30.それぞれの進む道へ
卒業式が終わって早速研究室に置いてある自分の荷物を運び出し、今まで全く手を付けていなかったアパートの方付けを始める。何せ4月に僕は九州に向わなければならない。
ついこの間まで環境論文に向き合ってたから全く何もしていなかった。
「いやいや・・・」
やりたくない。とは言えない。流石にやらないといけないのだけれど。段ボールに本や服などを詰めていく。
流石にこの時期まで僕の引っ越しの話が来ていないことをおかしいと思ったのか、両親が手伝いに来てくれた。
ともあれ、何日かかけて片付けをしてようやく実家に帰るその前の日、ある人物が僕の元を訪ねて来た。
矢代さんと戸崎さんだった。
「これ、持っていきなよ」
彼らが持っているのは11期生の環境論文だった。実は論文は「本当に間に合わせる為に作ったでき」だったので、表紙やそこらのデザインや作りに修正が入れられることになった。
それをやっていたのは院に残る組。伊佐木君と中村君。
出来上がったとのことで、僕の元に持ってきてくれたらしい。
「これ、必要だからって」
「・・・伊佐木君たちが?僕に?」
「そうじゃないよ、イガさんだよ。まっちゃんにはこれ、要るからって」
「そうですか」
その言っている意味が僕には分からなかったけれど、とりあえず受け取っておくことにした。
こうして僕はその後、実家に帰ると就職の準備を行い、九州にむかうことになるのだけれど・・・。
この時の僕はまだ知らなかった。自分の勤務先が千葉県になること。そしてその場所はイガさんのいる地域に近いこと。
それよりなにより、僕が描いた「森田研究室の色」その語られなかった物語を10年後、本当に物語として書き起こすことを。
名も無きリーダーたちは、名の有る研究室を卒業し、それぞれの道へ進んで行く。
おしまい。




