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9.就活と研究室

 10月に入ると一気に周囲の状況がなんというか、あわただしくなってくる。ような気がしている。それは就職活動が始まるから。それは現に僕自身にとっても関係がないわけでもなく、大学院に行くという選択は自分にはないため、就職をするわけで。


「どこに行くよ」


 講義が終わって自販機の前。そんな会話を三浦君とする。彼は僕と同じ地方出身だった。となると地元就職するのだろうか、それともこっちなのか。


「うーん・・・決めきれないね」


 これは僕もそうなのだけれど、どこに就職するか。というよりも就職できるのか。という考えの方が強い。やりたいことなんか無いけれど、とりあえず卒業後に就職しなければ、いけないのではないか。というのが頭の中にはある。


「スーツとか新調するの?三浦君は」


「そうだね、新調した方がいいって、親にそういわれたから。今度の週末に行ってくるよ」


 カバンに入っている就職セミナーの紙、それと就活サイトへの登録。色々やらなければいけないことがやってくる。


「今日は研究室?」


「うん。・・・新村研はいつから行くの?」


「この間言われたのは2~3月くらいに。そこで初めて顔合わせって感じ」


「じゃあそれまでは、時間があるんだ」


「そうそう」


 新村研以外の人にも聞いたのだけれど、どこの研究室も本格的に動き出す引継ぎとかは2~3月かららしい。

 それまでは講義に出たり、バイトをしたりという生活が続いているのだろうと思う。


「じゃあ、僕は行くね」


 と三浦君にそういうと部活へと向かって行った。


 部活が終わり、色々と準備を済ませると小山さんと約束した時間。僕は森田研のドアを叩くと中から小山さんが出てきてくれた。


「よしよし、早速やろう」


 そう案内されたのは小山さんの席。そして使うのも小山さんのパソコン。慣れない椅子に腰を掛けると、プレゼン資料を作るためのソフトを開く。


「・・・こういうの作ったことある?」


「まあ、高校の時に少しだけですね。卒業制作の発表とかで」


「あーそれがあるか」


 小山さんは僕の持ってきた渡された本を指さす。


「これ、少し読んだ?」


「はい、少しだけですけど」


「そうか、なら大丈夫」


 というと小山さんはマウスを使ってあるものを開いた。


「これは、俺が3年生の時に作ったその本をまとめた時の奴なんだけど、これ見ながら作ろうか」


「はい、分かりました」


 ひな形があるのであればすぐに作れそうだ。と思った。

「そうそう、そうやって指定して・・・」


 とキチンと教えて貰うことに。文字を打ってプレゼン資料を作っていく。そして小山さん曰く「森田塾は遊びと面白さが重要だから」と言って研究生の写真アルバムからネタになりそうな写真を一緒に探すと、加工して張り付けていくことに。


 進んで行く資料作り、慣れてきたのか僕はあることを小山さんに聞いた。


「・・・企画ってこの後なにかやることあるんですかね」


「あるよ、大きなので言うとキックオフ合宿っていうのが・・・3月の下旬・・・にあるかな」


 近くの引き出しを開けると下の方に入っていた冊子を取り出した。・・・キックオフ合宿と書いてある。


「行くところは毎年恒例、同じ場所。で、こういう冊子とか段取りとか、予約とかを企画がやる」


「そうですか」


 渡された冊子を開いて中を見る。すると伊佐木君と中村君が矢代さんと一緒に入ってきた。


「おう、やっさん。何してたんですか?」


「OB会の話を先生にしてきた」


「あーOB会」


 忘れていた。確かその企画は既に動いているとのことを何となく知っていて、総務が話しているのを見たことがあったのだけれど。


「まっちゃんも資料作り?」


 矢代さんに言われたまっちゃんとは誰の事だろうか、と一瞬思った。

けれど、すぐに僕の事だと気が付き「はいそうです」と返すことに。


「こやっち、飯は?いかない?」


「いいですね、行きましょう」


 と言うとやっていたプレゼン資料を保存し、5人で近所にある安いと評判の定食屋に向かうことに。夜遅くまでやっていて学生にも人気の店。


 あれよあれよと流されるままに店に入ると僕も日替わり定食を頼んで食べることになった。


 その最中に、伊佐木君があることを僕に伝えてきた。それがOB会でやる企画を考え欲しいとのことだった。


「毎年何かやってるんですか?」


「そうだね、毎年同じやつをやってるから、それをやればいいよ。資料もあるからさ」


 と僕が聞くと小山さんが答えてくれた。


「何したっけ?」


 矢代さんが小山さんに聞く。


「ビンゴゲームですよ」


「ああー、そうだ思い出した。やったやった」


 どうやら企画はビンゴゲームらしい。・・・今更だけれど、矢代さんは修士1年生。つまり来年も研究室にいるのだけれど、小山さんは4年生。つまり、来年の4月には卒業してしまう。


 となると聞ける時に聞いておいた方がいいだろう。と自分なりに考えることに。


 食べ終わるとまた研究室へ戻って資料作り。

 そのついでに小山さんに色々聞くことにした。


 もちろん、1日で資料作りが終わることもなく、続きは明日に。そして同じように作っていく。


 だんだんと研究室に行く回数が増え、そうするとあだ名で呼ばれることも多くなってきた。


 中部屋と呼ばれる場所に案内されるとそこは休憩室らしい。ゲームをしたり、寝たり。そう言うことが出来る場所で、本棚には漫画本も入っている。


 その机に座ってみんながゲームをしているのを見ていると伊佐木君が声をかけてきた。


「まっちゃん、そろそろ作業着作らない?中村とも話してんだよね」


「あー」


 そう、森田研究室の代名詞。作業服。ホームセンターに売っているような普通の作業服に刺繍で胸と背中に「森田研究室」と入れられているあれである。胸には自分の名前が刻まれ、これを着ているとイコールで森田研所属という感じになる。


 作業服は目立つ。そりゃそうだ、学内でこういうのを着ている人なんかいない。しかも研究室全員が揃って着るし、森田先生も院生もその期のモノを着るのだから。


「・・・あれ、俺はやっさんのがいいと思うんだよね」


 と伊佐木君が言う。


 期によって微妙にデザインが違うのだけれど、伊佐木君はどうやら矢代さんの代の作業着がかっこいいと思うらしい。中村君も同意見とのこと。


「あーまあ確かに、そうかも」


 と返事をすると


「でも、全く同じじゃあれだから、文字の字体と色は変えたいと思ってんだよね」

「なるほど」


 いくつか案を見せてもらったが、伊佐木君が「これにしたい」というのが一番よく見えた。矢代さんの代の文字の色は朱色。11期生は銀色にすることに決まって、字体も変更することに。


 他の11期生も見れるように中部屋の机の上に案が置かれ、それぞれ「それでいいと思う」とのことで、決定した。サイズを測って発注し、僕らはしばらく待つことになった。

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