷きになった魔導書でも見つけることが出来るところ。



 回収できた魔導書は5冊。

 大漁大漁~。


 この結果だけを見ると、たった3冊の魔導書を探し出すのに3年近くかけたのが嘘のように思える。


「いい感じ。この魔導書たちを返せば、たぶんまた司書スキルを選択出来る」


〘私も、その可能性が高いと思います〙


 同じ本棚に連続で魔導書を返却すれば、本来なら【類似把握アナロジー】のレベルが上がる。でもそれはもう上限レベルに達して、下位スキルと統合されて【検索サーチ】になった。


 このサーチはレベルが上がらないらしい。

 

 じゃあそんな状態で、同じ著者の魔導書を連続で返却することに次いで難易度が高いであろうミッションをクリアすればどうなるか──



〘おめでとうございます。5冊連続で同じ棚に魔導書を返却するというミッションを達成しましたので、受け取る司書スキルを()()指定できます〙


 ほら、こうなる。


「よしっ!! ──って。み、3つも?」


〘はい。どうやら4冊連続で1つの権利を獲得。5冊連続でもう2つ、ということのようです〙


 お、おぉぉ……。

 想定以上にすごい結果だ。


〘さて、どうしましょうか?〙


「3つとも【速度向上アクセル】の強化に使う」


〘ですよねぇ。ライアン様ならそう言うだろうなって、思ってましたよ〙


 リアが俺のことを理解し始めている。

 そりゃ、これだけ一緒にいればそうなるか。


「さっそくお願い」


〘承知しました。どこまで上げられるか、現時点では私も分からないのでレベルをひとつずつ上げていきますね〙


「はーい」


〘……まず、ひとつレベルが上がりました。このまま続けてもよろしいでしょうか?〙


 どうしよっかなぁ。


「今回のレベルでも、コントロールがよりしやすくなる強化はある?」


〘あります〙


「じゃあこのまま、続きもやっちゃって」


〘承知しました。……現在、レベル4。まだ上があるようなので、さらにレベルを上昇させます〙


 すごいな、【速度向上アクセル】。

 

 司書スキルの中に移動系はあんまり無いらしいってリアに聞いていた。だからこれを集中的に強化することにしたんだけど。上限はいくつなんだ? そしてこれだけレベルが上って、何が出来るようになるんだ?


 そもそもレベル1の時点で、元いた世界の勇者様と同じような速度で動けるようになっていた。彼女が本気じゃなかった可能性もあるけど。


 でも俺はそんな強スキルをレベル4まで上げた。

 もうスピードなら誰にも負けないはず。


 ……ちょっと、やりすぎたかもしれない。

 

「あっ、リア! やっぱり──」


〘おまたせしました。【速度向上アクセル】のレベルが5に上がりました〙


 おっふ。

 間に合わなかったか。


〘【速度向上アクセル】のレベルが上限に上がりましたので、下位互換のスキルを統合して進化します。ただしライアン様は現在、下位互換スキルを獲得していませんのでそのまま進化します。アクセルは消滅しますが、よろしいでしょうか?〙


「オッケー。やっちゃって」


〘承知しました。【速度向上アクセル】を進化させます。⋯⋯完了です。ライアン様は新たに、【神速アクセル】を獲得しました〙


「ん?? アクセルがなくなって、またアクセルを獲得したの?」


〘そのようです。しかし新たに手に入れた【神速アクセル】にはレベルがありません。【検索サーチ】と同じ、完全体のスキルになったのだと思われます〙


 あの超絶有能スキルの【検索サーチ】と同じなんだ。そりゃ期待しちゃうね。

 

「さっそく使ってみよう。【神速アクセル】」


 何となくだけど、慎重に使うべきだとは思わなかった。なぜか完璧に使いこなせる気がしていたんだ。


「おっ。一瞬で移動できた」


 目的地としたのは大広間。

 スキルを発動した瞬間、俺はそこにいた。


「じゃあ次はこれを返しに行こうかな」


 なんとなく手に取った魔導書。


 棚番を確認し、足を踏み出す。

 目の前に目的の本棚があった。


 加速感とか一切感じない。

 最早、速いとかの次元じゃない。


 目的を意識して、スキルを使う。

 それだけで結果に至る。


「すごいな、このスキル」


〘解説をしてもよろしいでしょうか?〙


「うん。お願い」


 リアは最初から全てのスキルの情報を持ってはいない。俺が新たなスキルを入手することで、それに関する情報が把握できるようになる。


〘レベル1の【速度向上アクセル】は、出発地と目的地の移動を直線で行っていました。レベル2で移動距離などが向上し、レベル3でカーブを描いた軌道でも移動が可能に。レベル4では超高速移動中でも直角に曲がれるようになりました。そして進化した【神速アクセル】では、出発地と目的地の定義が崩壊しました〙


「定義が崩壊?」


〘出発地と目的地を紙の上に書かれた点だと想像してみて下さい。その最短距離は、2点を結ぶ直線でしょう〙


「そうだね」


〘2点の間に障害物があれば、直線では移動できません。レベル1では障害物まで移動した後に、一度避けてから再度【速度向上アクセル】を使う必要がありました。それがレベル4では不要になったようです〙


「なら、進化した【神速アクセル】の効果は?」


〘先ほど、紙の上に書かれた点の最短距離は直線だと言いましたが、あれは嘘です〙


 いや、嘘じゃないでしょ。

 どう考えてもそれが最短じゃん。


〘紙を曲げて、点と点をくっつける。それこそが真の最短です〙


「……そんなの、ズルいだろ」


〘ですよね。つまり【神速アクセル】はそんな効果を持った、最高峰の移動スキルなのです〙


 出発地と目的地がほぼイコールになる、ってことか。まるで勇者様が長距離移動に使ってた転移だな。


「転移スキルとの違いは?」


〘転移はあくまで地点Aから地点Bに一瞬で移動するスキルです。一方で【神速アクセル】は【速度向上アクセル】が進化したスキルですので、移動中に任意の行動をすることが出来ます〙


 ちょっと意味が分からない。


〘例えば、目的地に向かう途中で魔導書を返却することなども可能です〙


「マジか!! さっそくやってみよう!」


 その辺に散らばっている魔導書を拾い上げる。手に5冊、【無重書架ホールド】で10冊。その全ての棚番を【棚番把握ナンバー】で確認して、準備完了。


「それじゃ行くよ。目的地はここ。この魔導書たちを本棚に丁寧に返却して、ここまで帰ってくる。【神速アクセル】!」


 ふっと、自分の身体の輪郭がぼやけた気がする。そして手に持っていた魔導書が消えていた。物自体は無くなっている代わりに、俺が本棚に魔導書を差し込んでいる記憶があった。


「す、すごい。一瞬で15冊の返却が終わっちゃった」


〘おめでとうございます。移動スキル発動中に連続で10冊の魔導書を返却するというミッションを達成されましたので、【投擲収納スローイン】のレベルが3に上昇しました〙


 うーん。スローインは要らないなぁ。このスキルのレベルを上げれば、いつかは大広間から魔導書を投げるだけで、勝手に本棚に戻って行くようになるかもしれない。でも俺はそうするつもりはない。


 最大効率ではないにしても、大事な魔導書は丁寧に本棚へ返してあげたい。


 だから【神速アクセル】は俺にとって、最高のスキルだ。



「よし。これから【神速アクセル】を使って、魔導書をたくさん返却するよ!」


〘頑張りましょうね!〙

 

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