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6.発表とはじめてのゼミ、一人一役

「ちょうどよかった、真本君。合格だから」


 と紙を渡してきてくれたのは矢代さんだった。たまたま僕を学内で見かけたらしく、声をかけてきてくれた。


「合格ですか?」


「そう、合格。キミはこれで今から森田研に所属になる」


 何というかこんな何もない通路で渡されることになるとは思わなかったけれど、もっと思わなかったことを矢代さんから聞くことになる。


「じゃあ、ゼミは今日の午後あるから。森田先生がやるゼミだから出ないとだめよ」


「今日ですか?」


「そう」


 すごい急だな。というのとあれ?ゼミって本来ならもっと後に始まるんじゃないの?という疑問が出てきた。腕時計を確認するとまだ9月。多分普通なら年越して2月くらいに始まるもんだとばかり思っていた。


「じゃあ、そういうことで」


 というと矢代さんは行ってしまった。


 その日の講義が終わると、三浦君が話しかけてきた。


「真人、今日もこの後部活か?」


「いや、ゼミがあるらしい」


「ゼミ?」


「そう、森田研に受かった。それで今日、ゼミがある」


「・・・早くないか?」


「うん、僕もそう思うけど」


 そうは言っても言われたのだから仕方がない。それに森田先生のゼミということは卒業に関わる卒研についてのことだろうし、おまけに1回目だ。行かないわけにはいかないだろう。


 僕は三浦君と別れて、この間面接をやった部屋に向かった。まだ来る時間が早かったのか、そこには4年生の人が2人いて、机を動かしている。


「お、来たね。早速でわるいんだけど、机を動かすのを手伝ってくれないか」


 4年生以外にも2人いた。彼らは3年生。つまり僕と同じように森田研の合格者、そしてこれからの研究生活を共にしていく仲間みたいな存在に成る。と、頭の中ではわかっていたのだけれど、なんか実感がわかなかった。


 3年生の2人の名前は知っている。1人は伊佐木君。もう1人は中村くん。


「とりあえず動かせばいいですか?こんな感じで」


「うん、とりあえずそれでいいよ」


 机をコの字型にしたいらしく動かしているというのは何となく見ればわかった。そしたら椅子を置いて、ホワイトボードを置く。

 

 そんな事をしていると次々に合格者がやってきて、いつの間にか全員が揃っていた。その中に早坂君の姿も。あれだけ緊張していたのだけれど、今日は安心感のあるそんなひょじょうをしていた。


 のだけれども特に話すことは無い。


 唯一話せそうなのが早坂君。けれど、何を話すのかも、そういうのも何も無いまま時間が経過していく。

すると森田先生がやってきた。すると一言目。


「おお、揃ってるね!じゃあ早速やろうか。・・・あいさつは伊佐木君でいいかな。今日は、よろしく頼むよ」


「はい・・・・それじゃよろしくお願いします」


 と合わせたように頭をお互いにさげるとゼミが始まった。


「歴史」


 何から話が始まるのかと思ったらそこからだった。


 先生はホワイトボードにマーカーで線を引き、そこにあることを書き込む。それは僕らの前の事。つまり歴史の事。


 僕らは森田研究室11期生として合格した。とのことだった。森田先生が大学に来て研究室を持って、送り出した卒業生は10年間。つまり11年目が僕たちということになる、


 そもそも森田先生の経歴というのは、日本に居れば誰しもが聞いたことがあるような大きな企業に勤めていたのだけれど、あることを思って大学で研究室を持つことになった。とのことだった。


 森田先生と同じような研究をしていた教授、山内教授という人が居てその人の研究を引き継ぐ形で森田研究室は立ち上がった。とのことだった。


「僕はね、真面目とか、いいこちゃんとか、優等生があんまり好きじゃないからね」


 と笑顔で僕らに言い放つ。それを聞いて少し笑顔になるしか返事ができないのだけれど、そうするしかないわけで。


 それから実験内容へ。どうも話を聞いていると森田研究室で行われている実験は実際に先生が現場において感じたことや、先生の企業繋がりで委託されている実験もあるらしい。


 そして話は作業着の話になった。


「今年も作らないとね、作業着」


「そうですね」


 と院生の1人が森田先生に答えた。


 先生は作業着を指して〝会社ごっこ〟というのを僕らにいった。会社には部署があって係がある。そして担当もある。


「一人一役」


 そう、ホワイトボードに先生は書き示した。


「だから、森田研では係もやってるから、それも今日決めちゃおうか。伊佐木君と中村君は総務だからそれ以外を決めないとね」


「はい」


 彼は返事をした。


 森田研究室で決めなければいけないことが2つ。1つは実験班。自分がどの実験をやるのか。ということ。これは今後のゼミで内容を詳しくやるらしく、今日は係の方。こういうゼミ室をとったりとか、ホワイトボードをよういしたりとかをするのが総務という仕事の役割らしい。


 係は、総務・会計・企画・卒研・卒業アルバム・ISOだった。


 各2名選出される。役割については、会計はそのままお金の管理。企画は森田研が学園祭に参加や合宿などをやるときに計画する人、卒研は卒業研究に関わること。中間発表とか論文を出すとか。卒業アルバムはそのまま。写真をとって卒業の時にまとめる人。そしてISOは簡単に言うと「整理・整頓・清掃」を担当する。大学も関係しているとのことだった。


 で、総務の2人は既に決定している。どこでどう決まったのか分からないが、どうやら話を聞くと来年の2月に毎年やっている森田研OB会の準備があり、それに向けてこの2人は既に動いているらしい。

 OBに開催日時の連絡や大学の食堂の予定をとる、飲食の予約など。


「・・・真本君は部活をやっていたよね?だから企画がいいと思うんだけど」


 と4年生に言われ「はい、分かりました」と返事をした。


 ということで僕は企画に。もう1人は飯野君に決まった。早坂君はというとISOになった。


 そして森田先生は係が決まるとあることをホワイトボードに書いた。


D・カーネギー

行動の科学

カール・ロジャーズ

シュタイナー教育


 この4つ。何のことだか僕には分からなかった。


 先生はほんの少しだけ内容に触れたのだけれど、詳しく教えることも無く、ただ単に「こういうこともやってるからね!」ということだけだった。


 そうこうしているとゼミが終わりかけに。その間際にある紙が一枚渡された。


「・・・なにこれ、森田塾?」


 そこには先生のゼミとはちがったスケジュール。毎週土曜日に開催されるという森田塾と呼ばれるものが書かれていた。


「来た方がいいけど、まあ、予定があわないなら来なくても大丈夫だから」


 と院生の1人である戸崎さんが言ってきた。


 土曜日。となると部活がある。どちらかと言うと僕は部活を優先したいという感じもあった。早坂君もバイトをしていて


「・・・調整するまではいけないかもなぁ」

 と言っていた。


 まあでも、これは行かなくても良さそうだし。と思って行くつもりはなかったのだけれど、どこか行かないといけないのかな。とも言う気持ちにもなった。


 後日、森田塾は開かれたらしい。というのを早坂君経由で聞いた。当然行った人、行かなかった人もいたらしいけど、伊佐木君が言うには「来た方がいいっぽいよ」ということだった。


 でも、その後も僕は先生のゼミには出るものの、森田塾には出席しないでいた。


 けれど、そのたびに「真本君、森田塾でてみなよ」と院生と4年生に言われるもんだから、僕もついに促される形で出席することに。


「まあ、しかたないか」


 とそう思い、僕は森田塾へ足を運ぶことになった。

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