29.卒業式
大学の卒業式は高校の時のと比べてかなり形式的な感じがした。・・・気がする。というのも覚えていない。ここ数日の疲れがたまっていたのか、式の座席に座るとそのまま寝てしまって、気が付いたら式が終わっていた。
ともあれ、僕の卒業式はもう1つあり、それが部活の後輩たちからの贈り物を貰うこと。
「お世話になりました」
そういって後輩がくれたものを眺めながら僕は後輩たちの言葉を聞いていた。
「そもそもこれをやるために大学にきたんだよね」
体育館を見る目が少し今日は何だかさみしい感じもした。確かに部活をやるために大学にやってきた。けれど、それも1つの大きなきっかけだったのかもしれない。森田研究室に入るという。
高校で新しい事を初めていなければ、関本先生に出会っていなければ多分ここには来ていないだろう。
森田研究室に入ったことがどうなのかっていうのはわからないけれど、きっと自分の手で選んでここに来たんだから、きっとこの先何かあるはずだ。
僕は部活の卒業式を開いてくれた後輩たちに一人づつお礼を言うと、体育館を後にし、足早に研究室へ向かった。作業着を着て、先生との最後の宴会に出るため。
「必要なモノもった?」
「準備は伊佐木君とか中村君がしてくれるんでしょ?」
「うん」
完成した論文、そして今まで作った動画や写真のデータをまとめたCDを持って、最後の宴会に向かうことに。
森田先生の言葉から始まり、総務の乾杯で宴会は進んで行くことになったのだけれど、そのなかで有るモノが出てきた。
そう「カエルくんへ」と「水力学」の動画上映である。
「・・・このためにノートPCとプロジェクター持ってきたって思うと、少しあれだよね」
動画が流れている最中、僕は早坂君に小声で言った。
「うん・・・なんなのかよくわからないけれど」
この2つの動画だけは僕も良く分からなかった。けれど、なんだろうか、これが森田研らしいと言えばらしいのだけれど。
宴会が終わると森田先生と一緒に研究室へ。先生と一緒に今まで作った動画を中部屋で見るというのが森田研恒例の行事になっている。
「本当にいろいろやったよな」
映し出される動画を見ながら僕はそんなことを思っていた。でも何だろうか、思い出じゃないんだよなこれ。何だろう。とかなんとか。
それを考えながら見ていると、いつの間にか上映会は終わってしまった。
村上君が締めの言葉を言って、解散。となり、僕は片付けるために自分の机に帰ってパソコンを立ちあげていると、森田先生がやってきた。
そして一言。
「まっちゃん!よかったよ!」
とそういって僕と握手をしてくれた。
その瞬間、今までの事が全て「やってきてよかった」と思えたようなそんな気がした。




