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魔導図書館の最強司書 〜魔導書を1000年管理したら、【司書スキル】で最強に〜  作者: 木塚 麻弥


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第15話 速度向上《アクセル》Ⅱ

 

〘任意指定のスキルですが、どうなさいますか?〙


「【速度向上アクセル】で」


 俺は迷わず答えた。


〘もう決めていらしたのですね〙


「うん。確認だけど、既に獲得している司書スキルをもう一度選択すれば、レベルが上がるって考えで間違ってないよね?」


〘はい。その認識でお間違いありません〙


「じゃあ俺は【速度向上アクセル】を選ぶよ」


 仮に俺が【検索サーチ】の存在を知ってて、まだ持っていなければそれを選択したかもしれない。でも今の俺に何より必要なのは返却効率の向上に役立つ司書スキルだった。


 普通なら魔導書を放り投げることで棚に自動で収まる【投擲収納スローイン】のレベルを伸ばすということも考えられる。でも俺のポリシー的に魔導書を投げるのはNGなので、自分の手で返していくために己の速度を上げるしかない。



〘承知しました。では……。はい、無事に完了です。【速度向上アクセル】のレベルが2に上昇しました〙


 既に所持している司書スキルのレベルが上がった時は身体が光ったりしないから、実感が沸かない。


 そう言えば初めて【速度向上アクセル】を使った時、大変なことになったな。


 今回そのレベルが上がったんだから、前までより気をつけて使用しないと。


「とりあえず大広間まで戻って試してみよう。徒歩で移動するから時間かかっちゃうけど」


 どんな影響があるか分からないので、開けた場所まで戻ってから使用することにした。最近は近い距離でもアクセルを発動させていたから、こうやって徒歩で移動するのは久しぶりだ。


「レベルの上がった【速度向上アクセル】って、どんな感じ? 移動できる距離とか伸びるの?」


〘基本的に全性能が向上します〙


「全性能ってことは、速度がさらに上がったり?」


〘はい。加えてコントロールもしやすくなりますので、レベル1を完璧に扱えるようになったライアン様であればレベル2も問題なく使えると思われます〙


「そうなんだ。でも今回は大広間まで徒歩で戻ろう。こうやって歩きながらリアとのんびり話すのも久しぶりだからね」


〘ですね。【速度向上アクセル】発動中はライアン様のお邪魔をしないために話しかけられませんので。たまにはこうして、お話ししながら移動できるのも良いものです〙


 確かにスキル発動中は集中していた。

 リアも意図的に話しかけないでくれてたんだ。


「もちろん効率も大事だけどさ。お仕事って楽しめないとダメだよね。だって俺、まだ990年以上もここで働くんだから。てことで、こうやってリアとお話しながら魔導書を返却するのも毎日やろう」


〘賛成です!〙


 リアの声が明るい。

 喜んでもらえたみたいで嬉しい。



 ──***──


 リアと色々話しながら歩いていたら、もう大広間まで戻ってきていた。体感的には【速度向上アクセル】を使って移動しているときと変わらない。


 スキル発動中は集中しているから時間が長く感じられて、逆にリアと話している時は楽しいから時間が短く感じる。そう考えられるようになったのも、永遠に続くと思われた魔導書の整理をやりきったおかげ。


 今の俺には、精神的にかなり余裕があった。


「さぁ。レベル2の効果を体験しようか」


 とりあえず目指すは休息室。

 レベル1で休息室までは10回くらい必要だった。


 レベル2に上がったんだから、半分くらいの回数で到着できると良いな。


「【速度向上アクセル】!!」


 スキル名を口に出し、身体が軽くなるのを感じてから1歩前に踏み出した。



 …………ん???


 目の前には白い壁。

 見慣れた大きな扉もある。


「えっ。1回で?」


〘そのようですね。私も驚きました〙


 危なかった。レベル1を使って本棚に激突した時のようなことをしないために、かなり加減して使ったつもりだったのに。


 距離の調整ができてなかったのかな?


「……いや、逆に距離の調整が完璧だった可能性があるのか」


 俺は目的地として、この休息室を設定した。それを【速度向上アクセル】が認識してくれたと考えることも出来る。


 じゃあ軽く足を踏み出したのは、距離の調整ではなく速度の調整に使われたんじゃないだろうか。


 試してみたい。


「ねぇ、リア。再度確認だけど、俺ってここなら死なないんだよね?」


〘絶対とは言い切れません。ライアン様が強く死を望まれた時や、人間界での死のおよそ数千倍に至るダメージを負った際などは精神が死んでしまう可能性があります〙


 数千倍のダメージね。

 そこまではいかないだろう。


「わかった。俺は今から、全力でレベル2の【速度向上アクセル】を使って見る。もし壁とかにぶつかって大きなダメージを受けたら、俺が『もうダメだ。死んじゃおう』って思わないように声をかけて」 


〘しょ、承知いたしました。もし何かあっても、私が絶対ライアン様に生きることをを諦めさせません。ご武運を〙


 リアに後押ししてもらえた。

 それだけで心が軽くなる。



「目的地は本が散らばっている地点のちょっと前。よし、いくぞ──【速度向上アクセル】!」


 スキルを発動させ、全力で足を踏み出した。 

 


 一瞬だった。


 俺は何にも衝突することなく移動した。

 目の前には大量の本が床に散らばっている。


「か、完璧だ」


〘おめでとうございます、ライアン様。レベル2の【速度向上アクセル】を完全修得されましたね。レベル1の時点で110,578回も使用した成果でしょう〙


 11万回も……。

 そんなに使ってたんだ。


 そしてリアが先程言っていた、コントロールもしやすくなっているというのも実感できた。近場で何度か連続移動してみて、その全てで完璧に思い通りの場所に行くことができた。


 これはすごいスキルだ。


 惜しいのは、このスキルを持った状態で任期満了後に生き返れないってことかな。


 実際どうなのか、まだリアに確認はしていない。聞いてみて、その通りだったら悲しいから。どうなるかは最後に分かれば良い。


「さぁ、魔導書の返却作業を続けよう。今日はこれから1000冊は棚に返すよ」


〘承知いたしました。頑張りましょう!〙


 俺は近くに落ちている魔導書を拾い上げた。

 

 

 

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