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3.大学3年生

 僕の考えは当たっていた。入学式からいわゆる華やかな大学生活が待っているのかもしれない。という期待はどこへいったのやら、気が付くと大学とアパートを行き来する生活を続けることになった。


 もちろん友人・知人も増えたは増えた。県内に居たら会えないような人たちと話したり、その人たちの故郷のお土産とかを貰ったり。


 週末には東京とかそういうテレビで見たことが有る場所へも行ったし、朝が来るまで友人の家でゲームもした。


「でも、生活の中心はここで、ずっとこれで4年生を迎えて、それで就職・・・」


 そんなことを考えながら練習をしていると先輩にあることを聞かれた。


「今月でお前も3年だろ?そろそろ研究室を決める時期じゃない?」


「・・・そうですね」


 そんな生活続けていたら気が付いた時に3年時が始まったこの時期。


最初のオリエンテーションで言われたことは「研究室選び」それと今後控えている「就職活動」についての事だったのを思い出す。


 研究室という存在を具体的に知ったのは大学1年生の時だった。当時の4年生が「じゃあこの後研究室があるから」と早めに練習を切り上げて行った時に、何のことか分からなかった僕は先輩に聞いた記憶がある。


 僕の大学では大体3年の前期で自分の入りたい研究室に目を付けて、その後、希望を出し、大体3年生の10月かそれくらいに配属が決まる。そして年明けて4年生の卒研発表前後に引継ぎが行われる。


 という感じらしい。


 この卒業研究というのは大学を卒業するのに必要ないわゆる「必修科目」。つまり研究室に所属し、研究・実験をして論文を書き、最後に提出・発表して認められれば単位をくれる。


 というもの。


 現に今目の前に居る4年生。中里さんも今年から研究室に入っている。しかも同じ科。これは聞かない手はないだろう。


「中里さんはどうして新村研に?」


 研究室は大学に所属している教授が・・・まあ開いているという言い方がいいのかもしれないので、その人の苗字+研究室という名前になる。


 中里さんは新村教授の開いている「新村研」に所属している。


「ああ、そんなに行かなくていいから。週・・・大体2,3回顔を出せばいいって言うくらいだから」


 そう、これがある。研究室によって「内容の程度」に差があるらしい。大変な場所は大変、簡単な場所は簡単。という至極分かりやすい構図。


「・・・こうやって毎日部活やってきただろ?バイトもそんなに入れないで。で、遊べる最後の1年よ。だったら自分のやりたいことが出来る場所がいいじゃん」


 そりゃそうだ。更に話を聞くと、新村研はそんな感じではあるものの、キチンと卒業させてくれる。そんな研究室らしい。


「だからここは倍率が毎年高くなるから、前もって顔を売っておくといいよ。・・・お前も来年入りたいなら言っておいてあげるよ」


「はぁ・・・」


 僕はこの時、あることを思い出していた。


 それは大学1年生の時。大学生活の最初の方、周囲に居た他の部活の顧問の教授やコーチからこんなことを言われていた。

「お前はきっと、森田研に入るから」と。


 その時は「そうなんですか?」という返事くらいしかできなかったし、どうしてそう思うのかとも聞かなかったし、向こうも理由は言わなかった。


 けれど、1年生の時から意識させられてきた「森田研」というのが僕の研究室選びの中に候補としては確かに入っている。


 が、しかし。である。


「・・ただ、これだけは言っておくぞ、森田研に行くのであれば考えろよ」


 と僕の心の中を読んだのか、中里さんはそう言ってきた。


「どうしてですか?」


「あそこは大変だから」


 あそこは大変らしい。というのをどこに行っても聞くのが森田研だった。それが僕の情報収取の結果でもある。


 ただ、その森田研究室。それを開いている森田登教授の講義はいくつかとっていて、話を聞いている感じそんな気はしない。むしろ、沢山いる教授の中で気さくな感じと、親しみやすい感じ。それと服装がだらしない感じしかない。


 学内でも森田研に所属している人たちは基本的に一目見ればわかる。なぜなら、全員が同じ作業服を着ていて、背中に「森田研究室」という文字が刻まれているから。


 そうそれはまるで部活動の時に来ているジャージとかユニフォームみたいな感じでもある。


「あー大変なんですね。森田研は」


「そうだよ。あそこのほら、研究室が入っている研究棟があるだろ?あそこの森田研の電気。基本的にほぼ毎日、夜遅くまでついてるし」


「それに研究経過報告のゼミだって長い。日をまたぐことなんか当たり前だし、そのまま朝まで実験なんてこともやってるらしい」


「なるほど」


 それを聞くと確かに行きたくはない。現に、前年の募集は定員割れ。つまり人気のあんまりない研究室ということになる。


 じゃあどうしてそんな場所に僕が行くだろう。なんて周りの人たちは言ってきたのだろうか。運動部に所属しているからだろうか。それとも、何か別の理由があるのか?


 練習が終わり、アパートに帰ろうとしたとき、ちょうどよく電話が鳴った。


「・・・三浦君だ。どうしたんだろう」


 かけてきたのは同じ科に通う奴。青森出身で僕のアパートの近くに住んでいる。電話をかけなおすと一言「ゲームしないか?新しいの買ったから」とのことだった。


 僕はコンビニに立ち寄ると適当に食べるものとお菓子、それから飲み物を買って、彼のアパートに向かった。


 インターホンを鳴らすと中から声が聞こえてきた。ドアを開けるといくつか靴が置いてある。きっといつもの事だ。通いの奴らが何人かいるんだろう。


 と、奥に足を進めていくと案の定そこには彼以外にも2人いた。


「おお、来たか。ほら、新作のゲーム。今日買ってきたんだよ」


「ああ、ちょっと水道借りるよ」


「うん」


 慣れたもんである。彼らはいわゆる大学生という生活をしている人たちなのかもしれない。実際のところは良く知らないのだけれど、僕からはそう見える。


 3人ともバイトをやっているし、何なら他大学との合コンとかそういうのも楽しんでいるというのを聞いたことが有るから。


 まあ、それでも僕をこうやって呼んでくれるというのが凄くいい奴らでもあるのだけれど。


 しばらくは新作のゲームの話題でもちきりだったのだけれど、だんだんと話は大学のことに。研究室とか就活とかそういう話になって来た。


「おまえはどうするんだ?研究室」


 そう聞かれた。


「僕は・・・うーん。まあ先輩の口利きで新村研に入れなくはないかもしれないけど・・」


「いいなぁ、俺もそこがいいと思ってたんだよ」


「俺も俺も」


 そう、やっぱり人気がある。そうなると話はこうなっていく。


「ねぇ、俺たち含めた何人かで新村研を希望しないか?一応、皆成績はいいはずだし。もっと頭のいい奴は・・・どこっていったかな、ほら、もっといいとこあるじゃん。あそこにいくはずだからさ」


「そしたら、またこうやって遊べるし。研究室が同じなら、時間も合わせやすいじゃん?」


 でも、この時にも頭の中にある「森田研に行く」という選択肢があったので、


「でも、見学には行ってみるよ。色々ね」


 そいうと僕は彼らのやっているゲームを眺めることにした。

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