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魔導図書館の最強司書 〜魔導書を1000年管理したら、【司書スキル】で最強に〜  作者: 木塚 麻弥


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第13話 神の試練

 

 ない。ないないない。

 ないないないないないないない。

 どこにもないよ。

 同じ棚番の魔導書なんて3冊もあるはずない。

 だって、これだけ探してないんだから。



 ……いや、絶対にあるね。

 俺はリアを信じてる。

 彼女があるって言うなら、俺はそれを信じる。



 じゃあ、おかしいだろ!

 なんで見つかんねーんだよ!?

 もしあんなら、今すぐ持ってこいや!!


 

 同じ棚番の魔導書を3冊集めるために、俺が魔導書の整理を始めて既に200日近い日々が経過していた。その間に並べて整理した本は5万冊を超える。


 それでもまだ同じ棚番の3冊は見つかっていない。


 ずっと同じ作業の繰り返しで、俺のテンションがおかしくなってきている。悲観的な『俺』、リアを信じる楽観的な『俺』、そんな俺たちに激怒する『俺』。その3人が俺の中でめちゃくちゃに会話するせいで、頭がおかしくなりそうだ。



〘ライアン様。今日も顔色がすぐれませんが……。やっぱり、作業をお休みにはなりませんか?〙


 リアが心配そうに声をかけてくれる。

 でもそれすら俺にはプレッシャーになる。


「全然見つけられなくて、ごめんね。魔導書を本棚に返却する作業を進められなくてごめん。役立たずで、本当にごめんなさい」


〘そ、そんな。私はライアン様を責めているわけではありません。本当にあなたのことが心配で〙


 わかってる。

 彼女が俺を責めてないってことも。


 わかっているんだけど、それを素直に受け取れない。人はあまりにも物事がうまくいかないと、ここまで偏屈になれてしまうんだということを自覚する。


 リアという話し相手がいるけど、姿は見えない。こんなに広い図書館で、俺はたったひとり。そう感じてしまうのもストレスの原因だった。彼女の返事が少し遅れただけでイラつきが収まらなくなる。


 もう俺は、かなりおかしくなってきていた。


 自分の精神がおかしくなっていることに気付いていても、ムキになってしまって魔導書を整理する作業を止めることが出来ない。ここまでやったのだからもったいないという想いが日が経つごとに強くなり、更に作業を止められなくなる。


 最初の方は順調に司書スキルを手に入れられて楽しかった。自分がサクサク成長していることを実感できたから。


 でも今はもう半年近く、何の成果も上げられていない。


 同じ本棚の本を見つけられず、俺の仕事であるはずの魔導書返却も進められない。そんな状況が、俺の精神をむしばんでいく。



「なんでだよ。何でこんなに見つからないんだよ。一番はじめなんて、いきなり同じ棚の魔導書を見つけたのに」


〘そ、その件なのですが〙


「なに? なんかわかったの? 早く教えて」


 リアにキツイ口調で聞いてしまう。

 

〘最初の2冊は、創造神様の試練であったのだと思われます〙


「試練? 幸運だったのが、なんで試練なのさ」


〘今もライアン様は【幸運ラッキー】を保有されている状態です。その状態で万を超える数の魔導書を整理して、未だに同じ棚の魔導書を見つけられないということは、確率がそれだけ低いということ〙


「それはそうだね。だいぶ運が悪くなってきちゃったな、って思ってる」


〘今の運が悪いのではなく、最初の運が良すぎたのです。そしてアレは、創造神様がライアン様に課された試練でもありました〙


 意味が分からない。


〘確かにチャンスではありました。しかし移動スキルもなかったあの時、2000番台という遠い棚への魔導書返却を連続で行うのは苦行に他なりません。ライアン様は見事達成なさいましたが、改めて考えれば出来過ぎではありませんか〙


「……じゃあリアは、全部創造神様が仕組んだことって言いたいの?」


〘仕組んだ──と言うと悪く聞こえてしまいますね。もとより神々は人に試練を与える存在です。そしてその試練を乗り越えた人間に、神は恩寵を与えるのです〙


 彼女が言いたいことが分かった気がした。


 創造神様は【幸運ラッキー】による偶然を装い、俺に同じ棚の本を拾わせた。そして俺がその本を手放すかどうかと言う試練を与えたんだ。仮にそう考えるなら、あの奇跡も納得できる。


 俺がこの永遠とも思える作業を進めるのも、神から与えられた試練である。試練が厳しければ厳しいほど、受け取れる恩寵も大きくなる。そう信じろと。


 

 わかった。

 良いよ、やってあげる。


 その試練、受けて立つ!!



「あー、そっか。俺は1000年間ここで働くってことを完全に忘れてた。まだ1年も経過してないのに、なんで絶望なんかしてたんだろ」


〘ライアン様。なんだか、表情が晴れやかになりましたね〙


「リアのおかげだよ」


 俺は作業を再開した。

 近場にある魔導書に手を伸ばす。


「5年かかっても、例え10年でも。俺はもう諦めない」


 絶対に同じ棚の本を見つけてやるんだ。

 

 決意した俺の心はもうブレない。

 だってそうだろ?


 試練が厳しければそれだけ、報酬として得られる司書スキルの効果にも期待が出来るってことなんだから。


 

 そうして期待に胸を弾ませて作業を続け──





 1247日後。


 俺は同じ棚番の魔導書を3冊見つけることに成功した。

 

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